紅麹健康被害から2年、GMP義務化はサプリの信頼回復の一手となるか?

食の欧米化にともなって不足しがちな栄養素をサプリメントで補う行為は、もはや特別なことではなくなった。現在、サプリメント市場は末端ベースで約1兆円規模に達している。一方で、「どのような環境で製造されているのか」という点は、消費者にとって見えにくい部分でもあった。サプリメントの製造現場では以前からGMPに準拠した自主的な品質管理が行われてきたものの、あくまで任意制度であり、すべての製品が対象ではなかった。
その空白を埋めるきっかけになったのが、2024年に発覚したサプリメント利用による健康被害だ。消費者庁の検討会は、届出内容の適否だけでなく製造工程そのものの管理体制に踏み込む必要があるという結論に至り、2026年9月、これまで対象となっていた特定保健用食品(トクホ)のサプリメント形状製品に加え、機能性表示食品のうち錠剤・カプセル剤・粒状などのサプリメント形状製品にも、GMP(Good Manufacturing Practice:適正製造規範)に基づく製造管理が義務付けられる。
では、この義務化は業界と消費者にとって何を変えるのか。7月16日に一般社団法人国際栄養食品協会(AIFN)が開いた「GMPシンポジウム2026」には、国際認証機関NSFの日韓担当者らも登壇し、制度の背景と国際的な品質管理の潮流を語った。
GMP義務化の背景
GMPとは、1963年に米国で制定された品質管理体制における考え方だ。医薬品の製造において、定められた品質規格に適合することを確認するだけでなく、製造過程についても適切に管理を行い、品質の良い優れた医薬品を恒常的に供給されることを目的としている。サプリメントにおいては1994年に同国でのDSHEA制定を経たのち、2000年代にサプリメント向けcGMP(current Good Manufacturing Practice)が義務化された。
一方、日本では医薬品には薬機法に基づきGMPが義務付けられてきたが、サプリメントは食品であるため、これまで任意の認証制度にとどまっていた。
制度見直しの契機となったのが、2024年の小林製薬紅麹関連製品による健康被害だ。消費者庁の検討会では、届出内容だけでなく製造工程そのものの品質管理を強化する必要があるとされ、2026年9月以降はサプリメント形状の機能性表示食品を対象にGMPが義務化されることとなった。

一般社団法人国際栄養食品協会(AIFN)天ヶ瀬晴信 理事長は、「元来、品質においては信頼性が高い日本でありながらも、過去のような健康被害が出てしまった。再発を防止するためにも今回のGMPは必須である」とし、今回の制定によって業界全体の信頼回復の一助としていくと考えを示した。
義務化によって浮かびあがる懸念と希望
日本のサプリメント業界では、販売会社が受託加工企業に製造を委託する分業構造が一般的だ。GMP義務化は、この構造の中で誰が品質に責任を持つのかを可視化する。原料の受け入れから製造、品質試験、出荷まで、製造企業側が各工程を管理することが求められるようになり、これまで販売会社の届出内容だけで担保されてきた品質保証のあり方が、工程全体に広がることになる。
消費者にとっては、製品そのものの品質だけでなく、製造工程全体の管理体制が強化されることで、より安全性や品質の安定性が担保された製品を選びやすくなることが期待される。
一方で、対応コストは軽くない。先行する米国では、cGMP対応にともなって受託製造費が約10%上昇した例が紹介された。国内でも分析法の開発や品質保証体制の強化、人材確保にかかるコスト増が見込まれ、とりわけ多品種少ロット生産を行うメーカーへの負担は大きいという指摘があった。
それでも登壇者たちは、この負担を消費者の信頼を維持するための投資と位置づけている。むしろ、国際水準のcGMPへの対応が進むことで日本企業の競争力強化につながるという見解も示した。義務化による管理体制の整備は短期的な目で見れば負担になるが、長期的に見ればさらなる市場拡大への意味のある一手となるという。
その実例として紹介された「ニュートリライト™(Nutrilite™)」は、米国でcGMPが制定される以前よりサプリメントの製造・品質管理を一元管理し、日本を含む世界中で信頼のあるブランドとして認められてきた歴史をもつ。

ニュートリライト™の品質エンジニアを務めるザラ・オスマニ氏は、「品質の維持にはコストがかかるが、それを怠って健康被害が出れば、それ以上のリスクを負うことになる」と、製造管理の重要性について言及した。
GMP義務化をリスタートラインに
GMPの義務化は、あくまで最低限の基盤づくりの始まりでしかない。制度に適合すること自体がゴールではなく、工程全体で品質を追求する姿勢や、海外の認証制度とどう整合を図るかが、今後のサプリメント業界の信頼回復と国際競争力を左右することになりそうだ。届出だけで守られてきた業界の常識が、9月を境に工程管理の常識へと置き換わっていく。
アムウェイ(Amway)
アムウェイは売上世界 No.1のダイレクトセリング企業*1です。ミシガン州エイダに本社を置き、世界100以上の国と地域で事業を展開しています。人々の、すこやかで、ゆたかな人生を切り開くサポートをすることを目指し、日常的に使用する様々な製品を提供しています。売上上位ブランドには、栄養補助食品の「ニュートリライトTM」(売上高世界 No.1*2)、スキンケアやメイクアップ製品の「アーティストリーTM」(外資系スキンケアブランド内の、日本売上TOP5*3にランキング)、キッチン用浄水器の「eSpringTM」(売上高世界 No.1*4)などがあります。
*1 2025年 Direct Selling News誌の Global 100ランキングに基づく
*2 グローバルデータ調べ:http://gdretail.net/amway-claims/
*3 2024年4月TPCマーケティングリサーチ株式会社調べによる
*4 2024年グローバルセールスに関するヴェリファイマーケット社調査に基づく
文・写真:土田洋祐