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怖いのはファシストよりもポピュリスト。イタリア社会を風刺した映画監督が語る

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 ネットやSNSを通じて、仮想敵を作りあげることで社会に不満を抱える国民の心にアピールする、米トランプ大統領やベルルスコーニ元伊首相を想起させるイタリア映画『帰ってきたムッソリーニ』が公開中です。

 本作のメガホンをとったのは、数々の映画賞に輝くイタリアの大人気映画監督・脚本家であるルカ・ミニエーロ。

ミニエーロ

ルカ・ミニエーロ監督

「もしムッソリーニが現代に戻ってきたら……!?」というコメディでドイツの大ベストセラー小説『帰ってきたヒトラー』のイタリア版だが、単純に笑える物語ではなく、そこにはイタリアが抱える様々な社会的問題、ポピュリズムやマスメディアに対する問題提起が込められている。「ムッソリーニの映画ではなく、今日のイタリアを描きたかった」というミニエーロ監督に直撃した。

不満を持つ人々を煽るプロパガンダ

帰ってきたムッソリーニ

『帰ってきたムッソリーニ』© 2017 INDIANA PRODUCTION S.P.A., 3 MARYS ENTERTAINMENT S.R.L.

――本作はドキュメンタリーとフィクションを融合したと聞きましたが、ムッソリーニがイタリア各地を車で回って市井の人々の意見を聞いていくシーンはドキュメンタリーなのでしょうか?

ルカ・ミニエーロ監督(以下、ミニエーロ監督):ムッソリーニが人々にインタビューをしている部分はほとんどがドキュメンタリーで、市民の本物の声です。映画のラストシーンもドキュメンタリーですが、ファシストのシンボルとして採用されたローマ式敬礼をしている男性だけは俳優。あのローマのポーズはイタリアでは禁じられている敬礼なので、イタリア人にとってあれを映画で見るのはかなりショッキングなはずです。

――「ファシズムは国民の根底にあった」という印象的なセリフが登場し、ムッソリーニが国民の不満の声を汲み取り、彼らに迎合するようなプロパガンダを構築していく様子が描かれています。

ミニエーロ監督:この映画はファシズムを語る物語ではなく、現在イタリア社会が抱えている人種差別や経済危機に対して、イタリア人自身がどんな姿勢で臨んでいるかを語ったものです。ムッソリーニは、ファシズムの理想を信じていたわけではなく、独裁者としてイタリアに、そして世界に君臨したかった。そのために、彼は国民の不満のはけ口としてファシズムを使い、国民に取り入った。彼は本質的にはポピュリストだったんです。

70年前のことが700年前に起こったかのように

帰ってきたムッソリーニ

――つまり、本作はファシズムよりもポピュリズムに対して警告しているのでしょうか?

ミニエーロ監督:そうです。イタリアが抱えている様々な社会的問題を描くために、ファシズムを切り口としてこの映画を作りました。

 70年前、イタリア人はムッソリーニとファシズムを応援し、その結果、イタリアは自国民だけではなく、他国の人々にも様々な悪行を働きました。それなのに、もうそのことは忘却の彼方に消え去っています。まるで700年前に起こったかのように……。

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