【10/1はメガネの日】眼鏡市場の新型ARグラス「Linse Display」を初披露! 翻訳もナビも原稿も目の前に

海外の取引先との商談や訪日客への接客では、スマホの翻訳アプリを使う場面がある。ただ、画面に目を落とすと、相手の表情を見ながら会話しにくい。そんな課題に対し、眼鏡市場が提案したのが、翻訳結果を視界に表示するARグラスだ。
メガネ専門店「眼鏡市場」を展開する『株式会社メガネトップ』は2026年9月24日、10月1日の「メガネの日」と、10月6日のブランド誕生20周年を前に、メディア向けイベント「あなたが知らないメガネの世界」体験会を開いた。
会場では歴代のオリジナル商品を展示するとともに、ディスプレイを搭載したスマートグラス「Linse Display(リンゼディスプレイ)」を初披露。眼鏡専門店が企画するARグラスには、どのような機能と「メガネらしさ」が盛り込まれているのか。体験会と開発担当者への取材から探った。
目次
眼鏡市場のスマートグラス第2弾「Linse Display」とは

2026年2月に発売されたカメラ付きスマートグラス「Linse」
眼鏡市場は2026年2月6日、国内眼鏡メーカーで初めてとなるカメラ機能付きスマートグラス「Linse(リンゼ)」を発売した。メガネトップ 商品開発グループ グループ長 早田直純さんによると、販売は当初の計画どおり堅調に推移しており、購入者からは「スマートグラスを初めて日常の中で常用できた」「これなら耳が痛くならない」といった声が寄せられているという。

メガネトップ 商品開発グループ グループ長 早田直純さん
現在企画中のシリーズ第2弾「Linse Display」は、両眼の視界に情報を表示するディスプレイを備えるのが最大の特長だ。初代から継承した通話、音楽、カメラ機能に加え、「ナビゲーション」「翻訳」「通知の確認」「AIアシスタント」「文字起こし」「原稿表示(テレプロンプター)」の計9機能を搭載する予定だ。
装着者には、表示された文字が約1~2m先に浮かんでいるように見えるという。早田さんは、スマホ画面を見ながら翻訳するよりも、相手と目線を合わせたまま直接コミュニケーションできる点が、メガネ型にする利点だと説明する。
翻訳機能では、相手が話した外国語と翻訳結果を上下に並べて、最大4行まで表示される。テレプロンプターは、スマートフォンなどから取り込んだ原稿を視界に映し、テンプル(つる)のタッチパッドでページを送れる仕組みだ。ナビゲーションは徒歩や自転車での移動に対応し、スマホを取り出さずに前を向いたままルートの確認が可能だ。

両眼の視界に文字を表示する「Linse Display」のプロトタイプ

テンプル部分に操作用タッチパッドを備える「Linse Display」
なお、撮影時にはフレーム正面のLEDが点灯し、カメラが作動していることを周囲に知らせる。
予定価格は11万9,000円(税込)で、予定重量は約50gだ。2026年10月23日からクラウドファンディングサイト「GREEN FUNDING」で先行予約を開始する予定で、その後、全国の眼鏡市場店舗などを通じて販売する方針だ。
予定仕様では防水機能を備えず、耳にかかるモダン部分の調整にも対応しない。充電ケースのバッテリー容量は調整中で、体験機の表示色は緑のみだった。
なぜ、このタイミングでディスプレイ機能を取り入れたのかを早田さんに伺った。
早田さんは、海外でディスプレイ技術が進歩していることは把握していたとしたうえで、採用基準は「メガネとしての快適さを保ったまま、新機能を追加できるかどうか」だと説明する。今回、両眼表示の機能を、かけ心地を維持したまま搭載できると確認できたため採用したという。
新技術を先に採用するのではなく、メガネとしての快適さを保てるかを基準にする点に、メガネ専門店ならではの姿勢が表れている。
「もっとこうしてほしい」に応えてきた、眼鏡市場の20年の商品づくり
Linse Displayが重視する「メガネとしての快適さ」は、同社が過去20年の商品開発で追求してきた考え方でもある。会場では、その歩みを示す歴代商品も紹介された。登壇したメガネトップ 商品開発部長 吉田和弘さんは、「私たち開発チームが20年間、お客様の『もっとこうしてほしい』『こんなメガネが欲しい』という声に耳を傾けながら、試行錯誤を重ねてきた商品たちです」と語る。

メガネトップ 商品開発部長 吉田和弘さん
たとえば「nosefree(ノーズフリー)」は、店頭で特に女性客から多く聞かれた「鼻パッドの跡が残るのが嫌だ」という声をもとに開発された。テンプルの先端にタングステンの重りをつけて重心を後ろに移し、鼻にかかる重さを約20%軽減したという。

鼻と耳で重量を50対50に分散する「nosefree」(※提供画像)
吉田さんは、数値だけでは効果が小さく感じられるかもしれないが、実際にかけると軽さに驚く利用者が多いと説明した。
店舗スタッフの声から生まれた商品もある。「megane ichiba PREMIUM(眼鏡市場プレミアム)」の跳ね上げフレームは、「跳ね上げ式はネジが緩んで使用者が困っている」というスタッフの声をきっかけに開発された。時計のギアに似た構造を自社工場で開発し、3万回の開閉試験をクリアしており、長期間使用してもガタつきにくいという。

