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プロペラ機で7分「12.5キロ」しか隣と離れていない日本一近距離の空港ははかなくも美しい

日本には実に、97もの空港があるらしい。都道府県の数は47あり、平均すれば2つ以上の空港が各都道府県に存在する計算になる。

日本エアコミューターのATR-42-600型機。離島の空港を結ぶ飛行機

分布に関しては、空港の無い県が関東圏に多く逆に、北海道・鹿児島・沖縄には離島があるため、空港の設置個所が多いといった特徴がある。

それだけ空港がたくさんあれば、言い方は悪いが「珍空港」と呼べるような特徴的なエアポートも存在する。

そこで今回は、飛行距離が日本一短い、東京都内で言えば新宿駅から三鷹駅程度しか離れていない距離で定期便が就航する空港を、航空ジャーナリストの北島幸司が紹介する(以下、北島幸司の寄稿)。

日本一距離の短い航空路線

北大東空港(画像はWikipediaより)

空港を管轄する国土交通省によって97の空港の分布図が公開されている。それらの空港は4つの種類に分類される。

拠点空港が28、地方管理空港が54、その他の空港が7、共用空港が8で合計97になる。

この中で、運用休止などの理由から使われていない空港もあるが、97も空港があれば設置間隔には当然、遠近がある。

空路で結ばれていないものの空港同士が近い例で言えば、沖縄県の宮古島にある宮古空港・みやこ下地島空港がある。両空港間は、直線距離で15.9キロしか離れていない。

公共交通機関を利用すれば両空港は直接、行き来できる。さらに、東京と結ばれた定期路線をそれぞれに持っている。

神戸空港・関西国際空港も近い。大阪国際空港(伊丹)を入れた関西3空港のうち神戸空港と関西国際空港の距離は大阪湾を突っ切ると22.4キロだ。両空港は、船舶輸送の〈神戸-関空ベイ・シャトル〉で結ばれている。

東京都にもある。伊豆諸島の新島空港・上津島空港は23.6キロしか離れていない。両島共に、調布空港から新中央航空が直行便を定期運航している。両島を結ぶ航空路線は無いが、船舶輸送は用意されている。

しかし、こうしたエアポートよりもさらに空港同士の距離が短く、その上、直行便まで飛んでいる日本一短距離の路線が存在する。どのような空港なのか。

7分の空の旅で8マイルがたまる

沖縄の離島を飛ぶ琉球エアコミューター機の機窓から

沖縄県に、北大東島と南大東島という離島がある。那覇のある沖縄島から見て東の洋上にあり、それぞれの島に空港があって、両空港が定期便で結ばれている。

2つの空港の直線距離はなんと12.5キロしかない。東京都内で言えば新宿駅から三鷹駅程度しか離れていない。JALグループの琉球エアコミューター(RAC)が就航している。

北大東島から南大東島へ週4便、南大東島から北大東島へ週3便飛んでいる。方向は変わるが実質毎日、結ばれている計算になる。

筆者も、初めての〈跳び飛びの旅〉の途中区間で2018年(平成30年)3月に、北大東空港⇒南大東空港を飛んでいる。

〈跳び飛びの旅〉とは、2009年(平成21年)4月からJALPAKで発売されている「離島ホッピング」の旅だ。プロペラ機で離島を巡るフライトツアーとなる。

その時は、JALグループの琉球エアコミューター(RAC)NU836便でDHC8-400型機JA81RCに乗り7分の空の旅を楽しんだ。8マイルがたまった。

北大東空港の滑走路03を離陸する直前の琉球エアコミューター機

北大東空港の滑走路03を離陸した時の様子を簡単に振り返ってみたい。

北大東空港から北へ向かって離陸するため、南大東空港からは一度遠ざかる形になる。しかし、飛行機はすぐ左旋回して、左下に島を見ながら南大東島を目指す。

この段階ですでに、着陸する南大東空港は視界に入っている。南・北大東島が、眼下に全景を現し、西日を浴びながら美しく光る様子を眺められた。

伊豆諸島のさらに南にある小笠原諸島(東京都)を那覇から目指す場合、南北の大東島が経由地になる。

いわば、琉球諸島の連なりから隔離された離島が南・北大東島になる。那覇からも遠い。太平洋の洋上にぽつんと現れる2つの小さな島ははかなく思えた。

着陸は、大きく旋回して南から進入し、南大東空港の02滑走路へ降りた。

小さな島の生活路線

琉球エアコミューター(RAC)のDHC8-400CC型機

南・北大東島の空港はそれぞれ、350キロ近く離れた那覇と三角運航している。両島区間の普通運賃は9,570円で、20分の所要時間が時刻表で表記されている。

このような航空路線は離島故に存在する。しかし実際に、利用者が居るのかどうか。北大東村役場建設課空港係の池原政健(せいけん)さんに話を聞くと、次のような言葉があった。

「この区間は、週に1~2便しか船が運航していません。かといって、南・北大東島の2区間の移動だけを目的として航空機を利用する人が多いかというと、ほとんどおりません。

三角運航のために、那覇へ行くために、結果として両空港を経由する人が多いのです。

例えば島には、中学校までしか学校がありません。那覇の高校へ進学するために島を離れる生徒さんが居ます。そのご家族が利用するといったケースです。

南・北大東島の交流は年に2回。6月の〈南北親善競技大会〉と9月の〈豊年祭〉です。このイベントでは、交流のためにチャーター船が用意されます」(池原政健さん)

要するに、沖縄本島と結ばれる2つの小さな島の生活路線として機能しているとの話だ。距離が近いという物差しだけで「なんで、そんな近くに空港が必要なの?」と考えると単眼的な見方となる。

航空ジャーナリストとして、このような航空路線が日本にあると知ってもらえればうれしい。

琉球エアコミューター(RAC)のDHC8-400CC型機

[文・写真/北島幸司]

航空会社勤務歴を活かし、雑誌やWEBメディアで航空や旅に関する連載コラムを執筆する航空ジャーナリスト。YouTube チャンネル「そらオヤジ組」のほか、ブログ「あびあんうぃんぐ」も更新中。大阪府出身で航空ジャーナリスト協会に所属する。Facebook avian.wing instagram @kitajimaavianwing

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