「初月から300万円売上げ」発見型EC・Temuが切り拓く販路の常識

ECで商品を売っていても、新規顧客にはなかなか届かない——そんな悩みを抱える事業者は多い。
従来の主戦場である楽天やAmazonといった検索型モールでは、ユーザーが自分からブランド名や商品名を検索して初めて商品が見つかる構造で、全国区の知名度がない企業にとっては広告費をかけても新規顧客の獲得が難しい。
こうした課題に対し、注目を集めているのが『Temu(テム)』だ。2022年に米国で創業し、現在90以上の国・地域で展開するグローバルECプラットフォームで、日本には2023年7月に参入。2年足らずで月間アクティブユーザー数は5,721万人(ニールセンデジタル調べ)に達し、楽天・Amazonに次ぐ国内第3のECプラットフォームとして広まっている。
ユーザーの嗜好と商品をダイレクトに提案する独自システム
Temuの特徴は「発見型」と呼ばれる独自のアルゴリズムによる商品の自動提示だ。ユーザーの閲覧履歴などからその人の好みに合った商品を優先的に表示するため、広告費や検索順位といったものに依存せず、潜在顧客へとリーチができる。SNSや動画・配信メディアなどの“おすすめ(レコメンド)”の機能とイメージが近い。
Temuがユーザーを対象に行った調査では、33%が「知らなかった商品をTemuで発見した」と回答。また、新規出店事業者の約50%が20日以内に初回売上を達成しているとあり、発見型による構造が数値として現れているという。
事業者の声

福井県敦賀市の海産物店『港ダイニングしおそう』では、Temuに出店した初月に300万円を達成し、以降は月500万円前後の売上げを安定して生み出している。取材時点の最新データによると、今月の売上げ高は約1,500万~1,800万円になる見込みである。
代表の刀根聖氏は「従来のECでは既存客が中心だったが、Temuからの注文はすべて購入したことがない新規顧客」だと話す。

同様に新規顧客へのリーチを課題としていた、岐阜県の菓子メーカー『新杵堂』は、Temu出店後に端材を活用した「切り落としロールケーキセット」がベストセラー商品にまで成長。購入データを参照すると、従来の高齢女性中心とは異なる若い女性・サラリーマンなどの新規層が購入をしていた。
また、新規販路を拡大しているのは食料品だけにとどまらない。Temuでは生活雑貨・アパレル・食品・園芸など600以上の商品カテゴリーを展開しており、幅広いジャンルの事業者が出店できる。

手芸用品を展開する「tryangle」代表・藤原真吾氏は、「これまで手芸市場の主軸だった子育て世代やシニア層の“両極端”構造に、Z世代という新たな軸が加わりつつある」と話し、Temuの集客力について期待を膨らませている。
さらに、Temuは2025年5月に「国内販売者募集プログラム」を開始し、まもなく1周年を迎える。本プログラムは、日本国内に登録され在庫を保有する事業者であれば、出品手数料が無料かつ最短1営業日で審査結果が出る。この手軽さも業界での注目を後押ししている要因だ。
顧客獲得にTemuという選択肢
ここまでTemuへ出店した企業の実例を紹介したが、出店すれば必ず売れるというわけではもちろんない。発見型のアルゴリズムでユーザーへリーチしたとしても、購買へとつながるには、従来のECと同様に商品力や写真・説明文の作り込みがカギを握るだろう。
ただし、情報が溢れ、消費者の目が肥えた時代に「そもそも見てもらえない」という課題に多くの事業者が直面している現在。Temuは新たな販路拡大施策として、一つ選択肢といえるのではないだろうか。
文:土田洋祐