「廃棄物」が街を動かす。三菱化工機と川崎市が描く新たな循環モデル

三菱化工機株式会社と川崎市(神奈川県)は、資源・エネルギー循環およびサーキュラーエコノミーの推進を目指し、「川崎市における循環型社会の実現に関する連携協定」を6月15日に締結した。
その第1弾として、地域共創による循環モデルの実証実験「夢見ヶ崎プロジェクト」を発足。夢見ヶ崎動物公園の周辺地域において、食品残渣などをコンポストで堆肥化し、ホップやレモングラスなどの農作物を栽培。これらを活用した地域連携のオリジナル商品を開発・販売し、収益の一部を同動物公園の運営へ還元する循環型の仕組み構築を、行政・企業・市民が一体となって目指すものだ。7月27日には開始に際して、川崎市長やプロジェクト担当者が登壇する記者発表会が行われた。
夢見ヶ崎プロジェクト発足。循環型社会の実現に向けて第一歩を踏み出す
川崎市ではこれまで、民間企業と連携したさまざまな実証プロジェクトを進めてきた。2026年5月には、実証にとどまらず、具体化・実装までつなげることを目的に、官民が対等な立場でプロジェクトを共創するプラットフォーム「Kawasaki Future Co-Lab(カワサキ・フューチャー・コラボ)」を設立している。
今回の「夢見ヶ崎プロジェクト」も、こうした官民共創の延長線上にある取り組みだ。
発足の背景には、川崎市が進めてきたごみの削減と資源循環がある。同市では、1人1日当たりのごみ排出量が政令指定都市で2年連続最少となるなど、ごみの減量を進めてきた。今回のプロジェクトでは、さらに一歩踏み込み、廃棄物を単に処分・再利用するだけではなく、地域の商品へと転換し、新たな経済的価値を生み出す循環モデルの構築を目指している。

その実証の舞台となるのが、1974年の開園以来、入場無料の公園として地域住民に親しまれてきた夢見ヶ崎動物公園だ。園内で発生する食物残さなどをコンポストで堆肥化したのち、夢見ヶ崎動物公園を中心に活動する団体「ゆめみあい交流会」を経て、周辺地域にてホップやレモングラスなどの農作物を栽培する。
さらに、収穫された農作物は、川崎市のソウルフード「元祖ニュータンタンメン本舗」をはじめとした地域の企業と連携し、ビールや和菓子などの商品へと展開され、販売によって得られた収益の一部を動物公園の運営に還元するという。
これにより「廃棄物→堆肥→農作物→商品→収益→動物公園」という地域内での循環をつくることがプロジェクトの主旨だ。

川崎市長 福田紀彦さんは、「三菱化工機とともに、世界トップレベルの技術とビジネスモデルで循環型社会を実現するという高い志を共有したい。市民に愛される夢見ヶ崎動物公園を舞台に、具体的なアクションを起こせることを大変嬉しく思う」と語り、プロジェクトの期待を示した。

三菱化工機株式会社 代表取締役社長執行役員 田中利一さんは、「川崎市が目指す循環型社会と、同社が掲げる持続可能な循環型社会推進事業の方向性が一致したことが、今回の連携につながった」と説明する。
「私たちは川崎に根を下ろし、今年で創業91年を迎えました。産業機械の製造から始まり、工場設備の設計・エンジニアリング事業へと事業領域を拡大してきたほか、排水処理や大気汚染防止といった環境分野の技術開発にも取り組んできました。
現在は、2035年のカーボンニュートラル社会実現に向け、社会課題の解決に資する技術を開発し、事業として展開していく経営ビジョンを掲げ、CO₂排出量の削減、自然災害への対応、資源循環などさまざまな社会課題を解決する『持続可能な循環型社会推進事業』を大きな柱の一つとしています。本プロジェクトを通じて、新しい技術や仕組みに積極的に挑戦し、循環型社会の実現を目指したい」と田中氏は意気込みを語った。
「KAWASAKI SOUL」を胸に、シビックプライドを醸成する
夢見ヶ崎プロジェクトが目指すのは、廃棄物を再利用するだけの資源循環ではない。従来はごみを回収してリユース・リサイクルするといった「物理的な循環」が中心であったが、そこからさらに一歩進み、廃棄物から生まれた農作物を地域の商品へと変え、販売によって生まれた収益を再び地域へ還元する。つまり、資源だけではなく「経済的な価値」まで地域の中で循環させようとしている点が特徴だ。
そのために欠かせないのが、地域の企業や市民との連携だ。商品化には、川崎にゆかりを持つ飲食店や菓子店、クラフトビールメーカーなどが参加。農作物の栽培では地域団体が協力するほか、子どもたちを対象にしたレモングラスの収穫体験やお菓子づくりなども計画されている。行政と一企業だけで完結させるのではなく、地域のさまざまな主体が循環の担い手となる仕組みをつくろうとしている。
こうした地域との接点を広げるうえで、プロジェクトが掲げているのが「KAWASAKI SOUL」という合言葉だ。
カーボンニュートラルや資源循環といった社会課題は、その重要性が広く認識される一方、日々の暮らしの中では自分事として捉えにくい側面もある。そこで本プロジェクトでは、地域で生まれた廃棄物が堆肥となり、農作物を育て、川崎にゆかりのある企業の手によって商品へと姿を変えていく一連の過程に、市民が参加できる仕組みを取り入れている。
地域の子どもたちが農作物を育て、地元企業が商品化を担い、その商品を市民が手に取る。そして、そこで生まれた収益の一部が、長年地域に親しまれてきた夢見ヶ崎動物公園へと戻っていく。資源や経済的価値だけではなく、人と地域との関わりそのものを循環させていくことも、このプロジェクトが目指すところだ。

こうした体験や商品を通じて、「自分たちの地域で生まれたものが、地域の中で新たな価値に変わっている」と実感できる機会を増やす。それによって川崎への関心や愛着を育み、地域に対する誇り、すなわちシビックプライドの醸成にもつなげていく考えだ。資料でも、今回の連携協定では資源・エネルギー循環やサーキュラーエコノミー型産業の振興とともに、「都市イメージの向上とシビックプライドの醸成」が目的として掲げられている。
廃棄物を資源へ変えるだけではなく、そこから新たな商品や経済的価値を生み出し、地域へと還元していく「夢見ヶ崎プロジェクト」。行政や企業だけでなく、市民や子どもたちも循環の担い手となることで、地域への愛着や誇りを育んでいくことも目指している。
今後は、育てた農作物を活用した商品の開発・販売などを通じて、この循環の仕組みが実際の地域の中で形になっていく。夢見ヶ崎動物公園を起点とした取り組みが、川崎の街にどのような新たな価値を生み出していくのか注目したい。
文・写真:古田島大介
編集:bizSPA!編集部