京都撮影所の職人との仲を深めていった

――京都撮影所のみなさんとも、そうやって仲を深めていったのでしょうか。

石井：そうだと思います。例えば注意されたとして、「うるさいな」だけで終わってしまうと先に進みませんが、こちらが誠実に相手と向き合うと、ちゃんと返してくれますから。もちろん僕も最初からそれができていたわけではなく、時間はかかりましたが、そのおかげでいまは仲良くなれました。

　いっぱい一杯のときは視野が狭くなりがちですけど、そういうときこそみんながどう思っているかを考えることが大事なんだと教えてくださったのは内藤さん。どうすれば物事を円滑に進められるのかをこの現場で知りました。

――内藤さんからかなり影響を受けているんですね。

石井：そうなんです。僕は、内藤さんのことを尊敬しすぎちゃっているかもしれないです（笑）。父親の次に尊敬しています。

　そのほかにも、内藤さんのすごいところは、大ベテランにもかかわらず、自分の考えに凝り固まっていないところ。内藤さんは演技のプランを何通りも考えていらっしゃるので、事前に僕がしたいことを確認したうえで、「石井くんがそうするなら、俺はこうしてみるよ」と言ってくださることも。自分のことだけでなく、後輩の意見も聞いてくれる、そういう姿勢は本当に素晴らしいと思います。

沢口靖子さんは「魅力がありすぎる」

――確かに、あれだけのキャリアがありながら、それができるのはすごいですね。

石井：僕はいま舞台の稽古中ですが、そこでは自分が最年長なので、若手に向けて同じことを実践するようにしています。内藤さんと出会わなければ、そういう“心の余裕”を持つことはできなかったかもしれません。

――では、主演・沢口靖子さんはどんな方ですか？

石井：内藤さん同様に、沢口さんも魅力がありすぎる方。休憩中はお茶目なんですけど、撮影が始まった瞬間に周りが見えなくなるくらいの集中力を持っているので、まさに「マリコ」だと思います。

　あとは、これだけ長い間同じ役をずっと演じていらっしゃるのに、毎回新鮮に取り組まれているのはさすがだなと。シーズン毎に髪型を変えたりしながら気持ちを切り替えているそうですが、ここまで続けられることは本当にすごいことだと感じています。