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“選択と集中”の徹底で最年少クラスの代表が挑んだ事業再生。黒字化達成の舞台裏とAI時代における勝算とは

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近年、再生可能エネルギー事業や省エネルギー事業などを手掛けるSDSホールディングスが、収益構造の改善が実を結び、直近の業績予想を上方修正したことでついに「通期黒字化」という大きな転換点を迎えた。その再建の舵取りを託されたのは、就任当時31歳という若さでトップに抜擢された、代表取締役社長の渡辺悠介氏だった。

ここだけを見ると同社の成長要因となったのは「再生可能エネルギー事業への再注力」と、成長を力強く後押ししたのは、リノベーション事業などの堅実な収益基盤だった。若きリーダーは、いかにして泥臭い事業再生を成し遂げたのか?そして、直近で発表された「AIデータセンター事業」への参入は何を意味するのか?SDSホールディングスの過去とこれからの展望を渡辺氏に聞いた。

31歳の若さで抜擢された社長が見せた「挑戦」

――2023年に31歳という若さで代表に就任されましたが、当時の社内状況や、バトンを受け取った際の率直な心境を教えてください。

渡辺悠介氏(以下、渡辺):当時、スタンダード市場の上場企業の社長では最年少クラスで注目もされました。30代前半でこのポジションに抜擢いただいたという期待は、もちろんありがたく受け止めました。

ただ、引き受けた以上は結果で応えるしかない、というのが正直なところで——むしろ社長という立場の重さの方が、ずしりとプレッシャー、胸に来ていましたね。当社が手掛ける再エネや省エネの領域は、時代のど真ん中にある事業ですが、就任当時はそのポテンシャルがあるにもかかわらず、時流にうまく乗り切れていない状況でした。将来の成長戦略を描く前に、まずは足元の経営基盤をどう立て直すか、それが何よりの急務だったのです。

加えて、上場会社というのは、業績、市場や株主の方々との対話、社内の士気——この三つに同時に責任を持たなければいけない立場です。ですので、「若くしてトップに就いた」という高揚感や嬉しさよりも、「ここで自分が踏ん張らないと誰が踏ん張るんだ」という覚悟の方が、はるかに強かったです。就任のときに不安がゼロだったかと聞かれれば、そんなことはありません。ただ、その不安以上に、「この会社を、自分の手で変えていかないといけない」という使命感の方が勝っていた、というのが当時の正直な気持ちです。

――決して平坦な道のりではないことが見えている中で、代表を引き受けた「最大の決め手(覚悟)」は何だったのでしょうか?

渡辺:もちろん、私一人で事業再生をやれるとは思っていません。SDSホールディングスを支えてくださっている経営陣、ベテラン社員の皆さんが一緒に動いてくれるという確信があって、自分もチャレンジする覚悟が出てきました。

それに加えて、決定打になったのは、「この会社にはまだ再起のための土台がしっかり残っている」とはっきり感じられたことです。グループ各社をあらためて見渡してみると、再エネ・省エネ・施設ソリューションを担っている省電舎があり、中古マンションのリノベーション再販事業を展開しているイエローキャピタル・オーケストラもある——つまり、事業のタネ自体はしっかりと揃っていたんですよね。だから課題は「ゼロから何を生み出すか」ではなくて、「すでにある事業資産を、どうやって一本の収益構造として結び直すか」というところにあった。これに自分のこれまでのキャリアや専門性を活かして向き合えば、必ず成長軌道に戻せる——そう思えたから、覚悟が固まりました。

経営再生のフェーズというのは、希望的観測や夢ばかり語っていても、会社はもちません。どの事業でしっかり稼ぐのか、リソースをどこに集中させるのか、逆にどこは我慢するのか——そこを決め切ることが必要です。もちろん将来の絵を描くことも大事ですが、それより先に、足元の事業基盤を固めて、収益の源泉として最後までやりきる覚悟が要る。私自身に課したのは、「チャンスがあるから手を出す」ではなく、「手を出した以上は、結果として残せるところまで自分が責任を持ち切る」というスタンスでした。上場企業として、まず会社の地盤を固める——これが何よりの最優先課題でした。

――就任当時、SDSホールディングスにはどのような経営上の課題があったのでしょうか?

