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グローバル経済の時代が今年で終焉も。民主主義と権威主義の戦いで仕事や暮らしが激変する岐路の年に

「選挙イヤー」と言われる2024年(令和6年)が幕開けし、先陣を切る形で台湾で総統選挙が行われ、欧米との関係を維持・強化する姿勢の頼清徳(らいせいとく)さんが勝利した。

このニュースは、日本人にとっていいニュースに見えたかもしれない。しかし「選挙イヤー」は始まったばかりだ。本番はこれかららしい。

各国で行われる選挙は、民主主義と権威主義の戦いの様相を呈している。それらの結果次第では、これまでの世界の秩序が大きく変わってしまう可能性もあると専門家は指摘する。日本の若者の暮らしも全く無関係ではない。

そこで今回、立て続けにこれから届く選挙関連のニュースをどのように解釈し、ウォッチすればいいのか、国際政治に詳しい専門家の和田大樹さんに教えてもらった。

和田さんは、国際安全保障、国際テロリズム、経済安全保障などを専門家で、Strategic Intelligence代表取締役社長CEO、日本カウンターインテリジェンス協会理事、ノンマドファクトリー社外顧問、清和大学講師、岐阜女子大学南アジア研究センター特別研究員など数々の職務を兼任する。

世界の潮流の変化を日々把握する習慣を持つためにもぜひ、最後まで読んでもらいたい(以下、和田大樹さんの寄稿)。

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台湾は、民主主義と権威主義の戦いの最前線

2024年(令和6年)が始まった。今年は台湾、ロシア、インド、インドネシア、米国などで選挙が行われる。正に「選挙イヤー」だ。それらの選挙結果の行方次第で、民主主義と権威主義の戦いは大きな岐路を迎えるだろう。

まず、台湾では、次の指導者を選ぶ総統選挙が1月半ばに行われた。欧米との関係を重視する現総統の蔡英文(さいえいぶん)氏の後継者が勝利した。今後4年間は、台湾と中国との関係が冷え込む可能性が高い。

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中国は、軍事的、経済的威圧を台湾に対して仕掛けてきたが、今後もそれが継続されるだろう。

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現在の蔡英文(さいえいぶん)政権は、自由や民主主義を重視し、欧米との関係を維持・強化して中国に屈しない姿勢に徹している。台湾は、引き続き、民主主義と権威主義の戦いの最前線となるだろう。

権威主義陣営の勢いを抑えられない世界

台湾の結果だけを見れば、民主主義の側の勝利となったがその先は、予断を許さない。

3月には、大統領選挙がロシアで行われる。この選挙は、プーチン政権の延長を承認するイベントに過ぎない。プーチン大統領は今年、ウクライナでの攻勢をいっそう強化する可能性がある。

選挙の行われる3月で、ウクライナ侵攻から早くも3年目に入る。これまでは、欧米諸国からの軍事支援もあり、ウクライナ軍が優勢だったが、その勢いにも昨今は陰りが見え始め、ロシアに有利な軍事環境が到来している。

米国を中心とした欧米諸国では、ウクライナへの支援疲れも顕著になってきている。プーチン大統領は、そこをチャンスに軍事的優勢を勝ち取りたいところだ。

ただ、ロシアによる軍事的優勢は同時に、権威主義陣営の勢いを民主主義陣営が抑えられない事実を意味する。日本など自由民主主義陣営にとってもウクライナ情勢は決して対岸の火事ではない。

トランプ勝利は、民主主義陣営の分断を意味する

民主主義と権威主義の戦いで最大のポイントは、米大統領選挙の行方だ。なぜ最大なのか。民主主義と権威主義の戦いの中、民主主義陣営の中で大きな分断が発生する恐れがあるからだ。

この選挙で、トランプ勝利・バイデン敗北というシナリオが現実となれば、民主主義陣営内部の分断が生まれ、中国やロシアなど権威主義国家が勢いを助長する可能性がある。

筆者周辺の専門家の間でも、トランプ勝利のシナリオが想定されている。

NATO(北大西洋条約機構)からの脱退の示唆、ウクライナ支援の停止、欧州との関係悪化、米中貿易戦争のさらなる激化、日本や韓国など同盟国への軍事的負担増など、トランプ勝利によって、世界に大きな影響をもたらすさまざまな変化が予測されている。

物価高どころでは済まない恐れも

欧米や日本など先進国の影響力が相対的に低下し、中国およびロシアなど現状打破を求める国家、ならびにアジア、アフリカおよび中南米といったグローバルサウスの国々の影響力が高まる世界において、民主主義と権威主義の戦いは岐路を迎えようとしている。

これからの社会で活躍する皆さんには、企業のビジネス環境にとって最適だったグローバル経済の時代が終焉(しゅうえん)に向かい、対立国や対立陣営との貿易摩擦(関税引き上げや輸出入規制など)が起こりやすい分断の世界へ移行しつつあると理解してほしい。

民主主義と権威主義の戦いの1つであるウクライナ戦争を例に見ても、ロシアに進出していた日本企業の多くが戦争によって撤退した。マクドナルドやスターバックスなど誰もが知る米国企業も同じだ。

こういったケースは今後も、民主主義と権威主義の戦いの中で起こる可能性がある。そういった世界の潮流の変化を日々把握する習慣を身につければ、所属する企業や自分の暮らしに発生するリスクを最小化できる。

民主主義と権威主義の戦いが岐路を迎える年になると理解し、世界の潮流の変化に敏感になってほしい。

[文/和田大樹]

専門分野は、国際政治学、安全保障論、国際テロリズム論、経済安全保障など。大学研究者として安全保障的な視点からの研究・教育に従事するかたわら、実務家として、海外に進出する企業向けに地政学・経済安全保障リスクのコンサルティング業務(情報提供、助言、セミナーなど)を行っている。特に、国際テロリズム論を専門にし、アルカイダやイスラム国などのイスラム過激派、白人至上主義者などのテロ研究を行う。テロ研究ではこれまでに内閣情報調査室、防衛省、警察庁などで助言や講演などを行う。所属学会に国際安全保障学会、日本防衛学会、防衛法学会など。多くのメディアで解説、出演、執筆を行う。
詳しい研究プロフィールは以下、https://researchmap.jp/daiju0415

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