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“毒親”と衣装で読み解く「エルトン・ジョン」伝記映画監督が語る

 昨年、世界中を席巻した映画『ボヘミアン・ラプソディ』(2018)。伝説のロックバンド、クイーンの全盛期を知る世代のみならず、クイーンを知らぬ老若男女を興奮の渦に巻き込んだ傑作の最終監督を務めたデクスター・フレッチャーが、今度はエルトン・ジョンの半生をミュージカル・ファンタジーとして作り上げた映画『ロケットマン』が8月23日に日本に上陸する。

ロケットマン

『ロケットマン』 ©2018Paramount Pictures. All rights reserved.

 今年のカンヌ国際映画祭でも長いスタンディング・オベーションを巻き起こした超話題作だが、『ボヘミアン・ラプソディ』のような伝記的音楽映画ではない。エルトン・ジョンを演じたタロン・エジャトンは吹き替えなしで全曲を独自の表現で見事に歌い上げた点、エルトンの回想シーンから始まるユニークな構成、登場人物への深い洞察力と高い物語性などが、一般的な伝記モノや音楽モノとは一線を画す新たなレベルの傑作だ。プレミアで来日したデクスター・フレッチャー監督に本作の魅力を聞いてみた。

カンヌでは10分のスタンディング・オベーション

――カンヌ国際映画祭で本作がプレミア上映されたときは、タロン・エジャトンが歌うシーンで観客が拍手を送るなど、応援上映のように盛り上がったと聞きました。映画が終わった後は観客が総立ち、拍手がやまなかったそうですね。

デクスター・フレッチャー監督(以下、フレッチャー監督):映画、よかったでしょ(笑)? 金曜日に映画が仕上がって自分でもゆっくり観直す暇がないまま、翌週の木曜日にカンヌで上映したんです。

 バーニー・トーピン(エルトン・ジョンの曲を作詞する音楽パートナーで、映画にも彼のキャラクターが登場する)から、プロデューサーのアダム・ボーリングやマシュー・ヴォーンと彼らの妻たち、エルトン・ジョンやタロン、それから僕の妻まで、あのときに全員初めて映画の完成版を観たから「やっとできた! とうとう作り上げた!」と、みんなが興奮と幸福感に包まれていましたね。

 とにかくカンヌという世界最大の映画祭で10分間ものスタンディング・オベーションのなか、エルトンとタロンが抱き合い挨拶してみんなに祝福されるなんて、最高じゃないですか!? しかもビーチの側で(笑)。

映画のシーンとリンクしたエルトンの名曲

ロケットマン

デクスター・フレッチャー監督

――世の一般的な伝記映画とも、ミュージカル映画とも違い、エルトン・ジョンの回想シーンから始まり、彼の人物像を探っていくというアプローチが非常にユニークでした。しかも、映画のシーンと曲の歌詞がぴったりとリンクしていたことにも驚いたのですが。

フレッチャー監督:いくつかの曲は、すでに脚本に書かれてあったんですが、この物語を実際にどのように語るべきだろうかと考えていく過程で、シーンを加えたり修正したり、構成を変えたりして、結果的に脚本にあった曲をかなり変更しました。

 例えば、映画の冒頭で使用することになっていた曲は、エルトンが歌った「ピンボールの魔術師」だったんですが、これは実はザ・フーのオリジナルでエルトンのカバー。もちろん、エルトンのカバーも素晴らしいけれど、彼自身が作り上げていない曲を、“自分探し中のエルトン”を描くシーンに使うのは、なにか違うでしょう?