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台湾侵攻と当時に尖閣奪取と中将が発言。日本人を脅かす世界の重大ニュース3選【2023年版】

ビジネス, 学び

いろいろなニュースが今年もあった。しかし、島国の日本人にとって世界のニュースはピンとこないケースも多く、見聞きしても反応できずにスルーした場面もあったはずだ。

しかし、日本人にも無関係ではない、若者の暮らしにまともに影響が出そうなニュースもたくさんあった。幾つ、覚えているだろうか。

そこで今回は、Strategic Intelligence代表取締役社長CEO、日本カウンターインテリジェンス協会理事、ノンマドファクトリー社外顧問、清和大学講師、岐阜女子大学南アジア研究センター特別研究員など数々の職務を兼任し、国際安全保障、国際テロリズム、経済安全保障などを専門とする和田大樹さんに、日本人への影響が特に大きかった世界のニュースを3つ選んでもらった(以下、和田大樹さんの寄稿)

3つとも中国関係のニュースに

2023年(令和5年)が終わろうとしている。

今年の世界情勢を振り返ると、ウクライナ軍とロシア軍による攻防が続き、中国軍機による中台間の中間線越えや台湾の防空識別圏への侵入が相次ぎ、イスラエルとイスラム原理主義組織ハマスとの戦闘が秋に拡大するなど、各地域で緊張が継続、発生した。

その数ある重大ニュースの中でも、日本人・日本企業への影響という観点から、人ごとではない幾つかのニュースをピックアップしておさらいする。

結論から先に言うが、3つとも中国関係のニュースになった。日韓関係は良好で、日露関係では、日本人への影響という観点で言うと大きなニュースはほぼなかった。

しかし、中国との間では、スパイ、日本産水産物、尖閣諸島に関する爆弾発言など、日本人の暮らしに直結するニュースが続いたので、以下の3つのニュースを選んだ。

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日本産水産物の全面輸入停止

まず、中国関連の今年の重大ニュースとして挙げられる出来事が、8月の日本産水産物の全面輸入停止である。

福島第一原発の処理水(汚染水)放出をきっかけに「核汚染水から国民の衛生を守る」という名目で日本産水産物を全面的に中国側が輸入停止した。

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この輸入停止の判断は、日本への政治的不満に基づく経済的威圧だと考えられる。

現に、日本周辺海域で中国の漁船は今も操業している。日本周辺で漁獲された魚のうち、日本の港に水揚げされた魚は駄目で、中国の港に水揚げされた魚はOKだという。全面輸入停止された魚と同じ魚を中国は自国に持ち帰っているのだから全くの矛盾だ。

食べられる魚だけではない。中国は近年、諸外国で人気の高い観賞用の日本産ニシキゴイの輸入も停止している。

処理水(汚染水)は海へ流されており、観賞用で淡水魚のニシキゴイが処理水(汚染水)に触れる可能性はゼロだ。

これらの事実を考えても中国側の措置は、日本への政治的不満に基づく措置と言わざるを得ない。

しかし、その恣意(しい)的な経済的威圧の結果として、中国に海産物を輸出してきた加工会社などが影響をもろに受けた。特に、ホタテなど、売り上げの大半を中国に依存してきた業者からは悲鳴の声が上がった。

関係者の間では、日本国内での消費を増やす、ベトナムやタイなど東南アジアへの輸出を拡大させるなど脱中国依存を図る動きも拡大している。

しかし、中国が早く輸入再開してくれないかと願う企業もある。影響は、大手回転ずしチェーンのメニューにも表われた。

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各種の企業や団体も反スパイ活動で責任を負う

2つ目は、7月の改正「反スパイ法(中華人民共和国反間諜法)」だ。

これまでのスパイ行為の定義が改正法で拡大され、国家機密の提供だけでなく、国家の安全と利益に関わる資料、データ、文書および物品の提供、ならびに窃取もスパイ行為と見なされるようになり、執行機関の権限も強化された。

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執筆時点で、改正法により拘束・逮捕された日本人は報告されていない。しかし、中国国内では、政府当局による監視が一層強化されている模様だ。

中国内陸部の重慶市では、改正「反スパイ法」に基づいた反スパイ条例が7月下旬に議会で可決され、9月から施行された。

国レベル運用されている法律が地方レベルの条例で具体化された。大きな懸念事項である。

重慶市のように地方レベルに落して条例化されるケースが他の都市にも今後は広がっていく可能性がある。重慶市の反スパイ条例では、各種の企業や団体も警察と協力し、反スパイ活動で主体的責任を負うと定めされている。

当然ながら、中国へ進出する日本企業の間で不安の声が広がった。中国から脱却する動き、新たに中国へ投資する動きに陰りが見え始めている。

仮に、改正反スパイ法によって邦人の拘束が今後続くようになれば、中国への日本人渡航は減少するだろう。

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尖閣諸島を巡る戦争は望まないが恐れない

最後の3つ目は、中国人民解放軍の中将が共同通信の取材に応じた際の最近の発言だ。

尖閣諸島を台湾省の一部と捉える中国側の認識からすれば、台湾侵攻と当時に中国軍が尖閣奪取に出る可能性があると発言した。

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日本による挑発が続けば、主権と領土を守り抜くため中国は容赦しない、台湾問題など中国の核心的利益への干渉は許されず、尖閣諸島を巡る戦争は望まないが恐れないとけん制した。

この発言についてはさまざまな見方ができる。台湾侵攻となれば日本や米国は尖閣防衛を強化し、同時作戦を展開する可能性も十分に考えられる。そうなれば、日本の若者たちの暮らしにも影響は必至である。

中国人民解放軍の中将から12月に出た発言を踏まえ、中台の関係については来年以降も注視したい。決して人ごとではない。

[文/和田大樹]

専門分野は、国際政治学、安全保障論、国際テロリズム論、経済安全保障など。大学研究者として安全保障的な視点からの研究・教育に従事するかたわら、実務家として、海外に進出する企業向けに地政学・経済安全保障リスクのコンサルティング業務(情報提供、助言、セミナーなど)を行っている。特に、国際テロリズム論を専門にし、アルカイダやイスラム国などのイスラム過激派、白人至上主義者などのテロ研究を行う。テロ研究ではこれまでに内閣情報調査室、防衛省、警察庁などで助言や講演などを行う。所属学会に国際安全保障学会、日本防衛学会、防衛法学会など。多くのメディアで解説、出演、執筆を行う。
詳しい研究プロフィールは以下、https://researchmap.jp/daiju0415

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