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究極のりんごジュースに込められた覚悟。カゴメ×JAアオレンが挑む青森りんご産地存続への道

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言わずと知れたりんごの名産地・青森。青森のりんごは国内のりんご生産量の60%を占めるだけでなく、国外へ輸出されるりんごの90%以上を担うなど、日本の宝といっても差し支えない存在だ。しかし現在、りんご生産の現場では、高齢化や異常気象などから生産量減少の危機に直面している。県が公表した「青森りんご総合戦略」によれば、生産量は年々減少しており、2040年には現在の約半分にあたる20万トンまで落ち込むと見込まれているという。

そうした状況の中で、食品・飲料メーカーのカゴメが、青森のりんご生産に新たなアプローチで関わり始めている。その一つの形となるのが、2026年3月10日(火)より数量限定で発売された『青の森の蜜』だ。弘前市で農産物の加工・販売を行うJAアオレンと、カゴメ、生産者の三者が約2年をかけて開発され、担当者は“究極のりんごジュース”と銘打つ。この商品が生まれた経緯、そして何を実現しようとしているのか。JAアオレンとカゴメの両社との対談でその答えが見えてきた。

志から生まれた一本。青い森の蜜ができるまで

左:カゴメ東京本社 マーケティング本部 ウェルビーイング事業部 部長 中津隈哲郎/右:JAアオレン(青森県農村工業農業協同組合連合会)代表理事会長 小笠原康彦

「とびきりおいしいりんごジュースを作ろう。そして青森りんごを盛り上げたい。そのような思いから開発はスタートしました」

2026年4月27日(月)、メディア向けに開催された『青い森の蜜』商品概要説明会。開発の中心を担ったカゴメの中津隈哲郎さんと、JAアオレンの小笠原康彦さんは、そう言って当時を振り返った。

芳醇な風味となめらかな飲み心地で、りんごを丸かじりしたときのような満足感がある。最大限にその魅力を味わうにはワイングラスなどで飲むのがおすすめだ

『青い森の蜜』に使用されているのは“りんごの王様”とも呼ばれる品種のふじ。独自の基準で選果したふじをJAアオレンが持つ独自技術「密閉絞り製法」でストレート果汁にし、さらに裏ごししたりんごのピューレーをブレンド。果肉感あふれる飲み心地と豊かな香りが特長で、青森りんごのおいしさを最大限追求している。

販売価格は1,000ml×3本入りで「10,800円(税込)」。一般的なりんごジュースとの比較すると強気な設定である上、これまでカゴメが展開してきた商品の中でも珍しい価格帯だ。

この価格について中津隈さんは、「原材料に使用しているりんごは、着色が80%以上をクリアーしたもので、生食用で流通しても遜色のない品質です。加えて、“とびきりのおいしさ”を追求する中で、三者の知見と技術を積み上げていった結果、この価格帯のリリースになった」と話した。

「社内の商品企画会議にかける際に、『こんな高いものは売れないのではないか』という指摘も予想していのですが、実際の反応は前向きな声が多くホッとしました。ただその中で、弊社の会長から『全員で産地に全霊で向き合う覚悟をもつように』という言葉があり、背筋が伸びたのも覚えています

プロジェクトのスタートはとても華々しいものですが、年月が経過するにつれて形骸化していきやすい。本商品において、そんなことが絶対にあってはいけません。カゴメが大切にしているのは生産者の方たちと持続的な取引をすることです。そのために価値を広めていくことをしていきたいと思っています。その一方で、○○ブームのような急激な需要を生み出してしまうと、生産現場に負荷をかけることにもなります。会長が口にした“産地に向き合う覚悟”という真意はここにあるかもしれません」

このカゴメの姿勢に対し、JAアオレンの小笠原会長は「私たちは農業団体ですので、生産者と向き合って足並みをそろえて進み価値を生み出していく、というスタンスを大事にしています。これまでを含め、カゴメさんは『商品が売れないので、原料はいらない』という短期的な取組みでは終わらず、同様の到達地点を目指していると感じていました。その共鳴した経験から商品を共創していくことを決めました」と語った。

生産者と消費者。青い森の蜜がつなぐ夢と誇り

先述の「青森りんご総合戦略」には、りんごの生産量の減少推移だけではなく、2040年時点での重要目標達成指標として「生産量:40万トン以上/販売額1,800億円以上を確保する」表記があり、この目標達成に向け、成長の早い品種の改植をはじめ、新規就農者向けに強固なサポートを行うなど多角的な取り組みが行われている。その中で本商品が担うのはブランド価値の向上などを内包した「販売力の向上」の領域だ。

小笠原会長は「現在、青森のりんごの生産量維持は喫緊の課題になっています。各者の技術・ノウハウを掛け合わせたこの商品を通じて『青森のりんごはやっぱりおいしい』ということを改めて知ってもらえるきっかけになれば」と期待を胸に話した。

さらに「私たちがいつも考えているのはお客様の喜びの声です。その声が届くと、“じゃあまた頑張って作ろう”という再生産意欲につながり、それが青森のりんごの持続的な生産にも広がっていくと信じています」とも続けた。

実際に先日、青森県知事への表敬訪問あとには、生産者はじめ農協組合から『すごいもの作ったな!』や『非常に励みになる』といった大きな反響があったそうだ。その中には、高単価の商品を生み出せるのは、品質の高い青森のりんごだからこそ、といった声も寄せられたという。

そう熱く語る小笠原会長の言葉には、カゴメとの間にできた安定的な販路という恩恵のほかに、夢や誇りといったものが感じられた。

現在、青い森の蜜はカゴメの通信販売「カゴメ健康直送便」で5,000セット限定で販売中だ。取材時点では1,300点程度の注文が入っており、計画通りの推移だという。実際に購入した顧客からは「すりおろしりんごのような舌ざわりで高級感がある」「間違いなくとびきりの味だ」という声が寄せられており、好評を博している。

カゴメ担当者曰く、今後は需要と供給のバランスに応じて生産サイドと協議しながら展開の方針を定めていくという。ここにも生産者と向き合う覚悟が感じられる。また、本件のモデルを多品目に横展開する構想もあると話す。青森のりんごをはじめ、国内各地の産地が課題に直面している現在。それらに対し、本件を皮切りにカゴメが新たな救世主となる日も遠くないかもしれない。


文:土田洋祐
画像:土田洋祐、カゴメ株式会社
参考:青森りんご総合戦略(令和7年9月13日)


bizSPA!編集部

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