世界33カ国の経営者を見てきたトップが語る、「成功する経営者」の共通点と日本企業の強み

世界33カ国で展開する経営者コミュニティ『コーポレートコネクションズ』には、業種や国境を越えて、多様な企業経営者やビジネスリーダーが集う。そこで生まれるのは、単なる人脈ではなく、互いの経験や知見を持ち寄り、新たな事業機会や成長のきっかけを生み出す関係性だ。世界各国の経営者を見てきたグローバルプレジデントのロバート・ジェルヴェ(Robert Gervais)氏と、日本とシンガポールのナショナルディレクターの伊藤太一氏に、成功する経営者に共通する資質、日本企業が持つ強み、そしてこれからの時代に求められるグローバルな視点について話を聞いた。
人と人との信頼が、企業の成長を加速させる
──ご自身がグローバルプレジデントを務める「コーポレートコネクションズ」とは、どのような組織なのでしょうか?

ロバート氏:コーポレートコネクションズは、2005年に設立した、年商5億円以上の経営者やビジネスリーダーを中心としたエグゼクティブコミュニティです。組織・地域社会・人生に意味のある変化を生み出す機会を創出できるよう支援することを目的としており、現在は世界33カ国に展開しています。
私たちの組織が他の経営者コミュニティと大きく異なるのは、ビジネス上の利益や人脈づくりだけを目的としたつながりではないことです。経営者同士が信頼関係を築き、その上で新たなビジネスや共創につなげるとともに、一人の人間としてより良い人生を送れるよう支え合うことを重視しています。世界規模でこうしたコミュニティを展開している例はほとんどありません。
──単なるビジネスマッチングではなく、『共創』や『人生』を重視しているコミュニティとのことですが、そうした考え方が企業や経営者にどのような変化をもたらすのでしょうか?
ロバート氏:経営者として自身の能力や経験を信じて立ち回ることは大切です。しかし、どれほど優れた能力を持っていても、自分一人では見えない視点や、実現できることには限界があります。信頼できる仲間から率直な意見や新たな考え方を得ながら、互いに切磋琢磨し、自らの能力や判断をより洗練させていくことが重要です。
私たちは、目先の取引(トランザクション)ではなく、経営者一人ひとりの成長や変化(トランスフォーメーション)こそがより大きな価値を生み出すと考えており、その上でまず相手に価値を提供する「Givers Gain®」のマインドセットを大切にしています。互いに知見や経験を惜しみなく共有し合うことで、ビジネスパートナーという関係を超え、一人の人間として信頼し合える関係が育まれます。そうしたつながりは、新たな価値の創出や経営者自身の成長につながっていきます。
──そのマインド形成には、ご自身の経験も影響していらっしゃるとか?

ロバート氏:はい。20代の頃に自らビジネスを立ち上げた当初は、誰の助けも借りず、自分の力だけで成功したいと考えていました。自分の能力を証明したかったからです。しかし、事業を進める中で一人では乗り越えられない壁に直面したとき、周囲の人を信頼して力を借りるようになってから、物事は驚くほど加速度的に進んだのです。その経験を通じて、信頼こそが人やビジネスを成長させる原動力なのだと実感しました。
──AIをはじめとしたテクノロジーの発達が著しい現在において、共創相手との『信頼』というものはどのような価値を発揮すると考えていますか?
ロバート氏:AIやテクノロジーは、いまやビジネスのみならず私生活にも深く浸透し、その範囲は今後さらに広がっていくでしょう。しかし、だからといってすべてを代替できるわけではありません。中でも、人と人の間に生まれる信頼は、テクノロジーでは置き換えきれない価値であり、大きな意思決定を行うときに欠かせないものです。
信頼は、人類がはるか昔から育んできた根本的な精神であり、その積み重ねによって社会は発展してきたと言っても過言ではありません。テクノロジーの発達によって、一人でも多くのことを成し遂げられる時代になり、人との協働は以前ほど必要ないと思う人もいるかもしれませんが、私は逆だと考えています。技術が進歩していけばいくほど、人と人との信頼を築くことの価値は、新たな価値の創出を支える基盤として、これまで以上に重要になっていくでしょう。
世界から見た日本企業の強みと課題
──多くの国や地域のビジネスシーンを見てきたなかで、日本企業の強みはどこにあると感じていますか?
ロバート氏:品質の高さ、誠実な姿勢、長期的な視点が日本企業の強みだと思います。これは私個人の感想ではなく、世界中の経営者に聞いても多くの人が同じような印象を持っているでしょう。総じて、日本のブランドや企業は信頼が高いです。
──その一方で、足りない要素や課題はありますか?
ロバート氏:私は日本企業の専門家ではないため、あくまで個人的な印象としてお話ししますが、日本のような長い歴史をもつ国では、自らの成功体験や価値観の中で完結してしまうという共通点があると感じています。日本は世界でも有数のイノベーションを生み出してきた国ですが、歴史のある企業ほど変化のスピードが緩やかで、保守的な印象を持っています。

