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「日本の自動車産業は終わる」説は本当か?家電メーカーとの決定的な違いが

ビジネス

家電業界のような技術革新の兆しはまだない

自動車工場

 メーカーに関係なく好きな車体を買ってきて移動モジュールを取り付ければその日からそれが自動車になる。小型車でもトラックでも好きな形の自動車を誰でも簡単に作れるようになる。ハンドルと移動モジュールが物理的につながる必要もないため、リモコン式操作盤でも円形のハンドルでも操作性を自由に変更できる。

 ここまでモジュラー化が進めば、もはや自動車製造大企業は必要なくなる。自動車は個人でも小規模組織でも組み立てられるようになり、パソコンにおけるインテルと同じように、移動モジュールを生産する巨大プラットフォーマーと、薄利で小規模で多数の車体メーカー、制御プログラムベンダー、操作盤メーカーなどが共存する産業へと変貌するだろう。ただし、こうした技術革新の兆しは今のところきかない。

 だとすれば、自動車業界において「誰でも簡単に組み立てられる製品になる」ほどのモジュラー化はまだ起こる気配がないといえる。そのため、家電業界ほどの競争の激化はまだまだ先のことだろう。

 その意味で、日本の自動車産業が本当に終わるのは、暴論や流言に振り回されて、本当に産業を一新する技術革新の性質と影響を、過小にあるいは過大に見誤るときではないだろうか。

<TEXT/慶應義塾大学商学部専任講師 岩尾俊兵>

慶應義塾大学商学部准教授。平成元年佐賀県生まれ、東京大学大学院経済学研究科マネジメント専攻博士課程修了、東京大学史上初の博士(経営学)を授与され、2021年より現職。第37回組織学会高宮賞著書部門、第22回日本生産管理学会賞理論書部門、第36回組織学会高宮賞論文部門受賞。近刊に『日本“式”経営の逆襲』(日本経済新聞出版) Twitter:@iwaoshumpei

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