近年、高級志向が高まりつつある「バスタオル」。帝国データバンクの調査によれば、タオル専業メーカーの売上規模は2019年時点で677億円に到達し、過去10年のうち過去最高となった。安価な輸入品で済ませていた人が、コロナ禍の在宅時間増で、量よりも質にこだわり始めたのだろう。

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　高級なバスタオルだからこそ、お風呂上がりのふわふわ感を持続させたいものだが、通常のタオルに比べ1.6倍の吸水性を誇るのが、2007年以来、累計販売枚数1400万を達成した「エアーかおる」。一時は廃業寸前にまで追い込まれるものの、同商品で起死回生を果たした繊維メーカー「浅野撚糸株式会社」常務執行役員の河合達也氏に誕生秘話やふわふわを保つためのコツなどについて取材した。

海外拠点増で「紡績の産地」が危機に

吸水力に優れ独特のふわふわ感を持つ高機能タオル「エアーかおる」

――1967年に創業してから順調に事業が進んでいたということですが、海外の繊維商品が日本に持ち込まれることで状況が一変されたようですね。

河合達也（以下、河合）：この地域（岐阜県）は昔から紡績が盛んなところでした。当社も大手から注文を受け、順調に成長を遂げてきましたが、1980年代に入ると、あらゆる取引先が生産拠点を海外へ移し始めたのです。

　2000年代に入る頃から安い海外の繊維商品が席巻し、仕事が一気に激減しました。会社はどん底で、廃業寸前の状態だったんです。

オンリーワン技術でV字回復

エアーかおるに使われている撚糸「スーパーゼロ」

――それは従業員や他の協力してくれた人たちも不安になりますね。

河合：廃業となれば協力工場さんも共倒れになってしまう状態でした。しかしうちには、景気のいいときに支えてもらった責任がありました。そこで社長は、会社を再生する道を探りました。行き着いたのが「ナンバーワンでは勝てない。誰にも真似できないオンリーワンを目指す」ということだったのです。

――エアーかおるに使われている「スーパーゼロ」という糸は3年の歳月をかけて開発させたそうですね。このスーパーゼロの秘密を教えていただけますか？

河合：糸に空気のスキマがあり、水分をたっぷり吸収できる魔法の糸を使用しています。その仕組みを簡単に説明すると、まず綿糸と水溶性糸をひねり、撚りをかけます。それを熱湯に漬けると、水溶性糸だけが溶けて、解放された綿糸は縦ロールに大きく膨らみます。まるでパーマがかかったような状態です。すると繊維の間に微細な空間が生まれ、そこへ空気が入り込むことで、ふんわり感が長持ちし、毛羽落ちの少ない糸ができるのです。