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大量閉店から復活した「ミスタードーナツ」。消費者を味方につけた“仕掛け”とは

ビジネス

飲食店のあるべき姿へと立ち返る

 このような取り組みは、簡単なように見えて極めて難易度が高いものです。開発工程では共同開発担当者とミーティングを重ね、イメージしている試作品づくりを進めなければなりません。試作品ができた後は1000店舗での提供に耐えられる生産体制を築く必要があります。

 既存の材料が使えないために、場合によっては新たな仕入先を開拓する必要もあります。原価率が上がらないよう計算し、迅速に店舗で提供できるようオペレーションも組まなければなりません。構築し終わった生産体制や、既存のオペレーションをベースとして監修者を入れた商品開発とは大きな差があります

 ミスタードーナツの商品は数十年前から姿かたちが変わらないものがあります。リピーターを獲得するという側面で定番商品は必要ですが、ターゲットとなる若年層を集めようとした場合、集客フックとなる仕掛けが重要。

 ミスタードーナツは時代に合わせた商品を提供しようという、外食チェーンのあるべき姿に戻った印象を受けます。それが消費者から高評価を得たのでしょう。

2度にわたる値上げはどちらに転ぶか

値上げ

画像はイメージです

 ミスタードーナツで見逃せないのが、段階的な値上げを実施している点。2022年3月にドーナツ、パイ、マフィンを対象に10円程度の値上げを行いました。さらに2022年11月25日にも今年2回目の値上げを実施。10円から20円引き上げました。

 小麦粉や輸送量、円安による原材料価格の高騰で、一部商品の値上げは仕方のないものになりました。マクドナルドや牛丼チェーンなどのファーストフード店は軒並み値上げに踏み切っているため、消費者の理解を得やすいタイミングだと言えます。

 マクドナルドは値上げが奏功し、収益性を高めています。しかし、スシローは値上げが客離れを引き起こしました。出店攻勢に方向転換したミスタードーナツの値上げが、集客にどのような影響を与えるのか注目のポイントです

<TEXT/中小企業コンサルタント フジモトヨシミチ 編集/ヤナカリュウイチ(@ia_tqw)>

外食、小売り、ホテル業界を中心に取材を重ねてきた元経営情報誌記者。現在はコンサルタントという名の中小企業経営者のサンドバッグ役を務めるかたわら、経済の面白さを広く伝えるため、開示情報を分析した記事を書いている。好きな言葉は美食家・北大路魯山人の「硬め、麺少なめ、ニンニクマシマシ」

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