渡辺:課題感をひと言で表すなら、「事業のテーマと収益構造の間に、明らかなズレがあった」という点です。将来性のあるテーマは持っているのに、それが足元の利益にまっすぐ結びついていない。結果として、経営資源の配分もどうしてもぼんやりしてしまっていて、現場のメンバーから見ても「結局どこに集中すれば良いのか?」という状態になっていた部分がありました。ですので、まずは無駄になっている事業を整理して、徹底的にコストコントロールをかけながら、成長事業の方に経営資源と人材を集中投下していく——強固な事業基盤を作り直す、というのが立て直しの最初の一歩でした。

再生局面の会社にとって本当に必要なのは、大きな夢を語ることよりも、「収益の柱はどこなのか」を明確に定義することだと思っています。どこの事業が安定的にキャッシュを生んでくれていて、どこが将来の成長要因になり得るのか——そこをしっかりと整理して、経営の優先順位を組み直していく、というところから手を付けていきました。

――証券会社でのご経験など、これまでのキャリアは、社長就任時の状況把握や意思決定にどう活きましたか?

渡辺:証券会社で過ごした時間で身についたのは、金融市場・株式市場の基本的な見方ですね。投資家から評価される会社というのはどういう会社か、投資家は上場企業に何を期待して資金を入れてくれるのか、彼らがどんな指標を重視しているのか——そういった視点を、若いうちにかなり叩き込まれたと思っています。

結局のところ、どれだけ夢のある絵を描いても、最終的に数字に落とし込めないもの、時間軸がぼんやりしているもの、資本コストやリスクに対してロジックで説明がつかないもの——これらは市場では評価してもらえないのです。社長になってからも、何かを判断するときには、必ず自分の中で三つの問いを通すようにしました。「この一手で、収益構造はどう変わるのか」「投資家の方々に対してどう説明するのか」「いつ、どんな形で数字に表れてくるのか」——この三点ですね。それを事業計画にしっかりと落とし込んで、社員と共有しながら、改革を進めていきました。

もちろん、私は就任当時31歳と若かったので、社内で気を遣う場面が少なくなかったのも事実です。とはいえ、現状に対して保守的にならず、新しい発想や知見をどんどん取り入れて時代の潮流に乗っていく——この点では、私の「若さ」もひとつの武器になったかもしれません。

“事業の選択と集中”と”徹底したコスト管理”が功を奏し業績が回復していきました。

――直近(2026年2月)の発表で通期業績予想の上方修正を出され、ついに黒字化が視野に入ってきました。この業績回復を牽引した「最大の要因」はなんでしょうか?

渡辺:いちばん効いたのは、徹底したコストコントロールと、収益基盤をしっかり固め直したこと、この二つですね。足元の数字でいいますと、2026年3月期の第3四半期累計で、売上高が3,886,411千円、営業利益が145,911千円、経常利益が57,045千円まで戻ってきていまして、営業利益は通期予想120,000千円に対して進捗率121.6%まで来ています。こうやって数字だけ並べると、一気に回復したように見えるかもしれないですが、実態としてやってきたのは本当に基本的なことです。

案件をしっかり選別する、原価を見直す、販管費の管理を徹底する——そういう地味な作業を、ひたすらに積み上げてきた結果だと思います。

なかでも大きかったことは、「とにかく売上を立てる」というスタンスから、「利益が手元に残る売上を立てる」という方向に軸足を移したことだと思います。売上総利益は644,715千円、粗利率は前年同期の13.0%から16.6%まで改善していて、販管費率も12.8%で落ち着いています。「黒字化」と聞くと、何か劇的な一手を打ったのではないかとよく聞かれるのですが、実態は地道に経営の精度を上げ続けてきた、それだけなのです。派手な一発があったというわけではなくて、利益が残る体質に切り替えてきたことが、いちばん効いている。

