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もっと過激な政策に備えよ。第2次トランプ政権誕生で日本の若者が理解すべき不都合な真実

ビジネス, 学び

秋のアメリカ大統領選挙に向けて、トランプ元大統領の勢いがすごいというニュースを繰り返し聞く。ただ、実際問題としてトランプ再選となった時、何が起きるのだろうか。

トランプ前政権の時、日本と仲が良かった印象がある。激しい言動が注目されるけれど結局は、それほど世の中は変わらないんじゃないかと考える人も少なくないはずだ。

しかし、国際政治に詳しい和田大樹さんによれば、この「今回も大丈夫だろう」という思い込みが一番危険らしい。

そこで今回は、リーダーを志す日本の若者たちが理解すべきトランプ再選後の未来を、国際安全保障、国際テロリズム、経済安全保障などを専門とする和田大樹さんに教えてもらった(以下、和田大樹さんの寄稿)

1期目以上に大胆・過激な政策を実行

秋の大統領選に向け、共和党の候補者選びも本格的に動き始めた。オハイオ州、ニューハンプシャー州、サウスカロライナ州など5州で行われた予備選ではトランプが5連勝を果たし、共和党はトランプ氏で決まりという状況にすでになっている。

トランプの再選はハッタリではなく現実問題となった。その前提に立った上で認識しておくべき点は、トランプ氏が1期目以上に大胆・過激な政策を実行してくる可能性の高さだ。

2期8年の政権運営を目指す政治家にとって1期目の政権運営は、2期目の再選を目指す中で、支持者や国民、野党の意見に耳を傾ける必要がある。暴走はしにくい。

しかし、再選を果たした2期目は最後の4年間となる。後のこと(再選に必要な支持や協調の姿勢)を気にする必要がない。

トランプ氏も同じだ。自分の思った政策を1期目以上に実行する可能性が専門家の間で指摘されている。要は、トランプ色の強い「アメリカファースト」が1期目より実行されていく可能性があるのだ。

「日本とトランプは仲が良かったから大丈夫」が一番危険

そうなると、日本も対岸の火事ではなくなる。トランプ前政権の時、日本とトランプは仲が良かったから今回も大丈夫だろうと思うかもしれない。

しかし、その思い込みが一番危険である。あの時は、当時の安倍総理がトランプ氏と上手く付き合い、個人的な信頼関係を構築できていただけだ。

現在の日本の首相がトランプ氏といい関係を再びつくれるかは分からない。

最近、日本企業の間では米企業の買収が活発化しているという。トランプ氏がそれを、一種の侵略と認識する可能性は大いにある。

現に、トランプ氏は最近、日本製鉄(東京都千代田区)による米鉄鋼大手USスチール買収計画について言及し「認めない、それを絶対に措置する」と批判した。

阻止できるかどうかは別にして、中国だけでなく日本に対しても、トランプ政権が経済や貿易で圧力を掛けてくる可能性を理解しておくべだ。

米国経済の保護主義化が鮮明になってくる可能性

中国の経済力が米国に接近するにつれ米国は焦りを感じ始めている。政治や経済を含め全体的に内向き、保護主義的な国家に変わってきている

「米国の経済や雇用を守る!!」

以上がトランプ氏の目標であり、これ以外は全く興味がない。

トランプ氏は、大統領に返り咲いた場合、中国からの輸入品に対する60%の関税を検討しているが、それだけではない。

その他の国々からの輸入品にも10%の関税を検討している。当然、日本企業への圧力を強めるシナリオも想定しておく必要があろう。

ビジネス界でこれから活躍していく若い世代は米国を、日本の同盟国であり、自由貿易や資本主義など同じ価値観を共有する国家と思いがちだ。

当然の考えである。しかし、時間の経過と共に変化が生じ、米国経済の保護主義化が鮮明になってくる可能性も視野に入れておく必要がある。

それぞれの立場で、その変化に備えてほしい。

[文/和田大樹]

専門分野は、国際政治学、安全保障論、国際テロリズム論、経済安全保障など。大学研究者として安全保障的な視点からの研究・教育に従事するかたわら、実務家として、海外に進出する企業向けに地政学・経済安全保障リスクのコンサルティング業務(情報提供、助言、セミナーなど)を行っている。特に、国際テロリズム論を専門にし、アルカイダやイスラム国などのイスラム過激派、白人至上主義者などのテロ研究を行う。テロ研究ではこれまでに内閣情報調査室、防衛省、警察庁などで助言や講演などを行う。所属学会に国際安全保障学会、日本防衛学会、防衛法学会など。多くのメディアで解説、出演、執筆を行う。
詳しい研究プロフィールは以下、https://researchmap.jp/daiju0415

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