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テレワークで消滅危機も…「はんこ屋さん21」が独自経営で好調なワケ

ビジネス

仕事が集まるような仕組みになっている

契約書と印鑑

 そして、はんこ屋さん21をスイッチング・コストと情報的資源という視点から見ると、判子販売以外での儲けの理由も説明がつく。たとえば、はんこ屋さん21は名刺や年賀状なども扱っている。

 これらもまたスイッチング・コストが発生するし、情報的資源が役立つ商品である。名刺は一度入校すれば何度も再利用できるし、年賀状も宛先はそうそう大きな変化はない。そして、顧客からすれば名刺や年賀状を新しい業者に依頼するのは手間である。そのため、判子も名刺も年賀状も……というようにはんこ屋さん21に仕事が集まるのである。

 すなわち特性が効く製品を取り扱っているために、後から同じ業態を取った企業が現れても「顧客が逃げにくい」のである。

 そのためライバル企業からすると、はんこ屋さん21から顧客を奪い取るのに非常な労力を必要とする上に、その結果得られるのが、全国に300店舗を展開したとしても、16億円ほどの比較的小さな市場であることから、積極的に戦略を模倣する対象になりづらい

 はんこ屋さん21は、フランチャイズ形態の導入そのものと、フランチャイズ形態を他社に真似されにくくする製品特性との両者によって、判子業界のガリバーとなったと考えられるのである。

<TEXT/明治学院大学経済学部専任講師・経営学者 岩尾俊兵>

慶應義塾大学商学部准教授。平成元年佐賀県生まれ、東京大学大学院経済学研究科マネジメント専攻博士課程修了、東京大学史上初の博士(経営学)を授与され、2021年より現職。第37回組織学会高宮賞著書部門、第22回日本生産管理学会賞理論書部門、第36回組織学会高宮賞論文部門受賞。近刊に『日本“式”経営の逆襲』(日本経済新聞出版) Twitter:@iwaoshumpei

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