ライフワークとしてブックレビューを長年執筆する経済ジャーナリストが、話題の本を紹介。

47の資格を取得したお笑い芸人が書いた資格の本

『「地味な資格」だけで人生は豊かになる』は、吉本興業所属のお笑い芸人で、「女と男」の市川義一氏が書いた資格の本である。自ら「資格マスター」と名乗るだけに、市川氏の保有する資格や肩書は多い。家電製品総合アドバイザー、ラグビーC級レフリー、FP技能検定3級などなど。他にも食品衛生責任者、ランニングアドバイザー、国内旅程管理主任者、日曜大工士など計47の資格を取得しているという。

これだけの資格を取得すること自体すごいが、世の中には実に多くの資格があるということが本書を読むとわかる。

誰でも取れるユニークな資格「カッパ捕獲許可証」

著者は誰でも取れる超簡単な資格の一例として「カッパ捕獲許可証」を紹介する。岩手県遠野市の観光協会が発行しているもので、ネットで誰でも申請ができて試験は不要。交付のための220円と郵送代だけで資格が取れるという。

カッパ捕獲という突飛な内容だが、このユニークな資格は遠野市に伝わる河童の民話に由来しているという。この資格を持っていれば、カッパを捕獲した際に1,000万円の賞金がもらえるというから面白い。実際にカッパが捕獲できるかどうかはともかく、話題作りにはもってこいの資格である。

家にいながら取れる資格も

このほか、講習でしっかり話を聞いたらとれる「食品衛生責任者」という資格や、家にいながら24時間いつでも取れる「タイピング技能検定」といった資格も紹介する。

タイピング技能検定は8級から1級、さらに上の特級まで入れて全部で9つの階級がある資格で、ゲーム感覚で取得できる点が面白い。受験には階級ごとに1,650円から5,500円の受験費用がかかるが、それぞれの階級の模擬試験は無料で何度も受けられ、合格ラインに達するまで模擬試験で練習を行った上で試験に臨むことができる。オンライン環境とパソコンさえあれば、誰でもいつでも受験できるのもうれしい。

FP技能検定、添乗員など実用的な資格も

実用的な資格として著者が持つのは、「FP技能検定3級」である。お金全般の知識を広く学べる資格で、著者が初めて取った資格であり、その後の資格人生を切り開いたスタートであるという。一言で言えば、お金のアドバイスをしてあげられる専門家であり、人から信用してもらえる資格だという。

さらに副業として使えるのが、添乗員の資格「国内旅程管理主任者」である。筆記試験のほか研修や実務経験が必要だが、最終的に資格を取得し、添乗員の派遣会社に登録していれば、その都度単発のバイトのような感じで仕事のオファーがあり、自分が行けるときにだけ手を挙げて仕事を引き受けることができるという。

資格取得で人生が大きく変わった

著者は資格を取得したことで人生が大きく変わったと本書で記す。お笑い芸人としては地味なほうであると自認しつつ、多彩な資格を武器に自身のオリジナリティを発揮することができたという。実際のところ資格を持つ47の分野で話ができるということは大きな強みであり、著者の言葉には説得力がある。

詳しくは本書を参照してほしいが、著者が最後に記す資格取得にあたっての「3つの格言」も参考になる。取得するための勉強や準備が大変な資格もあるが、チャレンジする価値は大きい。資格取得で新たな一歩を踏み出したいと思う人が読んで損のない一冊である。

『「地味な資格」だけで人生は豊かになる』　女と男　市川義一著　Gakken　1,650円（税込）