あなたはなぜFXで勝てないのか? 絶望から這い上がった男、片山博義がたどり着いた「負けない」思考法

少額でのスタートやスマホでも取引できるその手軽さから、資産形成の選択肢として投資初心者にも身近な存在となっている「FX」。そんなFXの世界では「どのように勝つか(=儲かるか)」が重要視されがちだが、それとは逆で「負けない」ことを重視するのが、FXトレーダー 片山博義さんだ。
かつてプロサッカー選手を目指しドイツへ渡り、現在ではサッカー監督を務める片山さん。その一方で、FXスクール「スマートサロン」を主宰し、これまでに700人以上を指導してきた一面もある。一見、接点のないサッカーとFXだが、負けないという考え方には通ずる部分があるという。
今回、FX運用のノウハウと考え方を書き留めた著書『人生を変える! 負けないFX投資術――5万円から始める前に知っておきたい相場の見方』の出版記念パーティにて、その考え方の源流と現在までの軌跡を尋ねた。
「勝つ」よりも「負けない」
──よろしくお願いいたします。今回の書籍を通じて、読者に最も伝えたいことは何でしょうか?
ありがとうございます。一番伝えたいのは、「FX」は決して怪しいものでも、怖いものでもないということ。よくギャンブルや博打のようなイメージを持たれることもありますが、決してそんなことはなく、きちんとした理論や考え方があり、それに基づいて取り組むものです。今回の書籍には、そうした考え方や具体的な取り組み方を書き留めています。
──FX関連の書籍では「勝てる」「増やせる」といった言葉が目立ちます。そのなかで、「負けない」という考え方を掲げる理由はどこにありますか?
人によって背景はさまざまですが、FXを始める理由として共通しているのは資産を増やしたいからです。そうなると、とにかく「勝つこと」に目が向いてしまいますが、それは危険な信号です。FXは100万円勝ったとしても次の取引で0円になってしまうこともあり得る勝負の世界です。手元の資金がなくなれば次の勝負にも挑めません。
だから私は、「どうやって大きく勝つか」よりも、「どうやって資金を失くさないか」を考えることが重要だと思っています。元来、FXは一晩で100万円が手にはいるようなことはほぼなく、コツコツと積み上げていくものです。資金を守ることを前提としたうえで、ここぞという瞬間だけ勝負に出る。これが「負けない」ということです。
──「負けないFX」を実践するうえで、重要になる考え方や実践法について教えてください。

大事なのは、自分のルールを作りそれを徹底して守ることです。すでに経験がある場合は、取引結果だけでなく、そこに至るまでの精神状態や環境なども、できるだけ細かく記録してください。そのときに大切なのが、勝ったときよりも、負けたときの記録を明確にすることです。それを積み重ねることで、自分が負けやすい条件やパターンが見えてきます。
そこで見えてきたものをもとに「この条件に当てはまるときは取引をしない」とルールとして設定し、必ずそれを守りましょう。FXにおいては「買う」「売る」だけでなく「やらない」という選択が肝になります。やらないことは決して逃げではありません。むしろ、自分が負けやすい状況を理解したうえで、あえて手を出さないことは「負けない」ために必要な考え方です。
これはサッカーでも同じです。サッカーは得点するゲームですが、だからといって常に前へボールを入れればいいわけではありません。時間帯や得点差、局面によっては、あえて前へ出ず、ボールを失わないことを優先する。FXも同じで、勝負する必要のない場面では資金を守り、勝負できる場面を待つことが大切です。

出版記念パーティーで参加者と交流する片山さん
とはいえ、頭で理解はしていても自制することは難しいものです。そのときは「自分はいくらまでなら負けてもいいのか」を決めておきましょう。損切りをすると「この負け分を取り返したい」と心理が働き、冷静な判断ができなくなってしまいます。そうなるといつの間にか決めていたルールを無視して、ズルズルと勝負を続けて泥沼にハマっていく。そして大きく負けた結果だけが残るという、最悪な状況に陥ります。あらかじめ許容できる損失ラインを決めていれば、負けたからといって無理に取り返そうとする必要がないので結果的に資金を守ることができます。
絶望の経験が生んだ「負けない」思考
──「負けない」という考え方は、FXを始められた当初から持っていたのでしょうか?
いえ、全くです。始めて3年間は基本的なことを理解しないまま感覚任せでやっていました。当然そんな運用で結果を残すことはできず……。利益が出てると思って、遊んで帰ってきたら300万円がなくなってることもありました。
それで、親を泣かせるほどの資金を使いきり、絶望するところまでいったときに、初めて死に物狂いでFXや相場について勉強をはじめたのがきっかけです。思い出すだけでも恥ずかしいですね。
──その大きな失敗でFX自体を辞めるという選択肢はなかったのでしょうか?
自分に向いているかいないかが分からない状態で辞めるのは嫌だったんです。しっかり勉強を重ねて、これでダメならやめるっていうところまでいかないと納得ができない性格というか。芸事に従事していた両親のもと、「極める」ということについてはよく教育されていたので、それが大きいのかもしれません。
──そういった苦労がないとFXで結果を残すのは難しい?

