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投資詐欺を見破る検索ワードを弁護士伝授。副業・投資でだまされない会話術も

「投資詐欺」のニュースが連日報道されている。「投資詐欺」のような悪質商法(利殖勧誘事犯)の検挙件数は警察庁によると過去10年で最悪の水準となっている。

詐欺的な投資勧誘に関する相談件数の内訳を公開した金融庁の情報によれば、金銭的な被害を受けた相談者の年齢層は最多が30代だ。20代以下も決して少なくない。

そうなると、bizSPA!フレッシュの若い読者たちが「投資詐欺」にいつ遭ってもおかしくない状況にあると言える。

そこで今回は、副業や投資にチャレンジする際にだまされるリスクを軽減するための方法や被害に遭った時の対処方法について、詐欺トラブルを専門に扱う大地総合法律事務所代表の弁護士・佐久間大地先生に、ライターの山内良子さんが話を聞いた(以下、山内良子さんの寄稿)。

楽して簡単に誰でも稼げる副業なんてない

「稼げる」「もうかる」と言ったワードを耳にし、全く動じない人の割合はどのぐらいだろうか。「短時間で高額報酬」「誰でも簡単」などとハードルを下げる言葉がプラスされればなおさらだ。

将来への備えに、副業や投資を始める人が増える中、詐欺被害に遭う人が後を絶たない。消費者庁が公表する「2022年の消費生活相談の概況」によれば、15~29歳までの若者による消費生活相談件数が男女関係なく上位に見られる。

今回、大地総合法律事務所代表の弁護士・佐久間大地先生に、もうけ話に関連した詐欺被害に若年層が遭う背景を聞いた。

大地総合法律事務所代表の弁護士・佐久間大地先生

佐久間先生いわく、将来への漠然とした不安、ならびにSNS(会員制交流サイト)利用時の甘い誘いおよび怪しい体験談を目にする機会の多さが大きな要因に挙げられるという。

「老後の2000万円問題、年金の支給開始年齢の段階的な引き上げ、2019年(令和元年)末に流行したコロナ禍といった感染症のパンデミックなど、将来に対して漠然と不安を抱いてしまう出来事が続いています。

そのような状況で、副業の推進を政府が開始し、若い人たちが将来を真剣に考える機会が増えました。

プラスして、ウクライナでの出来事のように、昨日までは平和な生活だったのに、どこかの国が急に攻めてくる可能性もあるでしょう。私自身も、少し先の未来について、すごく不安に思う瞬間があります。

そのような時、何気なく見ている〈YouTube〉やSNS(会員制交流サイト)で『楽して稼げる』『誰でも簡単』『短期間で高収入』などの広告が目に飛び込んできたら、軽い気持ちでクリックしてしまうかもしれません。

若い世代にとっては〈YouTube〉や〈TikTok〉などの配信系、〈X〉や〈Instagram〉などのSNS系が情報収集先となっているため、それらの媒体に当然、詐欺師も目をつけています。

ちょっと見るだけのつもりが、足を突っ込んでしまうというパターンもあります。大前提として、配信系やSNS系で、楽して簡単に誰でも稼げるといった単語や誘い文句が出てきたら要注意、惑わされないように利用してほしいと思います。

また、投資や副業について対面で話す時、自分をだまそうとしている相手かどうかを見極めるポイントは『絶対にもうかる』『損はさせない』など、いいことばかりを並びたてた説明をしていないか、です。

『このままだとヤバイ』など不安をあおったり『変わるなら今』『今返事をくれないと…』など決断を急がせたりする相手は怪しいケースも多いので気をつけてください。

楽して簡単に誰でも稼げる副業なんてまずありません」(佐久間大地先生。以下、佐久間)

広告を見た後は会社名を検索

それでも、楽して簡単に誰でも稼げるとうたう広告に興味を持ってしまったらどうすればいいのか。

「利益を出すためには普通、時間やコストをかけて稼ぐためのノウハウを習得する必要があります。繰り返しになりますが、楽して短時間で稼げるなんてあり得ないという認識をきちんと持ってほしいです。

それでもなお、興味を持ってしまったら、1つの情報だけをうのみにせず、関連情報をできるだけ集め、さまざまな角度からリサーチするよう心掛けてください。

具体的には『もうかる』『高収入』などのワードを掲げて投資セミナーの参加者などを募る広告を見つけた時はまず、会社名を検索してください。

会社名が存在しなければもちろんアウト。会社名がヒットしたら『会社名』の後に空白を空けて『評判』や『詐欺』などのワードを打ち込んで調べてみましょう。

もうかるという情報と同じぐらいネガティブな意見や評価が出てくるケースも多いです。

人伝いの投資話でも同じです。最初は、少額の投資金額で話を持ち掛け『利益が出た』と何度かお金を振り込んで信用させるケースも少なくありません。

その後、だんだんと金額をつり上げながら投資話を持ち掛け、最後には、リターンどころか投資資金すら戻ってこない詐欺も多いです」(佐久間)

