シリーズ全作が「読み放題」にあるケースも

　一方、既刊の小説やコミックスを目当てにしていると、Kindle Unlimitedは期待外れに感じてしまう。前述したように、長編シリーズの途中までが対象になっているケースが多いからだ。

　ただし、シリーズ全作が「読み放題」になっているケースもある。割合は高くないが、もしも目当てのシリーズ全作が「読み放題」対象に含まれていた場合、Kindle Unlimitedはずば抜けてお得なサービスとなる。

　ここでおすすめしたいのが、山上たつひこのギャグマンガ『がきデカ』シリーズである。本編全26巻のほか、後日譚を描いたスピンオフを含め、すべてのタイトルをKindle Unlimitedで読むことができる（2020年6月12日現在）。

お気に入りのタイトルが「読み放題」対象だと儲けもの。ただし「全巻配信されている作品に絞って検索する」といった機能がないのは不親切に感じる

　おかしな結論になってしまうが、『がきデカ』という傑作マンガを2か月かけて通読できるというだけで、99円以上の価値は確実にあるはずだ。ただしシリーズ最初期は作風に揺れがあるため、初見の人は、よりぬきエピソードを集めた「自選集1」から読み始めるのがいいかもしれない（こちらも無料）。

　このほか、『西原理恵子の人生画力対決』シリーズや、木多康昭の『幕張』も、全巻が「読み放題」の対象になっている。今後はビジネス書だけでなく、こういった「笑える本」のラインナップも増えていくと嬉しいものだ。

ウォーキング中にも読書できる「Audible」

　Kindle Unlimitedとは関係ないが、Amazonは「電子書籍」という市場で別のアプローチも打っている。一冊の本を朗読した音声データを販売するサービス「Audible」がそれだ。

　読書とはふつう、目でするものである。自動車の行き交う現代の生活道路では、二宮金次郎のように「ながら読書」をするのは難しい。そこで聴覚というリソースをインプットに活用してもらおうというのが「Audible」のねらいである。

Audibleでメインとなるのは自己啓発などビジネス系のジャンルだが、ライトノベルの人気作も配信されている

　Audibleに登録すると、「Audibleストア」からオーディオブックをダウンロード購入できるようになる。ラインナップはビジネス書が中心だが、『火花』『下町ロケット』などの文芸書もある。

　各書ごとに、プロのナレーターや有名声優が朗読を録音している。たとえば、大ヒットした映画『君の名は。』のノベライズ版の朗読担当は、女性声優・ナレーターの朴璐美だ。「男女双方の演技ができ、ナレーションもできる」という渋い人選にうなる。声優ファンにとっても価値のあるサービスだろう。