友人からの思いがけない提案

「置き方も雑だったので、スープはこぼれそうになっていました。イライラが募っていたとき、M美が提案してきたのです。『私たちが店を出るまでに、あの店員さんが言葉を発するかどうか賭けない？』と。驚きました」

顔や口には出さなかったけれど、M美さんも麻衣さんと同じように不愛想なスタッフの対応が気にかかっていたのです。けれど、ニヤニヤしながらそう焚きつけてくるM美さんを見ていると、イライラしていることがバカらしくなったのだとか。

「そして、M美は『ありがとうございました。ぐらいは言うかも？』と言っていましたが、私は店内から出るまで一言も発しないほうに賭けたのです。そこからはもう、イライラするというよりはちょっとした楽しいゲームになりました」

結局一言も発しなかった

それでも麻衣さんは、「そのロボット風スタッフは結局、私たちが店を出るまで一言も発しませんでした。通常であれば、入店から退店まで一言も発さないスタッフの人がいるというのは、ありえないと思います」と言い、下記のように続けます。

「具体的に言うと、レジを担当してくれたのも同じロボット風スタッフでしたが、終始無言。お釣りとレシートを渡すときやお店を出るときも『ありがとうございました』などの挨拶はナシ。淡々と業務をこなしていました。こんなスタッフが本当にいるなんて、ビックリです」

麻衣さんはそう嘆きつつ、「でも、イライラをやわらげてくれたM美には感謝しています」とのこと。嫌な思いをさせるのも人間なら、気分をやわらげてくれるのも人の気遣いや臨機応変な対応なのかもしれません。あらためて自分の言動を振り返ってみたいものですね。

＜TEXT／夏川夏実　イラスト／カツオ（@TAMATAMA_GOLDEN）＞

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