伊藤氏:現在、日本のコーポレートコネクションズに参加しているのは、年商数十億円規模を中心とした中堅企業の経営者です。その多くが、さらなる成長を見据え年商100億円超を目標に掲げています。それの一つの手段が、海外進出なのですが、チャレンジする気持ちはあっても「どうやっていいかわからない」や「利益を回収できるのか」と口にする方が多いんです。
言語の壁や海外の商習慣の違いなど、未知の部分があるからやっぱり怖いんですよね。日本人は完璧さを求める傾向があるので、十分に準備が整わないと一歩を踏み出しにくいところがあると思います。
コーポレートコネクションズでは、各国で定期的にチャプターミーティングを開催しています。そこで、「私たちの会社はこんな技術を持っています。海外展開を考えているのですが、一緒に事業をやってくれる方や出資してくださる方はいませんか?」と話してみるだけで、手を挙げてくれる海外の経営者は本当に多いんです。
それは、日本企業の技術力や品質、そして『日本ブランド』そのものが世界から高い信頼を得ているからこそだと思います。まずは台湾や香港、ベトナムなど近隣の国からでも構いません。どんどんと踏み込んでいくことが大切です。
──一転、守りの視点でお伺いしたいのですが、昨今の中東情勢をはじめ、日本の企業・市場は世界情勢の変動による影響を受けやすいようにも感じます。そうした環境の中で、できるだけ外部環境に左右されない強い企業になるためには、何が必要だとお考えですか。
伊藤氏:私がいつも、経営者の皆様に「視座を上げること」をお伝えしています。数十億円規模の経営者の方たちはまだ現場のプレイヤーとして活躍している場合が多く、重要な意思決定も社長に集中しています。一方で、100億円規模になると、1,000万円規模の案件でも部長クラスが判断し、組織が自律的に動くようになります。そうすると、経営者には新たな時間が生まれます。
その空いた時間を、日本全国や世界へ出て、新たな知見を得るための活動に充ててほしいんです。その経験により、これまで見えていなかった課題や可能性が見えるようになり、いずれ業界全体や市場の変化を感じ取れる「先を見る目」が養われていくと考えています。
そうした視点があれば、世界情勢や外部環境の変化を先読みし、リスクを回避したり、次に進むべき道を冷静に判断したりできるようになるはずです。そうした視座を持つ経営者こそが、変化の激しい時代を生き抜いていけるのではないでしょうか。だからこそ、経営者には信頼できる仲間にある程度を任せ、外部へ積極的に活動の場を広げるべきだと思います。
国境を越えて共通する、成功する経営者の条件
──世界各国の経営者と接するなかで、成功を手繰り寄せる経営者に共通している特長や気質はありますか?
ロバート氏:世界各国の優れた経営者に共通しているのは、まず「成長志向」を持っていることです。売上を伸ばすだけでなく、より効率的な経営や組織づくりなど、常に学び、成長する機会を探し続けています。
もう一つは、リスクとの向き合い方です。多くの人は一定の成功を収めると、それを守ろうとします。しかし、次のステージへ進む経営者は、リスクを恐れません。もちろん無謀なのではなく、計算されたリスク、賢明なリスクを取ることができるのです。
そして最後に、行動力があります。「そのアイデアは思いついていた」と話す人は少なくありません。しかし、本当に成果を出す人は、その機会を見つけたときに実際に行動へ移します。世界中のメンバーを見ても、この点は共通しています。

伊藤氏:私は、成功する経営者とは「どれだけ社会に価値を提供できるか」を考え続けている人だと思います。企業の成長は売上や利益だけではなく、社会へどれだけ価値を還元できるかによって決まる時代です。私はよく「お金持ちではなく、価値持ちになってほしい」とお伝えしています。
もちろん、成長意欲や海外へ挑戦する姿勢も欠かせません。しかし、それ以上に重要なのは、一人で成長しようとしないことです。AIなどを活用すれば、一人でもある程度までは成長できます。しかし、その先のステージへ進むには、ともに学び、刺激を与え合える仲間の存在が不可欠です。
人は、人からしか学べません。他者の成功や失敗、経験に触れることで、自分自身の視野も広がり、次のステージへ進むことができます。社会貢献を目指す人、海外へ挑戦したい人、社員の幸せを追求したい人など、目指すものは人それぞれです。その志に共鳴し、ともに歩んでくれる仲間を巻き込んで進む。そのような環境に身を置き続ける人こそが、結果として成功を手繰り寄せているのではないでしょうか。
コーポレートコネクションズ
世界33カ国で展開するエグゼクティブコミュニティ。年商5億円以上の経営者やビジネスリーダーが参加し、業種や国境を越えたネットワークを通じて、経営課題の共有や相互成長、新たなビジネス機会の創出を目指している。日本でも200名を超える経営者が参加し、国内外をつなぐビジネスコミュニティとして活動を広げている。
Robert Gervais(ロバート ジェルヴェ)
コーポレートコネクションズ共同創業者兼グローバルプレジデント。2017年から現職を務め、世界33カ国に広がるエグゼクティブコミュニティを率いる。以前はテクノロジー企業「Zerofail」を創業し、スタートアップから多国籍企業へと成長させた実績を持つ。現在は、世界中の経営者同士をつなぎ、企業や地域社会の成長を支援する活動に注力している。
伊藤 太一(いとう たいち)
コーポレートコネクションズ・ジャパン&シンガポール ナショナルディレクター。LIC グローバル株式会社およびLIC パートナーズ株式会社の代表取締役CEO。米国マサチューセッツ大学ボストン校卒業後、英国オックスフォード大学に留学。欧米企業での勤務を経て、2018年にコーポレートコネクションズ・ジャパンの立ち上げに携わり、現在は日本とシンガポールでエグゼクティブコミュニティの運営を担う。著作『シン・ビリオネア思考 ― 年商100億円の壁を突破する』(マネジメント社、2026年3月刊)
文・撮影:土田洋祐