例えば再エネ事業のなかでは、中古の太陽光発電所の仕入れと再販事業にも力を入れました。いまは事業ポートフォリオの一角として、堅実に収益に貢献しています。

――ここまでのお話を踏まえて「環境・再生可能エネルギー関連事業」が黒字の原動力と見られがちですが、実際には「リノベーション事業」も大きな柱として機能していると伺っています。

渡辺:おっしゃる通りで、SDSというと外からは、「再エネの老舗である省電舎」と見られることが多いです。当然、省電舎の省エネ・再エネ事業強化も進めながら、実際に今回の黒字化を足元で支えているのは、リノベーションを軸とした堅実な収益基盤の方です。リノベーション事業を担っているグループ会社、株式会社イエローキャピタル・オーケストラは、2025年3月期の通期で売上3,345,865千円、営業利益157,614千円という形で増収増益を続けてくれていまして、グループ全体の収益のなかでも非常に大きな役割を担ってくれています。

この事業の改革を進めるうえでは、まず「回転率」と「利益率」の両方をきちんと見るようにしました。リノベーション事業は、物件を仕入れて売って終わり、という単純な事業ではないです。市場やニーズ、購入者のインサイト、仕入れの目利き、改修にかかるコスト、販売のスピード、在庫の持ち方、最後の出口戦略——そこまで含めて全体を設計しないと、最終的に利益が手元に残らない。ですので、案件ごとに採算をかなり細かく見直して、どの案件で利益が生まれていて、どこで毀損が起きているのかを徹底的に可視化していきました。再建局面というのは、こういう地味だけれど効く改革を積み重ねていくことが、結局はいちばん強いですよね。

――事業再生を進めるうえで、最も苦渋の決断だったこと、あるいは「これは絶対にブレてはいけない」と死守したラインは何でしたか?

渡辺:事業全体を改めて棚卸ししてみると、当然ながら収益性の低い事業や不採算事業もありまして、そこを整理して、リソースをポテンシャルのある成長事業に徹底的に集中させていく必要がありました。そのなかで一番苦しかったのは、「可能性があるテーマ」と「いま実際にやるべきテーマ」を切り分けていく作業でしたね。

経営者というのはやはり、将来性のあるテーマが目の前にあると、全部取りに行きたくなる性質があると思います。とくに変革期には、新しい手をどんどん打ち出したくなる。でも、再生局面にいる会社というのは、リソースが無限ではありません。だから判断軸は「面白そうだからやる」ではなくて、「いまの会社の体力で本当にやり切れるか」「既存事業の立て直しと両立できるか」——ここに置く必要がありました。株式投資の損切りと似ていて、「不採算事業を切る」ということは、頭ではわかっていても、なかなか実行に踏み切れないものでした。ですが、そこは経営の基本に忠実にやっていこう、と腹を括っていました。

その一方で、絶対に譲らないと決めていたのが、「短期で黒字を出すために、未来を全部削ってしまわない」というラインです。足元の再建はもちろん最優先ですが、そこで成長の芽まで刈り取ってしまうと、結局のところ会社は延命するだけで終わってしまう。だからこそ、既存事業のキャッシュ創出力を引き上げながら、その先に再エネやAIインフラといった成長領域がきちんと乗っていく——この構造だけは絶対に崩さないようにしました。リスクに振り回されず、向き合うべきリスクには正面から向き合いつつ、成長機会は逃さないようにしました。

加えて、私自身も次の収益の柱になりそうな事業や、時流に乗っているテーマを、ひたすら自分でリサーチし続けていました。本格的に事業として打ち出す前の段階で、検証だけはしていた分野が数え切れないほどあります。後ほどお話しするAIデータセンター事業も、そのなかから生まれた新事業の一つですね。

