オンライン会議疲れの原因は音にある? Jabra「Evolve3」が提唱する音質による生産性

リモートワークの普及やAIツールの台頭など、たった数年で私たちの仕事環境は大きく変化している。なかでもオンライン会議は、かつては対面で行うことが重要とされていた会議の常識を変え、いまでは日常の通常業務の一つとして定着した。ただ果たして、そのオンライン会議は十分に満足のいくものになっているだろうか。
デンマーク発のオーディオブランド「Jabra」を展開する『GN オーディオジャパン株式会社』は9月9日、ビジネス向けヘッドセット「Jabra Evolve3」シリーズの新製品発表会を開催。“音質による生産性”をテーマに、日本のビジネスシーンが抱える課題や、ブランドが目指すソリューションなどが語られた。
音声品質を大幅に強化した「Evolve3」に、働き方に合わせて選べる3モデルが登場
「Evolve3」シリーズは、2020年に登場した「Evolve2」以来、約6年ぶりとなる新世代モデルだ。
今年3月には第1弾「WAVE 1」としてフラッグシップモデルの「Evolve3 75」「Evolve3 85」が発売されており、今回は「WAVE 2」として同シリーズに「Evolve3 65 Flex」「Evolve3 65」「Evolve3 45」の3モデルが加わったかたちとなる。

Jabra Evole3 65 Flex

Jabra Evole3 65

Jabra Evole3 45
新規で追加された3モデルは、多様なワークスタイルに合わせて設計されているのが特長だ。従来の形状を残しつつ性能を向上させたオフィス勤務向けモデルのほかに、オフィス勤務と在宅・外出先などのリモートワークを組み合わせて働くハイブリットワーカーへ向けた、折りたたみ式・ブームアーム非搭載モデルを展開。働き方や利用環境に応じて、幅広い選択肢を設けている。
また、同シリーズでオンライン会議での音声品質も大きく強化された、複数のマイクとニューラルネットワークを活用した音声処理によって、周囲の雑音を抑えながら話者本人の声を識別して相手に届ける「Jabra ClearVoice」を搭載。ブームアームを持たない「Evolve3 65 Flex」でも、事前に人間の発話音を学習させたディープニューラルネットワーク(DNN)を組み合わせることで、口元からマイクが離れていても高い集音性能を実現。
さらに、今回追加された3モデルはいずれもアクティブノイズキャンセリング(ANC)を搭載。Bluetooth Low EnergyやLC3オーディオにも対応するなど、通話時だけでなく、普段の音楽視聴や移動時まで含めた使い勝手も高められている。
発表会では、雑踏のなかでPC内蔵マイク、一般的なイヤホン、Evolve3 65 Flexを切り替えながら、相手にどのように聞こえるかを比較する実証も行われた。同じ環境でも、Evolve3 65 Flexでは周囲の車や人の声が大きく抑えられ、話者の声が際立つ。聞こえ方には明確な差があり、まるで防音された空間で会話しているかのような感覚を受けた。
製品を試した33社へのアンケートでも、「聞こえ方が自然」「今まで骨伝導イヤホンを使っていたが、聞き返されることがなくなった」「長時間装着していても重さが気にならない」といった声とともに、Evolve3 65 Flexでは「満足」「非常に満足」を合わせて97%、94%が継続して使いたいと回答が寄せられたという。
会議の質は「音質」で変わる
今回のEvolve3シリーズは、多様な働き方に合わせた製品展開だけでなく、オンライン会議においての音質に対するソリューションを軸としている。
GN オーディオジャパン株式会社が、20〜50代のビジネスパーソン400人を対象に実施した調査によれば、週1回以上、自席からオンライン会議に参加する人のうち、現在の環境に「満足している」と答えた人は38%。一方、周囲の話し声や雑音、相手側の音声などに不満を感じる人は33%、聞き返しや音声トラブルなどにストレスを感じる人は43%に達した。
この結果に対し、同社 代表取締役社長 安藤靖さんは、日本ならではの事情が影響していると説明する。

