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「地域課題」を「資源」に変える。空き家から下水まで、神戸市が進める循環型のまちづくり

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1868年の神戸港開港以降、国内外からさまざまな人や物が行き交う拠点として発展してきた神戸市。現在も港を中心とした都市機能が集積する一方、六甲山系や里山、農村地域、海などの豊かな自然が市街地のすぐそばに広がる地理的特長をもつ。同市では、自然と都市の資源を循環させる取り組みがかねてから行われており、現在ではこうした取り組みを発展させながら“持続可能なまちづくり”を進めているという。

2026年8月6日にメディア向けに行われたラウンドテーブルにて、取り組みの概要や実施内容、そして今後の展望について担当者が語った。

放置された空き家を活性の拠点に

老朽化による倒壊や衛生・防犯面でのリスクだけでなく、地域の魅力低下にもつながるとして、いま全国の社会課題として注目されている空き家問題。神戸市においてもほか自治体の例にもれず、過去には全国平均を上回る空き家率を記録し、空き家(空き地を含む)への対策を重要施策に置いてきた。そういった実態から、同市で行われている対策の一つが『神戸市空き家対策特命チーム』である。

神戸市『異次元の空き家対策・空き地対策』より引用

弁護士2名を含む財産管理制度の活用を専門とするチームを新設し、所有者不明の空き家などに対して、神戸市長が財産管理人の選任を申し立て、その後、裁判所によって選任された管理人が建物の管理を行うほか、裁判所の許可を得て解体や不動産売却を進めるというものだ。これにより、発足前年度の2023年度には3件だった財産管理人の選任申立ては、翌2024年度には50件まで拡大。2024~2026年度の3年間で計180件の制度活用を目指しているという。

また、その一方で力を入れているのが、空き家を再び地域へと還元する取り組みだ。所有する物件をすぐに売却する予定はないものの、場所として活用してほしいと考える所有者と、地域活動の拠点を探すNPOなどの団体をマッチングする『空き家・空き地地域利用バンク』、老朽化した空き家の解体費用を補助する『老朽空家等解体補助制度』、建築家が設計に携わり、空き家を地域の居場所や交流拠点などへと再生する取り組みに対し、改修費などの2分の1、最大500万円を支援する『建築家との協働による空き家活用促進事業』など、幅広い制度が整備されている。

神戸市 企画調整局 広報戦略部 係長 大石達矢さん

企画調整局 広報戦略部 大石達矢さんはこのように話す。「神戸市では、単に空き家や空き地を整備・管理するのではなく、新たな地域活性の拠点として再活用することを一つの方針として掲げています。建築家との協働による活用事例として、かつて営業していた銭湯の隣接していたランドリースペースをカフェとしてリノベーションし、日中は周囲の高齢者の方々の憩いの場として、夕方には子どもたちが飲み物を買いに訪れ、そして夜にはバーのような使い方で仕事終わりにビジネスマンが立ち寄られるなど……幅広い世代や属性の方が来られる場所に生まれ変わりました。そういった賑わいが一つ生まれると、それをきっかけに新しく人が集まり、周辺地域の活性化や街の魅力向上にもつながっていく。そんなポジティブな連鎖を呼ぶ効果があると考えています」

神戸市『異次元の空き家対策・空き地対策』より引用

さらに、解体した空き家から生まれる廃材を資源として活用することを目的とした取り組みも進めているという。「一言で廃材といっても、磨けば資材として光る有用なものも多くあります。ただ、利活用前の古材を保存しておく場所が少ないという声を受け、それらの一時的な保管施設『BIVOUARC(ビバーク)』を新設しました。産業拠点としてはもちろん、製材作業の見学やワークショップも実施することで、空き家への理解を深め、そこから生まれる資源の循環について考える場としても活用しています」