使うほど緩みやすい課題を独自構造で改善した「megane ichiba PREMIUM」の跳ね上げ式モデル(※提供画像)
同社によると、2010年に発売した「FREE FiT(フリーフィット)」は、現在、眼鏡市場で最も売れているブランドだ。発売当時、樹脂製フレームには「安価で品質が低い」というイメージもあったが、デザイン性と軽さ、かけ心地を兼ね備えたことでヒットにつながったという。吉田さんによると、シリーズ累計販売本数は720万本を超える(2026年9月時点)。

2010年に発売され、シリーズ累計販売本数が720万本を超える「FREE FiT」(※提供画像)
福井県鯖江市の自社工場の職人技が光る商品も並んだ。「ZEROGRA(ゼログラ)」の復刻モデル「ZEG-C05」は、厚さ0.6mmの極薄シートチタン1枚をレーザーで切り出し、折り紙のように折り曲げてつくる。プレス加工やろう付けを行わず、ネジや溶接などの接合部も設けていない。価格は2万6,400円(税込)だ。

0.6mmの極薄シートチタンから成形する「ZEROGRA ZEG-C05」(※提供画像)
「メガネとして快適であること」は譲らない。普及へのハードルと展望
最後に、スマートグラスが一般的なメガネの選択肢のひとつになるための課題と、今後の展望について早田さんに聞いた。
まず挙げたのは、価格の壁だ。
「ひとつはやはり価格だと思います。眼鏡市場でのメガネ1本あたりの平均購入金額は、だいたい2万円前後です。オーディオグラスの『Linse Lite』は1万9,800円なので、その金額が一つの目安になると考えています」
11万9,000円(税込)のLinse Displayは、普段のメガネと比べるとまだ高い。一方で、早田さんによると、度数が変わった場合も、本体を買い直さず、1万1,800円で度付きレンズを交換できる。
もうひとつの課題は、かけ心地のさらなる改良だ。
「本製品はウェアラブル端末ではありますが、私たちとしては、よりかけやすいメガネとしてつくりたい。とはいえ、まだまだ改良の余地はたくさんあるため、今後もアップデートを重ねていきたい」
では、こうした製品が広がったとき、メガネの役割はどう変わっていくのだろうか。早田さんは、メガネの基本的な役割は「変えたくない」と答えた。

鼻パッドの調整とインナーフレームによる度付き対応を予定する「Linse Display」
「私たちはメガネを、あくまで視力を矯正するための道具だと考えています。そこから逸脱するような商品は提供したくないですね。ただ、視力の良い方でも紫外線対策でサングラスをかけるなど、視力矯正以外の目的でメガネを使う方は今後増えていくと思います。そうしたなかでも、お客様により快適なメガネとしてのツールを提供できるように、という点は大事にしています」
同社は2026年6月3日、「一億総サングラス計画」を発表した。同年5月に実施した調査では、何らかの紫外線対策をしている人は70.7%だった一方、サングラスを利用している人は26.1%にとどまった。サングラスを、誰もが日常的に目を守るための道具にしていく狙いだ。
スマートグラスの今後については、「次世代のアイウェア」として育てていきたいとしつつ、慎重な姿勢も見せる。
「正直、今後どういう広がり方をしていくかは、現時点ではまだわかりません。ただ、メガネは時計と違って、かけ心地がとても大事なもの。そういったところで不便のない商品を、メガネ屋としてしっかり守っていきたいと思っています」
鯖江の技術を次世代へ 2027年7月に新工場
一方で、同社が向き合う課題はスマートグラスの普及だけではない。先に紹介したZEROGRAのような商品を支えてきた、鯖江のものづくりそのものが危機に直面しているのだ。
鯖江市の統計をもとにメガネトップがまとめたところ、従業者4人以上の眼鏡関連事業所数は、2003年の296事業所から2023年には160事業所へ減少。20年間の減少率は45.9%にのぼる。製造拠点の海外流出や後継者不足も課題となっている。
同社は鯖江市の自社工場敷地内に、敷地面積1万3,197平方メートル、生産能力年84万本の新工場を建設中で、2027年7月の操業開始を予定している。なお、工場はオープンファクトリー型を採用し、実際の製造工程を見学することができる。脈々と受け継がれてきた技術や精神を間近で見ることで、ブランド価値の向上、ひいては興味関心を持ってもらう狙いも込められているそうだ。
この取り組みについては、2011年度から国内売上高で業界1位を走り続ける同社として、鯖江の製造基盤の縮小を業界全体の課題と捉えているからだという。
最新の機能を載せながらも、軸にあるのは「快適にかけられるメガネであること」。それは、20年間ユーザーの声に応えてきた定番のメガネづくりにも、鯖江の技術を未来に残そうとする取り組みにも通じている。Linse Displayは、2026年10月23日からGREEN FUNDINGで先行予約を開始する予定だ。メガネとしての快適さと、ARグラスとしての実用性をどこまで両立できるのか。製品版の仕上がりに注目したい。
※体験会で使用したのは開発中のプロトタイプ。画像や画面表示はイメージで、製品名、仕様、機能、外観、クラウドファンディングの実施時期などは変更となる場合がある。
取材・文・写真:平木昌宏
編集:土田洋祐