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「日本の自動車産業は終わる」説は本当か?家電メーカーとの決定的な違いが

ビジネス

 日本の自動車産業は終わる、という主張を耳にする。きっかけは、2021年1月に発表された日本電産株式会社決算説明資料。

 そこには「自動車のエレクトロニクス化が“モジュラー化”を引き起こす」という内容が含まれていた。モジュラー化により、自動車が「誰でも簡単に組み立てられる製品」になるというのだ。

自動車

画像はイメージです

 なぜ、これがきっかけで日本の自動車産業は“オワコン”になってしまうのだろうか? この問題に詳しい慶應義塾大学商学部専任講師岩尾俊兵氏に語ってもらった(以下、岩尾氏寄稿)。

モジュラー化したパソコンは価格競争の波に

 現在では「日本の自動車産業は、モジュラー化によって、近い未来に家電業界と同じく苦境に立たされる」という悲観論さえきかれるようになった。たしかに、自動車が誰でも組み立てられる製品になってしまえば、製品新規参入が増加し、価格競争が激しくなるだろう

 実際に、パソコンなどエレクトロニクス製品の多くが2000年代を通じて急速にモジュラー化し、世界中で価格競争が繰り広げられた。その結果、日本のエレクトロニクス産業が苦境におちいったのは、衆目の一致するところだ。

 だが、自動車産業に関する議論には、インテグラル化とモジュラー化の理論を正しく理解していない暴論が目立つ。冷静に考えれば、自動車は「たとえエレクトロニクス化が進んでも」そう簡単にはモジュラー化しないことがわかる。

 つまり「日本の自動車産業が終わる」という議論の多くは、モジュラー化という言葉に踊らされており、間違いだ。だからこそ、暴論に振り回されないように、モジュラー化とその反対のインテグラル化についてきちんと理解する必要があるだろう

パソコンと自動車の「作りの違い」は?

概念図

【図1】モジュラー化・インテグラル化の概念図(藤本隆宏『日本のもの造り哲学』(日本経済新聞出版)等の議論をもとに筆者作成、以下同じ)

 以後、少々専門的な話に踏み込むが、図表を眺めながら最後まで読んでいただければ多くの方にとってそう難しくはないはずだ。モジュラー化とは、部品と機能との関係が一対一対応の「モジュラー型製品」に近づくこと指す。反対に、部品と機能とが多対多対応の「インテグラル型製品」に近づくことは“インテグラル化”といわれる。図を見れば両者の違いは一目瞭然だろう。

 パソコンの場合、「処理速度」「記憶容量」「操作性」などは「CPU」「記憶装置」「キーボード」などの部品とほぼ一対一対応している。だれしもキーボードを変える、メモリを増設する、外付けハードディスクなどの記憶装置を追加するなどした経験があるだろう。そして、一対一対応だからそこ、素人が多少いじっても問題がおこらない。パソコン以外にも、テレビなど電化製品の多くがこうしたモジュラー製品の性質を持っている。

 一方で、自動車の多くは「乗り心地」「安全性」「燃費」などの機能が「エンジン」「車体(ボディ、ドアなど)」「足回り(サスペンションなど)」といった部品のすべてに関係している。燃費ひとつをとっても、車体が重く足回りがスムーズでないままエンジンだけを改良しても大きな効果は得られない。

 トヨタのボディにホンダのエンジンを載せて、日産の足回り部品で動力をタイヤに伝えるといった改造は基本的にできない(無理矢理こうした改造をおこなっても、動かないか、壊れやすく危険な自動車が出来るだけだ)。

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