人伝いの投資話でも、配信系やSNS系の広告でも、嫌な体験を実際にした人たちが「だまされた」「詐欺まがいの会社」などとネガティブな意見をインターネット上に書いている可能性が十分にある。そういった評判に目を通せば、第三者目線で考えたり、思いとどまったりするきっかけになるとの話だ。

また、佐久間先生は、金融および経済の基礎知識、ならびに金融商品を選ぶスキルなどを日ごろ身に付けておきたいと語る。金融リテラシーがあれば、その手の投資話を持ち掛けられた時に冷静な判断ができる可能性が高い。

同じリスクを取って投資を始めるのであれば、金融庁など日本の行政機関が推奨している金融商品を、月々数千円ずつなど少額から始めた方が無難ではないだろうか。

副業を募集している会社が実在するか調べる

副業に関しても同様だ。

「誰かを紹介すると利益が入るというようなマルチ関係にも注意が必要です。

マルチ商法は法律で禁止されてはいません。しかし、多額の費用が加入時に発生する場合もあります。誰かを紹介し拡大していくと当然、新規加入者の獲得や利益確保も難しくなります。

高級ホテルのロビーや『タワマン』のゲストルームなど憧れの場所で、容姿や身なりの奇麗な人に『今始めなければずっと変わらないよ』などと言われたら気持ちも揺らいでしまうでしょう。

よく似たケースで言えば〈X〉や〈Instagram〉で、高級車やハイブランドのかばん、腕時計の写真を掲載し『こんなに稼いでます』といった投稿をしている人にも注意が必要です。

誰もが憧れるような生活を演出し『今のままでいいの?』と不安をあおって勧誘する手口です。投資と同じく、友達伝いやSNS(会員制交流サイト)で仲良くなった人からの副業話にも注意してください」(佐久間)

手軽さや高収入をうたう副業は「闇バイト」の可能性もある。投資詐欺の場合と同じく、副業を募集している会社が実在しているか、実績や評判について調べてから判断するといいと佐久間先生は語る。

検討中の段階で無料相談できる弁護士も

さらに、副業や投資を始めようと検討中の段階で、弁護士に無料相談できる可能性すらあるとも知っておきたい。

被害に遭っていない場合はアドバイスのみとなるが、詐欺トラブルに巻き込まれている場合には、被害に遭ったお金を取り戻すかどうかを相談の上で決められる法律事務所も存在するのだ。

弁護士と聞くと費用が心配になる。しかし、詐欺トラブルに実際に遭った時でも相談は無料、被害額を取り戻す時の着手金も無料の事務所もある。

「弊所の場合は、SNS(会員制交流サイト)のコメント欄に書き込んでいただいても、DM(ダイレクトメール)を送っていただいても大丈夫です。

また、相談したい内容は箇条書きなどで構いません。時系列にまとめたり、最初から詳しく書いたりするのは難しいと思うので、どのようなことで困っているのか、現状についてまずは簡単にお知らせください。

詐欺トラブルで被害に遭ったお金を取り戻そうとなった場合も、相談料や着手金を無料に設定しています。

弁護士への相談は一般的に、まだまだハードルが高いのではないでしょうか。さらに、相談料を頂くとなると『相談をやめよう』となる人も少なくないでしょう。

被害に遭われた方は、だまされていて手持ちのお金がない人も多いです。

もちろん、返金請求が難しいという場合もありますが、泣き寝入りする人を少しでも救済したい、1人でも多くの人を救済できればという思いで、成功報酬のみを頂くようにしています」(佐久間)

金融リテラシーを日ごろから深め、金融と経済に関する基礎知識を増やし、楽して簡単に誰でも稼げるといった誘い文句に乗らず、会社名と評判を必ず事前に確かめる。

その上でもなお、詐欺トラブルに巻き込まれそうになったら、無料相談を受け付けてくれる弁護士事務所が存在すると知っておきたい。被害を最小限にとどめられる可能性が高くなるはずだ。

[取材協力]
佐久間大地・・・弁護士法人大地総合法律事務所代表。第一東京弁護士会所属の弁護士。詐欺トラブルに関しては、相談料や着手金を一切不要とし、被害者救済に尽力。多くの詐欺被害案件を解決に導いている他、〈X〉や〈LINE〉、SNS(会員制交流サイト)でも気軽に相談できるよう間口を広げている。
X(旧:Twitter):@daichilawyer
Instagram:@daichi_lawyer
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YouTube:https://www.youtube.com/@user-ph6ik5vr8d

[参考]
第1部 第1章 第3節 (1)2022年の消費生活相談の概況 – 消費者庁
※ 詐欺的な投資勧誘に関する情報の受付状況 – 金融庁
※ 令和3年における生活経済事犯の検挙状況等について – 警察庁
「金融リテラシー」って何? 最低限身に付けておきたいお金の知識と判断力 – 政府広報オンライン

フリーライター。おいしいものや楽しいこと、旅行が大好き! ライフ系や節約、歴史や日本文化を中心に、取材や経営者向けの記事も執筆。金融会社での勤務経験や接客改善業務での経験を活かした記事も得意です

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