健康面において女性たちを救ったのはもちろんですが、ラクシュミを称賛すべき理由はそこで終わらせないこと。それは、安価でナプキンを購入できるようにするだけでなく、ナプキン製造機を作ることで、仕事のない女性たちを自立させるシステムまで生み出し、精神面においてもサポートしているところです。

　つまり、「貧しい男性がお金持ちになった」というただのサクセスストーリーではないのも本作の魅力といえます。

人を幸せにできるチャンスはどんなところにもある

「愛する妻のために！」という一心で始めたことが、貧しい国々の女性たちを救い、国連から講演依頼が来たり、米タイム誌の「世界で最も影響力のある100人」に選ばれたりと、まさに“インディアンドリーム”。

　お金を儲けるためだけにしていることには、いつか疑問を抱く日が来るかもしれませんが、続ける意義のある息の長いビジネスモデルとは何かを教えてくれます。そんなラクシュミのひたむきな姿に、「自分にもできることがあるのでは？」と背中を押される人もいるかもしれません。

　タブーを打ち破って新たな道を切り開くためには、どんなに他人から批判されてもめげない強さと情熱、そして人を幸せにしたいと思う気持ちが何よりも大事。文字にすると、あまりにも使い古された偽善的な言葉のようにも思うかもしれませんが、「変態」と呼ばれようが、妻から軽蔑されようが、自分の信念を貫き続けたラクシュミを見れば、それが大げさではないと痛感するはずです。

　世の中にはまだまだ人が必要としている“悩みの種”が転がっているものですが、どうやってそこに水を与え、どんな花を咲かせていくかはあなた次第。不便や疑問から発明が生まれるように、日常のあらゆるところにビジネスチャンスは潜んでいるので、自分のことだけにとらわれるのではなく、まずはどうすれば家族や彼女のような自分の身近にいる人を幸せにできるのかを一度考えてみては？

＜TEXT／志村正美＞