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“AI生成”の表記がないと違法になる?ステマ規制の次に来る「AI表示ルール」

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急速に広まる生成AIとその利用。便利である反面、コンテンツの保全や信用性について懸念を訴える声もあがっている。中国やEUにおいては、生成AIをめぐって透明性義務が適用され、ラベルを表示するなどAI生成・合成コンテンツの識別ルールがすでに施行されている。一方、日本には現時点で包括的な表示義務はない。ただ、かつてステルスマーケティングが自主的な対応から法規制へと進んだように、AI表示も今後ルールが強化される可能性はある。国内の現状と、企業や個人が備えておくべきポイントを弁護士に尋ねた。

EU・中国で義務化されたAI表示ルールの概要と、日本との差

これまでのコラムでお話してきたとおり、ディープフェイクやAIフェイク記事は、名誉毀損・性犯罪・著作権侵害など既存法の枠組みで一定程度は対応できます。しかし、「見分けがつかない」「拡散が早い」といったAIの特徴への対応として、世界的には表示に関するルールが整備されつつあります。

例えば、EUでは、AI法(AI Act)により、チャットボットであることの明示や、一定のAI生成コンテンツについて透明性義務が導入され、2026年8月から適用されています。そして、実務的ガイドとして欧州委員会が公表した生成AIコンテンツの透明性行動規範では、透明性や著作権への配慮、安全性の観点から、生成AIの提供者にはコンテンツに機械可読なマーキングをすること、利用者側には公共性の高い情報についてAI利用を明示することなどを推奨しています。

また、中国でも、2025年9月に施行された「人工知能生成合成内容識別弁法」により、事業者やサービス等において、AIが生成・合成したテキスト、画像、音声、動画などのコンテンツに対して、明示的ラベル(「AIによる生成」等の画面上の文字表示やウォーターマークなど)と暗黙的ラベル(メタデータへの埋め込み、デジタル透かしなど)の両方を付けることが義務づけられています。

これに対し日本では、2025年9月には「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律」(いわゆる「AI法」)が全面施行され、AIの技術発展を促進しつつ、安全性や透明性の確保などにも配慮する基本的な考え方が示されました。EUや中国のようなAI生成・合成コンテンツの表示や識別について具体的な法的義務を課す仕組みとは異なり、日本は、あくまで自主的な取組みやガイドライン(デジタル庁「行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン」や経済産業省「AI事業者ガイドライン」などにより推奨)を軸としたソフトアプローチを採用しているため、すべてのAI生成コンテンツに表示義務を課すような包括的な法律や罰則は存在していません。

ステマ規制がたどった「ガイドライン→法規制化」と同じ流れを辿るか?

ステルスマーケティング(広告であるにもかかわらず、広告であることを隠して行う宣伝行為)規制とAI表示規制では制度の目的は異なりますが、「まずガイドラインで自主的な対応を促し、その後必要に応じて法制度を整備する」という政策手法には共通点が見られます。

日本では、消費者庁が2011年にインターネット上の広告表示や口コミについて景品表示法上の考え方を示していました。その後、口コミサイトやペニーオークションなどをめぐる問題を通じてステマへの社会的な関心が高まり、2023年には、景品表示法の不当表示の一つとして「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」が指定されました。

AI表示についても、現状は行政がガイドラインでAI生成であることを分かるように示すことを推奨していますが、今後の社会情勢や被害の発生状況によっては、法令上の表示義務として明文化される可能性があります。特に、選挙・ニュース・医療・金融・教育など、これまでの回で触れてきたような誤情報の影響が大きい分野では、ディープフェイクや偽発言による被害が実際に発生していますので、AI表示のルールを先行的に整備することも想定されます。

現時点で日本でAI生成を非表示にすると法的に問題になりうるケース

日本には、AIであることを表示していないこと自体を直接処罰する包括的な規定はありません。しかし、AI生成コンテンツを「人間が作った」「専門家が監修した」と誤解させる形で利用すると、既存法の枠組みの中でも問題になる可能性があります。

例えば、生成AIで作成した架空の商品レビューを実際のユーザーの体験談や専門家による推奨のように見せかけて、自社サービスを「(人間の)専門家チームが監修」とうたうなど、実際の制作体制と異なる表示により商品販売やサービス提供をした場合には、顧客との間での不法行為や債務不履行などとなる可能性があります。また、消費者の品質等に関する優良誤認を招くとして景品表示法上の不当表示や不正競争防止法上の誤認惹起行為の問題にも発展し、法的責任を問われるおそれがあります。

個人・企業が「今のうちにやっておくべきこと」はあるか

AI生成コンテンツの問題は、一度拡散されると取り返しがつきにくい点にあります。そのため、非表示のリスクを考慮して、表示義務が法制化される前から次のようなことに取組むことが望ましいでしょう。

・「AI利用ポリシー」を作る

どの業務やコンテンツで生成AIを使うのか、人間がどこまで検証・編集するのか、どの場面でAIの支援を受けていることを表示するのかなど、あらかじめ社内ルールや執筆ポリシーとして策定しておくことが重要です。

・「AI支援・AI生成」の表示フォーマットを用意する

国内向けには、人間による確認(ファクトチェック、情報漏洩、著作権等権利侵害、表現の妥当性、ブランドイメージなど)を多角的な視点から行うこと。そのうえで、記事の末尾に「このコンテンツは生成AIの支援を受けて作成し、編集部が内容を確認しています」といった一文を記載。画像や動画においては「AI生成画像」「AI生成動画」といった簡易ラベルを付けるなど、すぐ使える表示テンプレートを用意し、ワークフローに組み込んでおくと、法的リスクを軽減し、規制の強化にもスムーズに対応しやすいでしょう。

・EUや中国向けコンテンツでは表示を強化

EUのAI法は、EU域内向けなど一定の場合には、日本企業にも域外適用されます。中国についても、中国国内向けのサービス提供では、中国法制の適用対象となり得ますし、これら以外の諸外国でもラベル義務は広まりつつあります。状況を注視するとともに、国内向けの簡易ラベルにとどまらず、各国の制度に応じて対応できる表示方法をあらかじめ検討・準備し、コンプライアンス体制を整えておくことが望ましいでしょう。

日本でAI表示が義務化されるかどうかはまだわかりませんが、透明性を高めておくことは、法的リスクを低減するだけでなく、ユーザーからの信頼を守る上でも重要だと言えるでしょう。


■担当弁護士プロフィール

アディーレ法律事務所 正木裕美 弁護士(愛知県弁護士会所属)

一児のシングルマザーとしての経験を活かし、不倫問題やDV、離婚などの男女問題に精通。TVでのコメンテーターや法律解説などのメディア出演歴も豊富。コメンテーターとして、難しい法律もわかりやすく、的確に解説することに定評がある。

アディーレ法律事務所HP: https://www.official.adire.jp/

画像素材:PIXTA

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