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「マップリすれば?」はハラスメント。気さくな先輩・上司こそ注意したい「マチハラ」とは

パートナーが居たり、結婚していたりする人は、そうでない人に対して、良かれと思っておせっかいな助言を与えがちではないだろうか。例えば「恋人が居ないならマッチングアプリ(マップリ)でもすれば」といったたぐいの発言だ。

もちろん、親しい人間関係に支えられたおせっかいが他人の人生を好転させる側面もあるが一方で、価値観は多様である。パートナーが居た方がいいという前提に立ち、マッチングアプリを望まない相手にまで強く勧めるとハラスメントになるらしい。

そこで今回、一般社団法人日本ハラスメント協会の代表理事である村嵜要さんにより、マッチングアプリに関するハラスメントの現状と対処法を解説してもらった(以下、村嵜要さん寄稿)。

登録ユーザーが多くなりマナー違反が増加

出会いの手段として今や、1位になったマッチングアプリ。2023年(令和5年)9月からマッチングアプリの地上波テレビCMが解禁され〈Pairs〉〈タップル〉〈with〉などのサービスがテレビCMを展開しました。

多くの人の目にも耳にも触れる機会が増え、その認知度はさらに高まりました。

サービスが普及し、登録ユーザーが多くなると、一部のユーザーやユーザー以外の周囲の人たちがマナー違反を起こしてしまいます。その結果、不快な思いをする被害者が生まれればハラスメントに該当します。

こうした事態を受け2023年(令和5年)10月、AI恋活婚活マッチングアプリ〈バチェラーデート〉を運営する株式会社バチェラーデート(東京都品川区)と日本ハラスメント協会(大阪市)は、職場で起きるマッチングアプリにかかわるハラスメントを「マッチングアプリハラスメント」(マチハラ)と制定しました。

【マッチングアプリハラスメント(マチハラ)の定義】

“職場環境などにおいて、他者の恋活(婚活)アプリの利用にかかわる情報を周囲に言いふらしたり、プロフィールを許可なく第三者に広めるなど、利用者または利用検討者に対し、苦痛や不快な思いをさせる行為”

では、具体的に、どのような「マチハラ」が発生しているのでしょうか。

2023年(令和5年)12月、筆者が代表理事を務める日本ハラスメント協会監修の下、マッチングアプリハラスメントの具体例を示したリーフレットをバチェラーデートが公開しました。

そのリーフレットから、マッチングアプリを使っているユーザーの周りに居る人たちがやってしまいがちな行為を紹介します。

マッチングアプリを過度に勧めては駄目

出会いを求める方に対して、マッチングアプリの利用を勧める分には何も問題になりません。しかし、利用を検討していない人へ強要する行為は当然要注意です。例えば、

「パートナー居ないの〇〇さんだけだよ。今すぐ登録しなよ」

といったたぐいの言葉。さらに、過度な勧誘のひどい例として、

「出会いが無いと言ってたからマッチングアプリ勝手に登録したよ!」

といった感じで、周囲の人間が、利用検討していない人をマッチングアプリに勝手に登録する行為は「マチハラ」に該当します。

パートナーを見つけたと言いにくい空気をつくるのもNG

逆に、マッチングアプリでの出会いに対して過度な冷やかしや否定をする行為もハラスメントになり得ます。

例えば、出会った相手に対して本人がどのように感じているのかもわきまえず、

「アプリで出会った人なんて絶対危険だ」

「応援できない」

などの発言を通し、苦痛や不快な思いをさせた場合は「マチハラ」に該当します。

マッチングアプリの利用を周囲にバラすと「マチハラ」

マッチングアプリの利用を周囲に言いふらす、話のネタにする、からかうなどの行為もハラスメントになる可能性が高いです。例えば、

「〇〇さんのアプリのプロフィール、盛ってない?」

「この前別れたばかりなのに、マッチングアプリ使って新しい人をもう探しているみたいだよ」

など、マッチングアプリでの恋活・婚活に関わる内容を言いふらし、精神的苦痛を与える行為は「マチハラ」に該当します。

冗談のつもり、場を盛り上げる目的でもNG

ここまでで紹介した「マチハラ」の該当例は、悪意がなくても起こり得ます。特に、普段から近い関係性にある人間同士であれば、冗談のつもり、場を盛り上げるつもりで言ってしまいがちです。

しかし、以下の点にはくれぐれも注意していただきたいです。

・冗談のつもり、場を盛り上げる目的でも、マッチングアプリの利用に関する話で相手をいじらない

・良かれと思っても、マッチングアプリにかかわる内容で一方的な意見だけを言わない。アドバイスを求められた時にのみ意見を伝えるスタンスで

・本人の許可なく、マッチングアプリの利用にかかわる情報を他者に言いふらさない。話題にしない(SNSでの発信を含む)

・マッチングアプリの利用を過度にお勧めしないようにする。マッチングアプリを利用している人を否定しない

・マッチングアプリの利用に関する情報は、それぞれのプライバシー情報であると理解する

少子高齢社会の日本において、マッチングアプリの健全な利用は社会的にも意義があると言えるはずです。

以上のように、マッチングアプリの認知が高まっている今の時代背景を理解した上で、職場に居る利用者とのコミュニケーションを、マッチングアプリを利用しない側の人も意識してみてください。

逆に「これってマチハラ?」と不快に感じた側はどうしたらいいのでしょうか。

「意見は参考にしますので、最終的には自分で決めます」

「仕事とは関係のないプライバシーにかかわることなので答えません」

などといったきっぱりした態度を示し、それでも悪質なハラスメントが続くようならば、

・「マチハラ」被害の詳細について記録をとる(いつ、どこで、誰から、どのようなことを、目撃者はいるのか等)

・会社のハラスメント相談窓口に相談する(マッチングアプリの利用を明かしたくない場合「プライベートで利用しているネットサービス」くらいに伝える)

・職場のハラスメント相談ができる全国の労働局「総合労働相談コーナー」を利用する

などを検討してみてください。

[文・村嵜要]

1983年、大阪府出身。ハラスメント専門家。会社員時代にパワハラを受けた経験があり、パワハラ撲滅を目指して2019年2月に「日本ハラスメント協会」を設立。年間50社からパワハラ加害者(行為者)研修の依頼を受け、パワハラ加害者50人を更生に導く。
Twitter:@murasaki_kaname

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