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【後編】英語力ゼロの私がイギリス本社で働くことになった時の英語勉強法

学び

日本で一番売れているヘアケアブランドLUXのブランドマネージャー、Doveのブランド責任者などを経て独立した、株式会社Brandism 代表取締役社長 木村元(キムラ・ツカサ)によるコラム。「一流のマーケターになる方法」というテーマについて、経験談をベースに語ります。

※画像はイメージです(以下同)

内容を踏まえたうえで大事な勉強法

英語勉強法というタイトルでしたが、前編では、勉強以前に大事なポイントを説明いたしました。こちらの後編では、肝心な勉強方法について触れていきます。

イギリスに行く前にしたことは、「海外オフィスや英語ネイティブ話者のメール表現を徹底的にパクる」ということでした。

日本語において、メールでの文章と実際の会議の口語では使う表現が若干違います。英語でもメールと口語では多少違う点はありますが、ビジネスにおいてはメール表現を吸収することは有益でした。

私は典型的な日本人の英語学習者であったため、最初は耳で聞いたものをマネするというのはハードルが高かったのです。一方、メールであれば、内容を完璧に理解できますし、今何と言ったのかと聞き返す必要もないので効率よく学習できました。

英語には敬語はないと言われますが、それでもフォーマルな場や、重要な提案においては、一定程度の型が存在します。相手の立場を配慮しながら、自分の意見を通す過程において、正しい英語を使うことは重要です。

そうした活きた英語がメールで日常的に飛び交っていたので、学習するうえでは大変参考になりました。英語メールで重要な表現を見つけるとすぐにコピーして、自分の英語表現集に追加していったのです。

私の高くない英語力からアドバイスをすると、英語で文章を書く、英語で文章を読むという行為は多くの日本人にとって、とっつきやすく伸びしろがある領域です。まずはメールコミュニケーション、チャットコミュニケーションで、ある程度やれるぞという自信を身に付けていきましょう。

繰り返し使う表現と言い換え表現を用意

内容が大事という話はしましたが、スラスラと話せることに越したことはありません。スラスラと話すためには、いい慣れた表現をどれだけ用意できるかという点が重要です。

毎回会議で繰り返し使う、決め台詞のようなものをいくつかもっておき、そこの部分だけでもいいので英語ネイティブ話者と同じスピードで話すことでコミュニケーションが一定程度とれる自信が身につきます。

例えば私の場合、「Would you clarify~」という表現を多用しておりました。

聞き取れなかったときも含めて、話している内容や単語の意味を明確にしてもらいたいという意味の構文は役に立ちます。

日本語でもそうですが、一度で理解できない、聞き取れないことは当然あります。その際に恐れずに聞き返すことが外資系企業で生き残るために重要なことです。

一方で、同じ表現を繰り返し使うだけでは、やや物足りなさがあります。一定程度英語のレベルがあがってからで構いませんので、同じような内容を言う時も多少のニュアンスを変える表現や、同じニュアンスでも別の言い方ができるようになると、より話を聞いてもらいやすくなります。

日本語でも同じかもしれませんが、同じ表現だけだと、似たような話を繰り返しされているような感覚になってしまい、話を集中して聞いてもらえなくなるというデメリットがあるからです。

先程のclarifyの例においては、「My understanding is that~」からはじめて私の解釈こうだけどあっていますか?という表現に置き換えていました。

言い換え表現についてはレベルが高いですが、英語ネイティブ話者が話した表現を真似するようにするといいと思います。

英語はツールであるということを絶対に忘れない

すでに何度も耳にしたことがあるかもしれませんが、英語はあくまでツールです。目的を達成するために、英語が障害になることはありますし、実際私も苦労しました。しかし、単純な英語力だけで戦えるほどビジネスの世界は甘くありません。

英語が得意な人が数多くいる外資系企業の世界で、私がなんとか出世し続けることができたのは、英語はツールと割り切ることができた点が大きいです。

ツールというものは使いこなせるほど便利ですが、ツール単体で勝負がつくということは実際にはありません。英語というツールも同様です。

ツールだけど英語はやっぱり大事

一方で、今伝えたことと真逆のことを伝えますが、英語ができるようになることで広がる世界があります。英語ネイティブでない形で成人して、かつ外資系企業で働きたい場合は英語の鍛錬から逃れることはできません。

一部の外資系企業では日本オフィスが日本人だけで構成されており、英語を使う必要はないかもしれません。しかし、出世を目指し高みに行く場合は本国勤務や本社の偉い方と話していく必要があります。

また、日本人以外からフィードバックを受けることで大きな成長をすることも可能となります。

例えば、現在、シャネルのグローバル最高経営責任者(CEO)であるLeena Nair(リーナ・ナイール)は私がイギリス勤務だったときからのメンターでした。

今やグローバル企業のCEOをつとめる彼女から受けた言葉やアドバイスは、現在仕事をするうえでも役に立つ金言が多いものでした。有名人にのっかるようで恐縮ですが、少しだけ彼女とのエピソードをお話したいと思います。

リーナと初めて話したのは、私がユニリーバの日本法人に在籍していた時です。CEO含むグローバルのリーダーシップ陣が日本に訪れた時に初めて会いました。

会議中における彼女からの質問はとても印象的で、「このブランドのパーパス(社会的意義)は何?ブランドが成長すると社会にとってどういうプラスの効果があるの?」ということを一貫して聞かれていました。

当時、ユニリーバではHR(Human Resources)のヘッドなので、働き方やウェルビーイング、組織に関する会話になるかと思いきや、一貫してパーパスを通じてどうビジネスを伸ばすか、その結果どんな社会にしていくのか、ビジネスの成長を通じた社会貢献を常に考えているような人でした。

私がロンドンに渡った時は、常に共感してくれてサポートしてくれました。会話のテンポがとても早く、中でも質問が上手くて、何かを伝えるというよりは、私の話を聞いて、深掘りして、共感してくれました。

ただそれだけなので、当たり前のように聞こえるかもしれませんが、話し終わると自分に自信がついて、モチベーションが上がるような感覚がしていました。

異国の地で奮闘していた自分にとっては、貴重なメンターでした。

英語ができるようになることで成長速度も変わってきます。偉そうなことをお伝えしたかもしれませんが、私自身まだまだ英語学習中の身であり、まだまだ英語力も高くありません。

海外で働いてたから謙遜と思われるかもしれませんが、全くそういうわけではなく伸びる余地が大幅にあるレベルです。

私自身もこれからさらに鍛錬していきますので、この記事を読んでいただいたみなさまもぜひ継続的に英語学習を一緒に続けていけるとうれしいです。

<TEXT/株式会社Brandism 代表取締役社長 木村 元>

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株式会社Brandism
代表取締役

ユニリーバに2009年に入社。約12年間、ラックスやダヴなどのブランドマーケティングを経験。日本国内のプロモーションから、グローバルのブランド戦略や製品開発まで、幅広く従事。ロンドン本社勤務後にユニリーバ・ジャパンにおけるスキンクレンジングカテゴリーならびにダヴブランドを統括。ユニリーバ・グループであるラフラ・ジャパン株式会社の代表取締役を経験。2021年より株式会社Brandismを創業し、ToBからToCまで、幅広くマーケティングのサポートを行なっている。

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