――事業再生を進めるなかで、組織全体のモチベーションを高めることも重要な要素だと思いますが、経営基盤の立て直しを推進するなかで社員や組織をどのように変革していったのか、お話できることがあれば教えてください。

渡辺:私自身、社内からの昇格組ではなく、外部から呼ばれた社長という立場でしたので、社員とのコミュニケーションには相当意識して時間を割いてきました。同時に、社内に対する情報のオープン化にも取り組んでいて、「経営陣が会議室にこもって何かやっているけど、現場には何も降りてこない」というような会社にはしたくなかったのです。会社としてどこを向いて事業を進めたいのか、自分たちの考えを社員にしっかりと共有しながら一緒に進める——そこは強く意識していました。

そのうえで、組織変革の局面で意識したのは、理念を語ることだけではなく、「判断に一貫性がある」というのを行動で見せていくことでした。業績が苦しい時期というのは、どうしても現場の側に「方向性に一貫性がない」という疑念が生まれやすいものです。ですので、まず経営としての判断軸をはっきり決めて、それをブレずに示し続けることを徹底しました。何をやるのか、何はやらないのか。どこに投資して、どこは我慢するのか。その線引きを、感覚ではなく数字と事業性のロジックで一つひとつ説明していく、というやり方ですね。

そうやって続けてきた結果、本当に少しずつではありますが、組織のカルチャーも「利益と再現性をきちんと見る」という方向に変わってきたと感じています。経営基盤の立て直しというのは、制度だけで変わるものじゃなくて、現場のメンバーが「ああ、この会社、本気で変わろうとしているんだな」と肌で感じてくれるかどうかにかかっているんですよね。だから、数字の回復よりむしろ、組織としての判断の質が上がってきたことの方に、強く手応えを感じています。そのためにも、私自身ができる限り現場に出て、陣頭指揮を執る——この動きはずっと大切にしてきました。

強固な事業基盤と省エネの知見を武器に、急成長するAI市場に挑む

――足元の基盤が固まったことで、いよいよ再生可能エネルギー事業、省エネルギー事業というポテンシャル領域への注力が本格化すると思います。現在の市場環境において、御社の環境エネルギー事業の「勝ち筋」はどこにあると見ていますか?

渡辺:昨今、AI市場が爆発的に伸びていて、それに引っ張られる形で電力需要も大きく増えていますよね。これは象徴的な話で、電力に対する需要そのものが、これからも増えこそすれ減ることはまずないだろうと見ています。需要が増えていくということは、対応する手段は「新しく電気を作る」か「無駄を省く」かのどちらかしかないわけです。そうした構造のなかで、再エネ事業や省エネ事業に対するニーズはどんどん大きくなっていくと考えていますし、そのなかでSDSホールディングスとして一定のシェアやポジションをしっかり取りに行きたい——これが基本的なスタンスですね。

ただ、いまの再エネ市場って、もう「電気を作る」だけでは差別化しづらいフェーズに入っています。これからの勝負どころは、その電力を「どこで、どう使って、どんな需要に紐付けていくか」だと思っています。私たちのグループには、省電舎を中心に、再エネ・省エネ・施設ソリューションのノウハウが揃っています。これを、社会全体で需要が拡大していくインフラ領域とつないでいく——「発電設備を持って終わり」ではなく、「電力そのものを価値化していく事業」へ広げていく、というところに、当社の考える勝ち筋があります。

特にこれから価値が出てくると見ているのが、電力需要が高くて、かつ供給の安定性も環境性も両方求められる、そういう領域です。その代表格が、まさにAIデータセンターです。——ここに、SDSらしい勝ち筋があると思っています。

――2月に発表された「小型・分散型AIデータセンター建設・受託開発事業」や「GPUクラウド事業」への参入は、市場に大きなインパクトを与えました。なぜ今、この領域に踏み込んだのでしょうか?

