50周年を迎えた『まんが日本昔ばなし』を次の世代へ。AI技術で広がる作品の可能性

1975年の放送開始から50周年を迎えたテレビアニメ『まんが日本昔ばなし』。その物語を次世代、さらに海外へ届けようとする新たな取り組みが始まっている。東京・麻布台ヒルズで開催中の企画展「POP UP BOX『まんが日本昔ばなし展―昔、むかし、あるところに…』」では、作中で語りを務めた市原悦子さん、常田富士男さんの声をAI音声として再現したコンテンツも登場。往年の名作とテクノロジーの掛け合わせによって、IPの世界観を守りながら新たな世代へ届ける試みを取材した。
「公認AI音声」で受け継ぐ『まんが日本昔ばなし』の世界
『まんが日本昔ばなし』の企画・運営やライセンス管理を担う愛企画センターでは、放送開始50周年を迎えた同作を次世代へ継承するため、フィルムや原画などのデジタルアーカイブ化をはじめ、配信や商品化、イベントなどを進めている。
今回、その取り組みの一環として連携したのが、NTT西日本の音声AI事業「VOICENCE」だ。制作されたコンテンツでは、『まんが日本昔ばなし』約90作品、1作品あたり10〜15分ほどの音声をもとにAIモデルを構築。市原悦子さん、常田富士男さんによる語りの声色や間、表現力を再現するとともに、日本語を含む6言語で作品を楽しめる仕組みを実現した。

NTT西日本 VOICENCE カンパニー カンパニー長/CEO 花城高志さん
そのなかで特徴的なのは、単に声を似せるだけの生成AI活用ではない点だ。市原さん、常田さんはいずれもすでに逝去しているため、愛企画センターとVOICENCEは両事務所や遺族と対話を重ね、権利者の許諾に基づいて音声を活用する体制を整えた。そのうえで、声そのものだけでなく、作品特有の間や表現、誰にどう届けたいかという意向まで含めて「公認AI音声」と位置付けている。
生成した音声には電子証明書も付与し、どのモデルで作られ、何をもとに学習したのかを追跡できる仕組みも採用している。
愛企画センターでは現在、全1470話に及ぶ『まんが日本昔ばなし』のデジタル化を進めている。同社はその狙いについて、「昭和と平成初期に放送していた作品を、もう一度令和の子どもたちに届けたい」と説明。さらに、日本国内にとどまらず海外にも作品を届けるため、多言語展開にも取り組んでいる。

会場内パネルよりQRコードを読み取ることで、スマートフォンにて『かぐや姫』などの多言語コンテンツを楽しむことができる
その多言語展開にAI音声を活用した理由について、VOICENCE側は「作品の世界観を損なうことなく、実際のナレーターや演者の声で再現する」ことが、IPを大切にしながらより多くの人へ届けるうえで重要だと説明する。市原悦子さん、常田富士男さんによる独特の声色や間、演じ分けまで含めた“語り”を残しつつ、別の言語でも作品を楽しめる形にする。その手段としてAI音声が使われている。
限定展示やグッズ、限定メニューを展開
企画展では、『まんが日本昔ばなし』の50周年に合わせ、展示やグッズ販売を実施。会場入口には、おなじみのオープニングに登場する「龍と子」のフォトスポットを設けたほか、舞台『まんが日本昔ばなし』で実際に使用された約6mの「龍と子」の立体作品も初展示となる。

赤べこ ぶんぶく茶釜
物販には、アニメのシーンを再現したぬいぐるみをはじめ、マスコットチャームやシリコン付きチャーム、トートバッグ、木製しおりなどのグッズがズラリ。数量限定の商品も用意されている。

また、隣接する麻布台ヒルズギャラリーカフェでは、作品を題材にした限定メニューを展開。「惣菜 麻布台 しゅん」監修の「欲張りじいさんのおむすびおにぎりセット(※1日30食限定)」などを味わうことができ、見て、買って、食べて、聴いて楽しめる企画展となっている。開催は2026年10月25日(日)までを予定。
企画展公式HP:https://www.azabudai-hills.com/whats_on/2026/09/0424.html
取材・文:土田洋祐