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自殺、孤独死…「事故物件サイト」の若手社員が語るリアル

ビジネス

 年間の自殺者は約2万人。推定の年間孤独死者数は2.7万人。世界有数の自殺・孤独死大国である日本で日々生まれているのが「事故物件」だ。

 怪談やオカルトの定番である事故物件は、強烈なマイナスイメージが先行するゆえに不動産賃貸や売買において、オーナー・客・不動産業者のそれぞれにとって扱いに困る代物だった。

マンション 物件

※画像はイメージです

 そんな現状を打破すべく、横浜の不動産会社NIKKEI MARKSが運営する事故物件専門の紹介サイト「成仏不動産」が2019年4月にオープン。たった2か月で取り扱い物件数を約4倍に増やすなど勢いに乗っており、7月にホームページをリニューアルした。

 その成仏不動産の運営を担当しているのが、事故物件の売買仲介業務からリフォーム相談、特殊清掃業者の紹介まで行う佐藤祐貴さん(31)とサイト管理全般を担う有馬まどかさん(27)だ。「死者の体液が残る清掃前の物件にも直接足を運ぶこともある」と語る2人に事故物件のリアルと未来について伺った。

取り扱い事故物件の約7割が孤独死

――事故物件専門サイト「成仏不動産」はかなり話題になっているようですね。

佐藤祐貴さん(以下、佐藤):オープン当初の取り扱い物件数は、1都3県で賃貸と売買物件を合わせて30件ほどでしたが、現在(9月5日時点)では1都5県の合計119件まで増えており、お問い合わせも増えています。その約7割は前居者が孤独死・自然死した物件で、残りのほとんどが自殺という内訳になります。

――巷では「孤独死は事故物件ではない」という意見も聞かれます。

佐藤:正直、事故物件に明確な基準はありません。そもそも、怪談などの影響もあり「事故物件=死」のイメージが強いですが、物件の近くに暴力団の事務所があったり、過去に浸水した経験がある物件なども「事故物件」とされることも少なくありません。

 また、孤独死や自然死が発生した物件でも、オーナーさんや不動産会社によって扱いは異なります。事故物件は「心理的瑕疵(かし)物件」として告知する必要がありますが、それも判例に則ったもので法律で義務付けられているわけではありません。例えば、孤独死された遺体の発見が遅れて腐敗臭などが近隣住民から寄せられた場合の多くは事故物件になり、それ相応の対応が必要になりますが、早期発見できたケースではそのまま市場に流通することもあります。このようになにをもって「事故物件」とするかは状況によりますね。

オーナーによって事故物件の反応は様々

事故物件

佐藤祐貴さん

佐藤:事故が発生したオーナーさんによっても反応が様々で、事故物件として売り出す人もいれば、建物そのもののイメージ低下を恐れてほとぼりが冷めるまで部屋の募集を停止する人もいます。ただ、最近はSNSを使って簡単に情報が拡散されてしまうので、秘密にし続けることは難しくなりつつあるのではないかと思います。

 お客様の目線に立って考えると「安くて良い物件だ」と思った後から事故物件だと知ることほど、精神的に疲弊してしまうことはないと思います。

――物件の価格帯や条件などの傾向はありますか?

有馬まどか(以下、有馬):当サイトでは土地、戸建て、マンションの分譲・賃貸物件を扱っています。孤独死や自然死だと相場の1~3割。前居者が自殺したり、事件性がある物件は5割以上も割引することがあります。ですので「とにかく安い物件を」という方には、自殺や事件が発生した物件のご紹介が多いですね。もちろん、事故内容はしっかりお伝えしています。

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