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渡辺大も驚いた、明治時代の経営者「“企業の利”以上に哲学を持っていた」

暮らし

煙突を眺めながら毎日、現場へ通っていた

渡辺大

――いまでも煙突は地元の人たちにとってシンボルなのでしょうか?

渡辺:僕が泊まっていたホテルがちょうど日立市の駅にあったんですが、そこから竜神大吊橋のさらに先へ進み、1時間ほど山を抜けた場所が撮影現場だったんですね。その途中に「むかで煙道」なんかも見えるんです。

 それを眺めて、「おはようございます」なんて心のなかで挨拶しながら、毎日現場へ通っていました(笑)。僕らの世代にもなると、煙突は取り壊されてもう見かけませんよね。だからあの煙突は、地元の人にとっても感慨深いんじゃないでしょうか。

目標や計画は、ときには忘れたほうがよい

――この作品から観客になにを感じてほしいですか?

渡辺:今の時代は数年先が簡単に見えてしまう。だから、僕たちは信念とか情熱ではなく、現実的で打算的すぎる目標を立ててしまいがちです。でもときには、そういった目標や計画を一切捨てて、自分の心にある“熱いモノ”で、生きてみるのもよいのでは? グローバル時代のいま、日本人はどこへ向かったらよいのか、欧米の合理的な利益追求型を追うだけでよいのかーー。そんなことも本作を観て、考えてもらえたら嬉しいですね。

――渡辺さんは映画を作るほうにも興味があるとお聞きしました。

渡辺:役者の仕事って終わりがないので、とにかく、日々よいものを作ることだけを考えて仕事をしています。演じるという仕事はある程度出来上がった“枠”のなかに自分をはめて行く作業なので、この枠をどんなふうに作っていくのかな、という点に少し興味があるんです。

 プロデューサーや監督になりたいかどうかはまだ分からないですが、その部分を学べば、役者の仕事ももっとおもしろくなると思いますしね。エンターテイメント性が高いのに、ちょっと考えさせられる……少し毒の入った題材や、誰かの人生に残るような作品にこれからも関っていきたいです。

<取材・文/此花さくや 撮影/林紘輝>

映画ライター。NYのファッション工科大学(FIT)を卒業後、シャネルや資生堂アメリカのマーケティング部勤務を経てライターに。ジェンダーやファッションから映画を読み解くのが好き。手がけた取材にジャスティン・ビーバー、ライアン・ゴズリング、ヒュー・ジャックマン、デイミアン・チャゼル監督、ギレルモ・デル・トロ監督、ガス・ヴァン・サント監督など多数Twitter:@sakuya_kono、Instagram:@wakakonohana

【公開情報】
ある町の高い煙突』は公開中
©2019 Kムーブ

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