GN オーディオジャパン株式会社 代表取締役社長 安藤靖さん
「オンライン会議がもともと導入されていた諸外国とは違い、コロナ禍によって急速に普及した日本では、デバイスを含めたオンライン環境整備の考え方が十分に根付いていません。多くの現場では、PCに備え付けられたマイクや付属のイヤホンなどで済ませており、上位デバイスは『こだわる人がわざわざ用意するもの』という感覚が今も残っている」
また、オンライン会議で音声トラブルが生じた場合、対策が通信環境の改善に偏り、その先の音声デバイスを含めた環境整備にまで踏み込めていないケースが多いとも指摘。どれだけ通信環境を整えても、音声を入力・出力するデバイスの性能が十分でなければ、音質が改善しないのは至極当然のことだ。
同社がロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)に依頼し、音声デバイスが会議に与える影響を検証した調査では、使用するデバイスによって会議へのエンゲージメントなどに明確な差が見られたという。なかでもJabra製品を使用した場合は、ほかの条件と比べて高い結果を示した。
「音質のよいデバイスを使用することで、会話の聞き取りづらさや聞き返しを減らし、より円滑なコミュニケーションや生産効率の向上につなげることができる」とし、さらに「オンライン会議で音の環境を整えることは、対面の会議で相手に配慮して場を整えるのと同じ重要な姿勢なのではないでしょうか」と問いを投げかけた。
音質が変える仕事とAI活用
発表会では、実際に業務でJabra製品を導入する『野村證券株式会社』の事例についても紹介された。
同社で現場のデバイス環境整備などを担う、ITインフラストラクチャー部 オフィス基盤課長 佐藤優吾さんは、金融機関ならではの業務特性から、オンライン上の音声品質を重要視していると話す。

野村證券株式会社 ITインフラストラクチャー部 オフィス基盤課長 佐藤優吾さん
「お客様とお金に関わる重要な話をオンライン上で交わす際、音声が聞き取りづらかったり、周囲の人の声が入り込んだりすれば、サービスの質やブランドの評価にも影響します。以前から、音声品質を重視してJabra製品を社内の標準品として備えてきました。今回導入するEvolve3 65は、発売前の製品を社内で実際に試し、その性能を確認したうえで、信頼できるデバイスだと判断しました」
佐藤さんは、こうしたデバイスへの投資を、ヘッドセット単体の価格だけで考えるべきではないとも話す。200万円ほどかけてフォンブースを1台設置するのか、それとも従業員一人ひとりに適切なデバイスを用意するのか。限られたオフィス空間のなかでオンライン会議の環境を整える手段として考えれば、後者はコスト面でも現実的な選択肢になる。
そして、これまでの音質の重要性は、人同士のオンライン会議だけにとどまらない。Jabraがさらに先に見据えているのが、生成AIとの音声コミュニケーションだ。
現在のAI利用といえば、キーボードでプロンプトを入力することが一般的だが、今後はよりスムーズな利用方法として音声入力が広がっていくと見込まれている。そうなれば、人の声を正確に拾い、AIへ届ける性能がこれまで以上に重要になり、それを実現するデバイスへの需要も高まる。
Jabraでは、こうした将来を見据えて、周囲の雑音から本人の声を識別する技術を磨いてきた。Evolve3ではその精度をさらに高め、AI時代の音声コミュニケーションを見据えたハロープロダクトの一つであることも会のなかで触れられていた。

Jabraは、これまで見過ごされがちだった音質を、単なる「聞こえ方」の問題としてではなく、コミュニケーションの質や働きやすさ、企業のコスト、さらにはAI活用にも関わる業務環境の一つとして捉えている。
オンライン会議が日常業務となったいま、使っているデバイスが「会話できる」だけで十分なのか。自身の仕事の質を高める環境になっているか、一度見直してみてもいいのかもしれない。
取材・文・写真:土田洋祐