出版記念パーティーでは、片山さん自ら著書に込めた思いを語った
簡単な仕事なんてものはもちろんありませんが、FXで結果を出すためにはかなり努力が必要だと思います。言ってしまえばお金の奪い合いの世界なので、相手も命を懸けてやっています。なんとなくで渡り合えるほど甘いものではありません。
よく、スマサロに興味を持ってくださる方から『スマサロに入ったらすぐに勝てますか?』と聞かれることもありますが、『しっかり勉強をしてアウトプットを重ねないと、勝ち続けることはできない』とハッキリお伝えしています。
──誰もが大きな損失や感情が不安定になる時期は経験するのでしょうか?
そうですね。ほぼすべての人が通るものだと思っています。ただ、それは決して悪いことばかりではありません。成長にはいくつかのフェーズがあると思っていて、最初にうまくいって「自分はできる」と思う時期がある。そのあとに大きく失敗して、「自分には向いていない」と感じる時期が来ます。そこで初めて、自分自身と向き合えるようになるんです。
そこで辞める人もいれば、「何かがおかしい」と本質を勉強し始めて実力をつけていく人もいます。大切なのは失敗しないことではなく、そこで何を学び、同じ失敗を繰り返さないこと。これはFXに限ったことではないです。サッカーでいえば、うまくいかない時期に自分のプレーと向き合って、なぜダメだったのかを考え、修正していくことで次の段階に進める。スマサロの受講生のみなさんには、そういうことも含めて伝えています。
FXは人生を豊かにする選択肢
──書籍では、「FXは人生を豊かにする選択肢である」という内容が含まれています。これは資産形成ができるからという意味でしょうか?

出版記念パーティーでのトークセッションの様子
もちろん、資産形成という意味もありますが、それだけではありません。FXでは、自分で考えて判断し、その結果を自分で受け止める必要があります。なぜ増えたのか、なぜ減ったのかを理解しながら、自分の手と知識で資産を少しずつ増やしていく。この過程そのものに意味があると思っています。
自分で決めたルールを守る、感情のコントロール、分析をして勝算を見出して勝負をかけること。FXで培われるこれらは仕事や日常生活にも通じるものです。自分自身の考え方や行動を見直すツールとしても価値があると考えています。
──そうした意味では、お金の向き合い方も変わっていくのでしょうか?
そう思います。例えばNISAやオルカンに投資している人でも、自分のお金が具体的にどこへ投資されているのか、なぜ増えたり減ったりするのかまで理解している人は、そこまで多くないと思うんです。もちろん、それ自体が悪いという話ではありません。ただ、自分の資産なのだから、もう少しその中身に関心を持ってもいいんじゃないかと思っています。
普段の買い物も同じです。例えば1万円の靴を買うとき、その商品の原価はいくらなのか、その1万円は自分が何時間働いて得たお金なのか、それに見合った価値はあるのか。そこまで考えてみると、お金の見え方は変わってきます。単に「欲しいから買う」「みんながやっているから」ではなく、自分にとってそのお金にどんな価値があるのかを考えることが大事です。FXは自分の資産を身近に意識するものですから、お金に対しての向き合い方は変わるはずです。
──最後に、これからFXをはじめようとしている人に向けてメッセージをお願いします。
現在あらゆるものが値上がりをしていますが、それに不満を言っても自分の資産が増えることはありません。大事なのは、自分にできることを考えて行動することだと思っています。日本ではお金を稼いだり、儲けたりすることに対してネガティブなイメージを持つ人もいらっしゃいますが、本来そこに後ろめたさを感じる必要なんてないはずです。むしろ、これから先の生活を考えれば、お金の重要性はさらに増していくと思います。
その選択肢の一つがFXです。最初に話した通り、FXは怪しいものでも怖いものでもありません。ただのツールや事象であって、どんな結果を迎えるかは自分次第です。
だからこそ、まずは正しく知ることから始めてほしいですね。そのうえで、自分に合うのか、どう向き合っていくのかを自分で判断していけばいい。FXをきっかけに、お金や自分自身について考える機会が増えれば、それも人生を豊かにすることにつながると思っています。

片山博義
プロサッカー指導者。1972年東京生まれ。
17歳でドイツに渡りプレー経験を積み、24歳で怪我により現役引退後、指導者の道へ進む。
鹿屋体育大学、FC鹿児島(現・鹿児島ユナイテッドFC)、松江シティFC、FC大阪、東京23FC、吉備国際大学などで指導し、松江シティFCでは監督として中国リーグ優勝に貢献。天皇杯ではJクラブを破り、J1川崎フロンターレと対戦するなど、地方クラブを躍進させた実績を持つ。
指導においては、経験則に頼らない“再現性ある育成”を重視し、判断力と適応力を備えた選手を育成。現在は主にアスリートやビジネスパーソンに向けた資産運用・キャリア設計コミュニティを主宰し、「競技や仕事と並行して次の人生を設計する」重要性を発信している。合同会社hunt&hunt 代表社員。著書『人生を変える! 負けないFX投資術――5万円から始める前に知っておきたい相場の見方』
取材・文・写真:土田洋祐