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渡辺大も驚いた、明治時代の経営者「“企業の利”以上に哲学を持っていた」

 第一次世界大戦開戦の4年前の1910年。100年以上前の茨城県日立市では、急速な近代化が進むなか、急増する銅の需要に応えるべく日立鉱山が発展を続けていた。しかしその代償として、鉱山が排出する煙が地元の自然環境を破壊し、農作物を次々と枯らせていった。

ある町の高い煙突

『ある町の高い煙突』©2019 Kムーブ

 一時は、一触即発の状態になるも、公害の加害者側の企業と被害者側の住民が手を取り合い、解決策を模索する……。この驚きの実話を映画化した『ある町の高い煙突』が公開中。

 企業の社会的責任という概念もなかったこの時代に、会社の利益よりも住民の命を守ろうとした加屋淳平役を演じた、渡辺大さん(34)に映画の見所や明治時代について話を聞いた。

地元の人々、映画製作者で一緒に作りあげた

――松村克弥監督は、日立市で開催された前作の『サクラ花-桜花最期の特攻-』(2015)の上映会で、地元市民に本作を作ってほしいと頼まれたそうですね。実際に日立製作所も本作の資金を提供したと聞きました。

渡辺大(以下、渡辺):この映画は派手な内容ではないのですが、エキストラとして地元の方々もたくさん出演くださって、地元の方々と一緒に協力して作り上げた作品です。撮影現場でも一緒にご飯を食べたり話をしたりしていました。

 地方を舞台にした作品では、地元の人たちと仲良くなることはよくあることなんです。NHKの撮影所も茨城にあるのでよく行くし、今回も茨城の方々には本当にお世話になりました。

――では、渡辺さんは茨城弁も得意とか?

渡辺:ははは、残念ながら得意じゃないです!僕が演じた加屋淳平は広島出身なので、茨城弁をマスターする必要がなくてよかったとホッとしています(笑)。

加害者と被害者が心を合わせた

渡辺大

渡辺大さん

――脚本を読む以前から、日立銅山のことはご存知でしたか?

渡辺:恥ずかしながら、知りませんでした。NHKのドラマ『足尾から来た女』に出演させていただいたときに足尾銅山については勉強したんですが、日立銅山についてはまったく知らなくて……。

 これまで公害を扱った作品は、公害の惨状から生まれる“悲劇”を描いたものが多いんですが、“利害が相反する者同士が、葛藤や困難を一緒に乗り越えていく”過程を描いているところが、本作の魅力だと思います。

――渡辺さんが演じた加屋淳平は企業・日立鉱山の庶務係として、農民・住民側との交渉役を務めた角弥太郎という実在の人物がモデルです。どんな性格だったのでしょう?

渡辺:とにかく情熱のある人だったと思います。会社のために数字をきちんと追いかけて合理的、効率的に仕事を推し進めながらも、人間的に1本芯が通っているというか。人間ってそうそう冷静に物事を進められませんよね。だからこそ、僕たちは常に“目標”や“理想”を掲げているんですが、彼は理想を追いかけながらも、現実にも誠実に対応していきました。

 僕たちはやっぱり自分の利を優先して、それに反する者をどうしても排除したがるけれど、そういった本能を理性で抑えて、自分の信念にできるだけ近い生き方を選んだのが角弥太郎だったと思います。