あることを伝えたら突然、音信不通に…

　結婚詐欺かもしれないと不審には思うものの、下柳さんを失うのが怖く、なかなか核心を突くことができなかったのだとか。無心されるお金はいつしか100万円を超え、不安な毎日のなか、しばらく生理が来ていないことに気づきます。そして、そのことを下柳さんに伝えた途端、彼は家を出て音信不通になってしまいました。

　佐藤さんは必死で下柳さんを探そうとしますが、名前も年齢も、すべてがウソだったことが発覚。

「親とは不仲だから、中には入ってもらえないんだけど」と連れて行かれた実家でさえ、他人の家だったのです。

「絶対に許さないと思いました。手がかりは、実家と言って連れて行かれた家と車のナンバープレートだけだったので、まずは、実家と偽っていた家とその周辺で、下柳のことを聞き込みしたんです。そしたら、たまに下柳の車が来ていて、いつも違う女性を乗せていることがわかりました」

ローカルな情報網を活用して犯人確保

「ほかの女性にも、この家が実家だと偽っているに違いない」とピンときた佐藤さんは、仕事が終わってから毎日、その家の周辺で張り込むことにします。聞き込みに対応してくれた近所の人たちが、犬の散歩やジョギングをしているときに佐藤さんの姿を見かけ、ジュースや菓子パンを持ってきてくれることもあったと言います。

「そのうち生理が来たことで諦めようとも思いましたが、私の仕事中に下柳が来ていたと近所の人が情報をくれることもあり、頑張れました。そんなある日、捜索に協力してくれていた友達と、下柳を捕まえることに成功したんです。そして、本当の実家まで案内させ、下柳に渡したお金の約半分50万円を支払ってもらいスッキリしました。あとの半分は、勉強代です」

　田舎ならではのネットワークを使って、詐欺師オトコの正体を暴いた佐藤さん。ずっと都会での生活に憧れていたものの、この件をキッカケに、地元である田舎の暮らしもなかなかよいものだと思い始めたそうです。田舎のネットワークは、高性能のパソコンやスマホより優秀かもしれません。

＜取材・文／山内良子　イラスト／カツオ（@TAMATAMA_GOLDEN）＞

特集［ローカルで驚いた出来事］