bizSPA!フレッシュ

トランプ再選が北朝鮮を利する未来。対北朝鮮の連携から日本が蚊帳の外になる恐れも

トランプ再選の可能性がニュースなどで繰り返し話題になっている。その大統領選は今年の11月に行われ、2025年(令和7年)から勝利者がアメリカの大統領を務める。

トランプ再選となれば「民主主義の脅威」などと騒がれているように大きな影響が日本にもあるはずだ。

特に、日本の周りには今、関係の難しい国家が存在する。例えば、北朝鮮だ。11月に控えた米大統領選の結果はどのような影響を北朝鮮に与え、ひいては、日本にどのような変化をもたらすのか。

そこで今回は、国際安全保障、国際テロリズム、経済安全保障などを専門とする和田大樹さんに、米大統領選がもたらすかもしれない日本と北朝鮮の関係の変化をシミュレーションしてもらった。

聞けば、トランプの再選が北朝鮮との再接近を生み、その再接近が日米韓の結束力を低下させ、挙句の果てには中国まで刺激して、日本の影響力低下を生む恐れまであるという。

決してひとごとではない。若手のビジネスパーソンも教養として、最後まで読んでもらいたい(以下、和田大樹さんの寄稿)。

トランプ勝利で世界情勢は大きく変わる

今年は、世界にとって「選挙イヤー」だ。1月半ばには台湾で、次の指導者を選ぶ総統選挙が行われた。

・関連記事
>>>台湾総統選挙で裏工作も中国ボロ負け。悔しくても中国が簡単に台湾に手を出せない裏事情

欧米との関係を重視する蔡英文(さいえいぶん)現政権の後継者が勝利した。台湾総統の任期は4年だ。今後4年間は、台湾と中国との関係が冷え込む可能性が高い。

3月には、大統領選挙がロシアでも行われる。事実上、プーチン政権の+6年を承認するだけのイベントだが、ウクライナ侵攻における士気をロシアはさらに高めると考えられる。

さらに、最大の選挙として11月の米大統領選挙がある。バイデンが勝つのかトランプが勝つのかで2025年(令和7年)以降の世界情勢は大きく変わるだろう。

では仮に、トランプが勝利すれば、われわれ日本が位置するアジア情勢はどのように変わる可能性があるのか。特に、朝鮮半島について考えてみたい。

米朝を取り巻く関係が劇的に変わる可能性も

そもそも、バイデン政権は「北朝鮮が、核やミサイルに関して何かしら改善する姿勢を率先的に示さないと相手にしない」というスタンスを堅持してきた。よって、バイデン政権下で米朝関係に大きな変化はなかった。

バイデン政権に北朝鮮は強い苛立ちを示し、日本や米国、韓国を核やミサイルで威嚇するいつもの行動パターンを続けた。

バイデン政権は当初から、最重要課題に対中国を位置付けてきた。さらに、ウクライナ侵攻という対ロシア問題が浮上し、今日のイスラエル情勢もあって、対北朝鮮の優先順位はかなり低くなっている。
 
しかし、2025年(令和7年)以降、第2次トランプ政権の発足となると、米朝を取り巻く関係は劇的に変わる可能性が高い。

2017年(平成29年)にトランプ政権が誕生して以降、トランプ大統領(当時)は、北朝鮮の金正恩氏をロケットマン(ミサイル発射を繰り返すので)などと挑発し、軍事的な解決策はすでに整備されているなどとけん制した。

金氏も、世界の面前でトランプが北朝鮮の存在自体を否定して侮辱し、凶悪な宣戦布告をしたなどと非難し、軍事的緊張が双方の間で高まった。その状況は、2017年朝鮮半島危機と呼ばれるようになった。

トランプ勝利を金正恩氏も期待

だが、2018年(平成30年)2月のピョンチャン冬季五輪あたりを転機に、米朝関係は大きく改善の方向に舵を切った。

それまでのののしり合いがうそのように、トランプ大統領(当時)と金正恩氏はシンガポール、ベトナム、南北境界線の板門店で3回も対面で会談した。

会談自体が上手くいったとは言えないものの、長年対立する米朝双方の指導者が直接会ってハグする姿は極めて印象的だった。トランプ大統領自身も、北朝鮮の指導者と会った初めての米国大統領だという自負を強く持っている。

よって、来年の大統領選挙でトランプが勝利すれば最初から、北朝鮮との関係改善に動き出すと想像される。

恐らく今ごろ、トランプ勝利を金正恩氏も強く期待しているだろう。そうなれば、バイデン政権下で続く北朝鮮の核やミサイルの威嚇は、発射の頻度が低下する可能性は高い。

それだけ聞くと、日本にはいい話のように思えるかもしれない。しかし、トランプ政権下では、対北朝鮮で連携を強化してきた米国、日本、韓国の3カ国の連携が弱体化する可能性もある。そうなれば、いい話ではなくなってくる。 

蚊帳の外に日本が置かれる恐れも

なぜ、トランプ政権下では、対北朝鮮で連携を強化してきた米国、日本、韓国の3カ国の連携が弱体化する可能性があるのか。

その理由は、上述したとおり、米国が独自に、北朝鮮に接近するシナリオが想定されるからだ。

バイデン政権下で結束が図られた日米韓3カ国の結び付きから率先的に米国が距離を置き始めれば、北朝鮮を利する結果になる。

さらに、第2次トランプ政権は日本や韓国の同盟国に対し、軍事的負担を強く求める可能性も十分にある。

一方、中国も、北朝鮮と米国の関係改善が両国の関係強化につながり、米国の影響力が北朝鮮を覆うようになれば黙っていない。

米国の影響力が北朝鮮に及べば、対立勢力圏の中国国境までの北上を政治的には意味する。中国にとっては絶対避けたいシナリオだ。そこで、中国も北朝鮮への接近を図る結果になる。

すると今度は、米中の動きを北朝鮮がてんびんにかけ、援助や支援などを双方から拡大させようとしてくる可能性もある。

もちろん、ここまでの話はシミュレーションの1つであり、こういった状況が今後到来するかは分からない。

しかし、こういった状況は拉致問題を抱える日本にとっては望ましい環境でないかもしれない。

北朝鮮が米中を天秤に掛けられる状況は、北朝鮮にとっては都合のいい環境で、日本は何もしないと蚊帳の外に置かれる可能性がある。

若い人たちも、自分たち日本の暮らしにどのような影響が出るかをシミュレーションしながら国際ニュースを見聞きしてみてはどうだろうか。ニュースがもっと身近に、ひとごとではなく感じられるはずだ。

[文・和田大樹]

専門分野は、国際政治学、安全保障論、国際テロリズム論、経済安全保障など。大学研究者として安全保障的な視点からの研究・教育に従事するかたわら、実務家として、海外に進出する企業向けに地政学・経済安全保障リスクのコンサルティング業務(情報提供、助言、セミナーなど)を行っている。特に、国際テロリズム論を専門にし、アルカイダやイスラム国などのイスラム過激派、白人至上主義者などのテロ研究を行う。テロ研究ではこれまでに内閣情報調査室、防衛省、警察庁などで助言や講演などを行う。所属学会に国際安全保障学会、日本防衛学会、防衛法学会など。多くのメディアで解説、出演、執筆を行う。
詳しい研究プロフィールは以下、https://researchmap.jp/daiju0415

おすすめ記事