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上場企業に潜む経営リスク…「老舗ベンチャーキャピタル」の泥沼対決が示唆するもの

ビジネス

 国内の老舗ベンチャーキャピタル、ジャフコグループと旧村上ファンドの対決が終焉を迎えました。ジャフコが実施する自社株買いに旧村上ファンド系の「シティインデックスイレブンス」が応じたのです。それに合わせて1月25日に買収防衛策を廃止しました。

 ジャフコの買付価格は2500円。旧村上ファンド側は合計960万株余りを売却しました。売却額は240億円以上です。

ジャフコ

画像は「ジャフコグループ」公式サイトより

 シティインデックスイレブンスが、ジャフコ株を仕込み始めた2022年6月の株価は1200円台。その後、株価はアクティビストの動向に注目が集まって上昇していました。1株平均1600円で買い進めていたと仮定すると、差益は87億円に上ります。大成功と言えるでしょう。

過半数を取得すると脅しをかけた村上氏

 時系列で振り返ってみましょう。そもそもジャフコがアクティビストに狙われていることを明らかにしたのは2022年8月15日、村上世彰氏が大株主のシティインデックスイレブンスが、村上氏の実子である野村絢氏などとともに市場から株式を買い集め、15%弱を保有するに至っていると発表したのです

 旧村上ファンドは「さらに株式を買い集めて51%を取得する」と脅しをかけました。過半数を取得した場合、取締役の選任ができるなど実質的に会社を支配することができます。

 ジャフコはこれに猛反発し、新株予約権の無償割当てによる買収防衛策を導入します。新株予約権の発行は、典型的な買収防衛策のひとつ。権利を行使するとアクティビストの持株比率が低下して支配力を失います。

ジャフコは「財務体質が極めて良好」

ジャフコ

ジャフコの株価 ※決算説明資料より

 しかし、ジャフコは2022年11月ごろから態度を軟化。旧村上ファンド側との対話を重ね、提案内容が経営方針と合致したというのです。ジャフコは日本を代表するベンチャーキャピタルのひとつであり、スタートアップの企業価値向上を生業とする会社ですが、アクティビストに半ば脅され、提案を渋々受け入れるというお粗末な結果となりました

 ジャフコはもともと野村ホールディングスの持分法適用会社でした。野村総合研究所とともに持ち合い化を進めて関係を深めていました。が、2018年3月にジャフコが野村と野村総合研究所の持株をすべて取得。持ち合いは解消されます。

 ただし、ジャフコは野村総合研究所の株式を継続的に保有していました。2022年3月末の段階で2万4000株を保有しており、評価額は691億円にも上っていました。また、ジャフコは財務体質が極めて良好で、2022年3月末の自己資本比率は84.7%。規模は異なるものの、同業の「日本アジア投資」の38.4%と比較すると著しく高いのがわかります

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