渡辺:実は、AIデータセンター事業は、会社の基本的な収益基盤が固まったらすぐにでも取り組みたい新規事業でした。生成AIの利用者が爆発的に増えて、AIデータセンターへの需要が一気に膨らんでいるなかで、これからは環境負荷の低い再エネの知見や、電力消費を抑える省エネの知見を活かしたサービスが必須になっていくと考えています。そういう需要に対して、SDSホールディングスがすでに持っている事業基盤がきっと応えられる——そう確信して、参入を決めました。

建設会社などとは違って、省エネを専門にやってきた企業がAIデータセンターという非常に電力消費の大きい設備にアプローチすると、いったいどんな設備が出来上がるのか。ここに、私たちならではの独自性が生み出せるのではないかと考えています。

――具体的に、どのようなデータセンターを展開するといった計画はあるのでしょうか?

渡辺:データセンターと聞くと、AmazonさんやGoogleさんといった大手の取り組みを思い浮かべる方が多いと思います。これまでは、地方や郊外の広い敷地に巨大な建物を構えて、そこで大規模なAIプラットフォームを運用する——これが象徴的なイメージでした。ただ、これから実際にAIを業務で使いたいと考える企業、中小規模の企業でも需要に応えられない、需要は拡大中にあり——医療、製造、金融、自動車といった現場——が本当に求めるのは、各業種で扱う機密性の高いデータを、低遅延で安全に動かせる環境のはずです。ですので、これからは「遠くにある巨大インフラ」だけでなく、「都市の近くにある、分散型のAIプラットフォーム」へのニーズが、一気に高まってくると見ています。

コンテナや、戸建て住宅くらいのサイズの小さな分散型データセンターを「エッジデータセンター」と呼ぶのですが、私たちはこれをメインに建設・展開していきたいと考えています。大手のクラウドを使うよりも手頃なコストでAIを活用できる基盤を、企業の皆さんに提供していきたい。同時に、世界中からアクセスしていただいて、AI稼働に必要なGPUの計算力を使える「GPUクラウド事業」も、合わせて広げていきたいと思っています。

――AIデータセンターのニーズが世界的に高まるなか、データセンターの稼働に必要なエネルギーの安定確保や、エネルギー確保における環境配慮も世界的な課題になっています。その両者を事業として展開していくSDSホールディングスのポテンシャルは、今後どのように高まっていくと考えていますか?

渡辺:AIデータセンターというのは、これからの大きな成長市場であることは間違いないのですが、同時に電力をものすごく食うインフラでもあります。だから、サーバーをただ並べれば事業として成立する、という単純な話ではないのです。電力をどう調達するか、冷却の効率、運営体制、さらには環境への配慮まで——これらをトータルで設計しないといけない。

私たちはすでに、再エネ・省エネ・施設ソリューションの知見をグループ内に持っていますから、その延長線上でAIデータセンターを捉えられる立場にあります。だからこそ、当社は「AIの設備を置くだけの会社」ではなく、「電力制約の時代に、最も適したAIインフラを実装していける会社」になれる可能性があると思っています。

それから、AI業界の話題というと大手企業同士の提携ばかりが目立っていますが、その一方で、「AIを使いたいけど、まだ踏み込めていない」中小企業が、本当はものすごく多いのです。そういう企業に対して、安価で省電力なコンテナ型のデータセンターを提供できれば、ランニングコストを抑えた形でAIプラットフォームを活用していただけるようになる。市場としても、ここのニーズは相当大きくて、伸びしろのある領域なのではないかと考えています。

既存事業+AIデータセンター事業のシナジーを未来への原動力に

――リノベーションでの基盤構築、再生可能エネルギー・省エネルギー+AIデータセンターという成長エンジンの獲得を経て、次の中長期的な成長曲線(ビジョン)をどのように描いていますか?

