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来年秋トランプ再当選で世界が大混乱も。国防予算大幅増のプーチンがトランプ復帰を望むわけ

いよいよ年の瀬が迫ってきた。国際情勢が目まぐるしく変化した1年だったが、来年はどうなるのか。2024年(令和6年)は特に、アメリカ大統領選挙が11月に行われるなど、大きなイベントが控えている。

そこで今回は、Strategic Intelligence代表取締役社長CEO、日本カウンターインテリジェンス協会理事、ノンマドファクトリー社外顧問、清和大学講師、岐阜女子大学南アジア研究センター特別研究員など数々の職務を兼任し、国際安全保障、国際テロリズム、経済安全保障などを専門とする和田大樹さんに、来年秋のアメリカ大統領選が与える世界と日本への影響を教えてもらった(以下、和田大樹さんの寄稿)

トランプ再選でウクライナ支援停止

今年の世界情勢を振り返ると、ウクライナ軍とロシア軍の攻防が続き、中国軍機による軍事的威嚇が台湾情勢で常態化し、イスラエルとイスラム原理主義組織ハマスとの間で秋には戦闘がエスカレートした。

来年、これら3つの紛争はどのよう展開していくのだろうか。より大きな緊張が走るのか否か。それらを占う上での最大のトピックは2024年(令和6年)11月の米大統領選挙だろう。

今のところ、11月の大統領選で出馬が予定されている候補者はバイデン大統領と共和党のトランプ前大統領である。要するに、2020年(令和2年)の再戦が濃厚となっている。

どちらが勝つか現時点では分からない。バイデン勝利となれば、これまでの4年間がさらに続く4年間になり、世界情勢に与える変化は良くも悪くも小さくなると予想される。

一方、トランプが勝利すれば世界に大きな動揺が走る。世界の分断は一層進み、ウクライナ情勢への影響が特に大きくなる。

これまでは、米国が主導する形でウクライナへの軍事的支援が継続された。この支援が、ロシアによる侵攻を抑える上で重要な役割を果たしてきた。

しかし、トランプは今年3月、大統領に返り咲けば最優先でウクライナ支援を停止すると言及している。ウクライナへの軍事支援は米国内でも国民から支持されなくなっている。ホワイトハウスへトランプが帰還すれば、支援停止が実行される可能性は高いと言えよう。

ロシアの国防予算は大幅に増額へ

ウクライナへの支援停止は2つの動きを促進する。

1つは、米国と欧州の乖離(かいり)だ。トランプ政権時代、米国と欧州の関係は最悪のレベルで冷え込み、自由民主主義陣営での分断が鮮明となった。バイデン政権が発足直後に力を入れた取り組みは欧州との関係改善だった。

しかし、トランプ再選で状況が逆戻りするリスクが生じている。ウクライナ支援を主導してきた米国が一方的に支援を放棄すれば、欧州と米国との間には大きな溝が再び生じる。

特に、ロシアと距離的に近い国々(ウクライナ、フィンランド、バルト3国、モルドバなど)の対米不信は計り知れないだろう。
 
2つ目は、ロシアの士気だ。ロシアでは、来年度の国防予算が大幅に増額される予定だ。大統領選挙を来年3月に控えるプーチン大統領は、大統領選に合わせて攻勢を仕掛け、軍事的優位を一気に獲得したいはずだ。

その際、米国のウクライナ関与がポイントになる。トランプ勝利が濃厚という選挙情勢になれば、ロシアは一層士気を高め、軍事的攻勢を強化する可能性があろう。

今日、プーチン大統領自身も、トランプの勝利を強く望んでいるはずだ。トランプ大統領の勝利は、ウクライナ侵攻を続けるロシアにとって都合がいい。

われわれの日常生活にも物価高騰で跳ね返ってくる

冒頭でも指摘したとおり、トランプが大統領に返り咲けば世界に動揺が走り、欧州との間には乖離(かいり)が生じ、ロシアの士気が高まり、ウクライナ情勢で大きな緊張が再び走る可能性がある。

あらゆる商品の値上げアップが日本国内でも止まらない中で、小麦関連価格などが再び、突如として高騰する恐れもあろう。

また、ウクライナ侵攻以降、冷え込みはありながらも、天然ガスなどエネルギー分野では一定の関係を日本とロシアは維持してきた。その関係性にも、ウクライナ情勢の緊張によって影響が及んでくる可能性がある。

トランプ再当選は、われわれの日常生活にも、物価高騰という視点で跳ね返ってくるとも考えられる。国際情勢は、ひとごとではない。

[文/和田大樹]

専門分野は、国際政治学、安全保障論、国際テロリズム論、経済安全保障など。大学研究者として安全保障的な視点からの研究・教育に従事するかたわら、実務家として、海外に進出する企業向けに地政学・経済安全保障リスクのコンサルティング業務(情報提供、助言、セミナーなど)を行っている。特に、国際テロリズム論を専門にし、アルカイダやイスラム国などのイスラム過激派、白人至上主義者などのテロ研究を行う。テロ研究ではこれまでに内閣情報調査室、防衛省、警察庁などで助言や講演などを行う。所属学会に国際安全保障学会、日本防衛学会、防衛法学会など。多くのメディアで解説、出演、執筆を行う。
詳しい研究プロフィールは以下、https://researchmap.jp/daiju0415

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