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ジャニーズだけじゃない芸能界の性加害問題まとめ「禁固23年の事例も」【20代の社会常識】

コラム, 学び

性被害・加害を振り返る記事は、被害者のつらい記憶をよみがえらせるリスクもある。しかし、ジャニー喜多川の件に限らず、疑惑も含めれば性加害の問題は芸能界で繰り返し起きている。

そこで今回は、どのような性被害・加害(疑惑を含む)が芸能界で過去に起きたのか、bizSPA!フレッシュのライター望月悠木が過去の報道などから代表的な事例をまとめた。

性加害疑惑の週刊誌報道

記憶に新しい芸能界の性加害疑惑は〈新宿スワン〉〈冷たい熱帯魚〉などの映画を監督した園子温(そのしおん)によるケースだ。2022年(令和4年)4月に、複数の女優の告白によって園による性加害が週刊誌で報道された。

“女はみんな、仕事が欲しいから俺に寄ってくる”
“主演女優にはだいたい手を出した”
(〈週刊女性PRIME〉より引用)

といった本人の発言も報じられるが、記事の内容が事実と異なると園側は反論し、損害賠償と謝罪広告などを求める訴えを、週刊誌の版元に対して提起した。現在も、東京地裁で係争中とされる。

「演技指導」が口実

役者間でも性被害に遭うケースがある。

2022年(令和4年)3月、名バイブレイヤーとして活躍していた役者の木下ほうかから性的被害を受けたという2人の女優の証言が週刊誌で報じられた。

報道によると、演技指導や有名監督を紹介するといった口実をつくり、被害者を自宅に呼んで性行為を迫ったとされる。

報道後、木下ほうかとの契約を所属事務所は解消し本人も、

“一部事実と異なる点や10年程度前のことで記憶にないこともございますが、概ね間違っておりません”
(スポーツ報知より引用)

と行為を認め、芸能活動の無期限休止を発表した。

木下は、2022年(令和4年)4月から放送開始した〈正直不動産〉(NHK系)に出演予定(当時)だったが、報道後には撮影が終了していたため、代役を立てての再撮影ではなく出演シーンのカットでNHKは対応した。

強制わいせつの容疑

性被害・加害は、バラエティー番組の出演者同士でも起きている。

2018年(平成30年)、当時TOKIOのメンバーだった山口達也が、女子高生を自宅に招き無理やりキスするなどして、未成年への強制わいせつ容疑で書類送検(不起訴処分=起訴猶予)された。

被害者は、山口がMCを務めていたバラエティー番組〈Rの法則〉(Eテレ系)の共演者。友人と2人で被害者が山口宅に訪れた際には、

“「なんで、一人で来なかったんだよ!」”
(〈文春オンライン〉より引用)

と山口が怒鳴ったとされる。

「そんなに嫌か?」

芸能界の性加害・被害は、根深い問題として常態化していたとも考えられる。

2018年(平成30年)2月に、バラエティ番組〈イッテンモノ〉(テレビ朝日系)に出演した女優の夏木マリが、米ハリウッドでのセクハラ問題を受けて「日本でも(性被害は)ありましたよ。たくさん」とコメント。

続けて、ある監督に食事に誘われ旅館に足を運んだ際、無理やり性行為を強要されて激しく抵抗したと明かした。

抵抗の末「そんなに嫌か?」と聞かれ「嫌です。決まってんじゃない」と答えると「じゃあ帰っていい」と言われたと番組内で語った。

23年の禁固刑

芸能界の性加害・被害は海外でも見られる。世界的シンガーのレディーガガは性的暴行を過去に受け、加害者の子どもを妊娠したと、ドキュメンタリー番組〈The Me You Can’t See〉で告白している。

韓国のボーイズグループOMEGA X(オメガエックス)のメンバーも事務所代表の女性からパワハラやセクハラに遭ったと2022年(令和4年)11月に記者会見で証言。ジャニー喜多川の一件同様、男性でも性被害者となるケースは珍しくない。

2010年代中盤から後半にかけて発覚した、大物映画プロデューサーのハーヴェイワインスタインによる性加害も世界的に注目された。

「ワインスタインから被害を受けた」として複数の女優が実名で次々と告発。「#MeToo」という一大ムーブメントにまで発展し、芸能界での性被害をカミングアウトする被害者が世界各国で続出した。

ワインスタイン被告は、80人以上の女性に対するセクハラおよびレイプで告発、ならびに起訴され、ニューヨーク州の裁判所で2020年(令和2年)、23年の禁固刑(実刑判決)を言い渡された。

2023年(令和5年)2月にはあらためて、レイプ、および性的暴行の罪状で禁錮16年の刑が追加で言い渡された。同被告は、自身の行為の違法性を否定し無罪を主張している。

「レイプ(同意のないセックス)をされた」(11%)

⼀般社団法⼈⽇本芸能従事者協会が2022年(令和4年)に発表した、芸能従事者らを対象とする〈芸能・芸術・メディア業界の ハラスメント実態調査アンケート2022〉で「セクシャルハラスメント」(73.5%)を見聞きした芸能従事者は7割以上に達すると分かった。

具体的には、

「性経験/性生活の質問・卑猥(ひわい)な話や冗談」(50.6%)
「食事や交際をしつこく求められた」(28.8%)
「レイプ(同意のないセックス)をされた」(11%)

といずれも高い割合だった。 

しかし、ジャニーズ性加害問題で沈黙してきたマスコミ業界の性加害問題も国内外で表面化している。芸能界だけではなくマスコミ業界も変わらければいけない。

※ 労働問題に詳しい弁護士が所属する日本労働弁護団が、芸能界でのハラスメントなどが相談できる〈芸能界ハラスメントホットライン〉を期間限定で開設しています。被害者を泣き寝入りさせないための相談は電話やLINEで。今月28日まで受け付け。

[取材・文/望月悠木]

[参考]

芸能・芸術・メディア業界の ハラスメント実態調査アンケート2022

SION PRODCTION

米LA裁判所、ハーベイ・ワインスタイン被告に禁錮16年 性的暴行の罪で – CNN

芸能界における性加害やハラスメントの撲滅に向けた声明 – 日本労働弁護団

フリーライター。主に政治経済、社会問題に関する記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている
Twitter:@mochizukiyuuki

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