渡辺:成長曲線は、大きく三つの柱で描いています。一つ目は、リノベーション事業を中心とした既存事業の収益性を、これからも引き続き強固にしていくこと。二つ目は、再エネ事業・省エネ事業・施設ソリューション事業を通じて、社会課題と紐づいた収益機会をしっかり積み上げていくこと。そして三つ目が、AIデータセンターとGPUクラウドに経営資源を投下して、次の成長エンジンとして育てていくことです。この三つを並行で動かしながら、会社全体を伸ばしていきたいと考えています。

加えて、先の4月20日には新たな資金調達についても発表しています。AIデータセンター事業と、それに付随する暗号資産関連事業を、さらに加速させていきたいと考えていますし、M&Aによるグループの拡大にも力を入れていきたいと考えています。既存事業とAIデータセンター事業の両輪で、SDSホールディングスをグループ全体としてさらに大きく育てていきたい——というのが、今のビジョンですね。

――最近は、公式X(旧Twitter)などを通じて、企業の取り組みを積極的に、かつタイムリーに発信されています。こうしたステークホルダーとの「透明性の高い対話」にも力を入れています。その狙いを教えてください。

渡辺:上場企業として、適切な情報開示をやるのは当たり前のことですが、私たちはいわゆるBtoBの会社で、メディアへの露出もそこまで多くないです。だからこそ、IR情報のような堅めの情報だけではなく、動画やSNSといった親しみやすいコンテンツを通じて、リアルな会社の姿を知っていただきたい——そして、ちょっとでも親近感を持っていただいて、応援してもらえたら嬉しいな、という思いでやっています。

それから、上場会社にとっての情報開示というのは、単に法的な義務でこなすものというより、信頼を積み上げていく経営そのものだと思っています。とくにいまの時代は、投資家の方も、社員も、取引先や金融機関も、あらゆるステークホルダーが、「この会社、いま何を考えていて、どこへ向かっているんだろう」と継続的にウォッチしてくださっています。ですので、適時開示はもちろんやり切ったうえで、それ以外の発信も含めて、「会社が閉じていない」「しっかり動いている」「考えながら前進している」ということを示していく意義は、本当に大きいと感じていますね。

――最後に、これまでの社長としての取り組みを振り返って、経営者として成長できた点をお話しいただきつつ、今後のSDSホールディングスの成長を期待する方々へメッセージをお願いします。

渡辺:就任当時から現在までで、経営に対する解像度は飛躍的に上がったと実感しています。企業経営は、教科書通りに進むことはまずないです。人と人が関わるなかで、いろいろな変化が生まれますし、誰も予測できなかった不測の事態もやってくる。そういう状況に日々向き合いながら学び続けることで、経営への解像度は格段に上がってきたと思っています。そのうえで、現状をすべて踏まえてどう決断するか、決めたことをどうやり切るか——そういう本当に基本的なことが、どれだけ重要なのか、身をもって感じてきましたね。

また、就任時は31歳という若さでしたが——その若さを前面に押し出すつもりはないという前提のうえで申し上げると——若いからこそ固定観念に縛られずに考えられること、スピード感を持って変化に柔軟に対応できることは、自分自身の強みだと思っています。この点はこれから歳を重ねても、ずっと大切にしていきたいですね。「不確実な時代」とはよく言われますが、10年後、20年後を見据えても、私はまだまだ現役世代です。未来を見据えながら、しっかりと経営に向き合っていきたいと思います。

ここまでSDSホールディングスの苦しい時代を一緒に乗り切ってくれた社員や役職員の皆さんには、感謝しかありません。

私一人の力では何もできなかったなか、皆さんの力があったからこそ、最終黒字が見えるラインまで会社を成長させることができました。もちろん、ここはゴールではなくて、新しいスタートライン。そういう気持ちで、皆と一緒にSDSホールディングスを盛り上げていければと考えています。

そして投資家の方々をはじめ、ステークホルダーの皆さまには、直近の様々な発表を通じて、SDSホールディングスがAIデータセンター事業への参入を契機に大きく変わろうとしていることを、ご理解いただけているかと思います。これからの成長の基礎となる強固な事業基盤はしっかりと出来上がりましたので、これからは、これまでの変化とは比較にならないスピード感で会社が変革していくはずです。ぜひ、引き続き応援いただければと思います。

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