こうした取り組みにより、大石さんは「かつて平均を上回っていた空き家率は全国平均とほぼ同等に推移している」と話す。

使える建物は新たな地域の拠点として再生し、解体する場合にも、そこから生まれる古材を次の用途へとつないでいく。神戸市が行う空き家対策は、「お役所仕事」として行政だけで完結させるのではなく、市民が実際に触れる機会を設けることで、空き家問題を自分ごととして考え、資源循環への理解を深めてもらうことまでを見据えている。

下水に眠る資源を掘り起こす『こうべ再生リンプロジェクト』

神戸市では日々の生活から生じる排水においても、循環可能な資源を見出している。『こうべ再生リンプロジェクト』は、下水処理の過程で発生する汚泥から、農業用肥料に欠かせない元素「リン(P)」を抽出・回収し、肥料として再利用する取り組みだ。本取り組みには大きな要因が二つある。

実際の閉塞管

「汚泥にはリンをはじめとしたさまざまな成分が含まれています。それらが混ざり合い科学反応が起きると結晶となり、下水処理設備の配管などの詰まりの原因として頭を悩ませていました。もう一つが、昨今の世界情勢によるリンの価格高騰です。リンは農業には欠かせないものですが、その大部分は輸入に頼らざるを得ないことから、農家さんたちの負担となっています。この二つの問題をどうにか結びつけることができないか、というところが本取り組みの背景です」(大石さん)

神戸市『こうべ再生リンプロジェクト』より引用

リンの回収については、下水処理場にて水と汚泥を分け、消化槽に運んだ汚泥に水酸化マグネシウムを加え結晶化させる「MAP法」を採用。精製されたこうべ再生リンには窒素やマグネシウムが豊富に含まれているという。そのままでも肥料として使用できるが、より効果的な製品を目指し、JA兵庫六甲や市内の農業関係者との協議を行い配合を検討。再生リンを原料とする肥料『こうべハーベスト』として展開している。

こうべハーベストを活用して生育された農作物は、『BE KOBE農作物』としてブランド表記される

「市内の農家さんたちに使用してもらうにあたって、これまで使ってきた肥料を変えることや、下水処理場で回収したリンを原料としていることに抵抗を感じる農家の方もいらっしゃいました。そこで、安全性を伝えるだけでなく、実際に農家の方々と試験栽培を重ね、従来と同じように作物が育つことを確認してきました。そうした過程を経て、納得感を持って『こうべハーベスト』へ切り替えてくださる農家の方も徐々に増えています。また、地産地消や地域循環という観点から、協力したいと言ってくださる声も少なくありません」(大石さん)

現在は市内2カ所の設備で再生リンを回収しているが、2027年度には3基目の稼働を見込んでおり、将来的には年間500トンの供給を目指しているという。さらに、市内での循環にとどまらず、市外・県外へと供給を広げていくことも見据えている。

「現在、全国の下水には、国内農業におけるリン需要量の約6分の1にあたる約5万トンのリンが含まれていると言われています。神戸市を起点としたこのモデルを全国へ広め、日本の食料安全保障への貢献にもつなげていきたいと考えています」と大石さんは胸を張って話した。

神戸市から描く、持続可能なまちづくりの未来

神戸市ではほかにも、資源回収ステーション『エコノバ』では、家庭から出るプラスチックを回収するだけでなく、地域住民が集う交流拠点として活用。また、須磨海苔を食べることで生産への影響が課題となっているクロダイ(チヌ)を食材として活用し、市内の飲食店や給食などへ展開する取り組みもその一つだ。

都市部から六甲山系、里山、農地、そして海までが近接する神戸市。その地理は、いわば日本を凝縮した箱庭とも捉えられる。都市と自然の双方から生まれる課題を新たな資源へと転換し、再び地域へ還元する同市の取り組みは、今後のわが国における持続可能なまちづくりの一つのモデルケースとなる可能性を秘めているように見える。


文・写真:土田洋祐
画像素材:PIXTA

bizSPA!編集部

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