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昭和の時代「日本中から100円玉が消えた」説があった!?その象徴「スペースインベーダー」の秘密に迫る

コラム, 暮らし

1970年代後半、日本にはまだ家庭用や個人で楽しめる電子ゲームコンテンツがまだ極めて乏しかったが、喫茶店に置かれたテーブル型の筐体で遊ぶアーケードゲームが人気爆発となり、もはや社会現象と言って良い状況だった。「喫茶店のテーブル筐体の人気の影響で日本から100円玉が消えた」という都市伝説が生まれたほどで、特に若い世代への影響力が絶大だった。

今から45年ほど前の日本は、喫茶店のテーブルで遊ぶゲームが爆発的なブームを巻き起こしていた

そのテーブル筐体の象徴とも言えるコンテンツが、45年前の1978年に誕生した「スペースインベーダー」である。

「スペースインベーダー」を楽しむ当時の若者の様子(タイトー公式サイトより)

「シューティングゲームの先駆け」として知られ、今も伝説として語り継がれており、若い世代でも「テレビゲームでやったことがある」「スマホでやったことがある」「遊んだことはないが知っている」「親がやっていたらしい」と言った認識を持つ人は多いことだろう。

今回は、その「スペースインベーダー」の概要・変遷について迫りながら、そして、これに合わせて、往年のビデオゲームを再現した「遊べる貯金箱 スペースインベーダー」の発売元・タカラトミーアーツの開発担当者にも合わせて話を聞いた。

「テーブル筐体」とは!?

若い世代の大半が遊んだ経験がなく、さらには見たこともないであろう、テーブル筐体。これは喫茶店文化が今以上に根付いていた1970年代後半に、各喫茶店に導入されたものだった。

一般的なテーブルと同じサイズで、天板をめくるとモニター(ブラウン管)やゲーム基板が収納されているゲーム一体型のテーブルだった。つまり、客はこのテーブル筐体の上でコーヒーやドリンクを飲み、連れ客と談笑したり、ゲームを楽しんでいたのである。

そのテーブル筐体の普及を一気に加速させたのが、1978年に誕生した「スペースインベーダー」だ。プレイヤーの自機は画面下にある砲台で、この砲台からミサイルを撃ち出し、画面上方に陣形を組んで構えるインベーダーを撃ち落としていく。すべての敵をクリアすると次のステージに進むことができるが、敵の攻撃を受け手持ちの砲台を失ったり、インベーダーに陣地への侵略を許すとゲームオーバーとなるる。

こういったシンプルながらもハラハラさせられるゲーム性で人気を博し、発売当初は白黒モニターだったものの、のちにカラー化した頃より爆発的なブームとなった。

白黒だった頃の「スペースインベーダー」(タイトー公式サイトより)

カラー化された「スペースインベーダー」。この頃より爆発的なブームとなった(タイトー公式サイトより)

当初、テーブル筐体は、「喫茶店のテーブル」として多く採用されたものの、その人気はさらに飛躍。「インベーダーハウス」という独立したゲームセンターが各地にオープンした。これは今日まで続くゲームセンターの礎にもなった。

テーブル筐体を6分の1にして再現した商品が登場

その後、今日に至るまで「スペースインベーダー」は家庭用ゲーム機、携帯電話、スマートフォン向けゲームとして親しまれ続け、さらに近年では、プロジェクションマッピングコンテンツとして、テーマパークなどでも稼働。今夏にはリアル空間で3Dインベーダーと戦う新作ゲームが、AR対応アプリとして登場するなど、人気は衰えるところを知らない。

そんな中、玩具メーカーのタカラトミーアーツでは、最初期に登場した「スペースインベーダー」テーブル筐体を約6分の1にして再現した商品を開発。これが冒頭で少し触れた「遊べる貯金箱 スペースインベーダー」というものだ。

タカラトミーアーツが開発した「遊べる貯金箱 スペースインベーダー」(2024年1月発売予定)

遊び方は、できる限り当時を再現しているという

小型ながらも100円玉を入れると、実際に「スペースインベーダー」を楽しめるもので、特に往年のブーム時にユーザーの間で広まった裏ワザなども使えるよう細部にもこだわっているという。

「ゲーム自体もオリジナルに近づけたい」と開発担当者

「遊べる貯金箱 スペースインベーダー」の画面

「遊べる貯金箱 スペースインベーダー」の開発を担当した村田素子さんはこう話す。

「実機の約6分の1という小型サイズでありながら、細部の再現にもこだわりました。また、ソフトの再現にももちろんこだわり、来年1月の発売予定を前に、タイトー様の監修を受けながら今も開発を重ね、できる限りオリジナルに近づける努力を続けています」(タカラトミーアーツ・村田さん)

細部にまでオリジナルにこだわるのには理由があるという。それは以前、「遊べる貯金箱 スペースインベーダー」のプロトタイプをおもちゃショーに実機と合わせて出品したところ、かつて遊んでいた世代からの大きな反響があったからである。

「おもちゃショーでは、かつて遊んでいた世代の方々がこぞって目を輝かせながらプレイされていました。また、そういった方々から、当時の思い出をたくさんうかがう機会にも恵まれ、改めて『スペースインベーダー』とテーブル筐体は、あの時代を知る多くの人たちにとって特別なゲームであることを感じました。

このときは『遊べる貯金箱 スペースインベーダー』はまだプロトタイプではありましたが、『きちんと遊べることがすごい』『遊び心地を思い出した』といったお褒めの声もいただき、こういったアツい思いをお受けしていますので、できる限りオリジナルに近づけたいと考えています」(タカラトミーアーツ・村田さん)

当時と違うのは、100円玉が消えることなく貯まっていくところ

結果、来年1月の発売を前にして事前予約を開始したところ、当初の予定を上回るペースで注文が入っているという。

実際に100円玉を入れて遊ぼう!

「ありがたいことですが、それだけあの時代を席巻した『スペースインベーダー』とテーブル筐体がすごかったということでもあります。

『遊べる貯金箱 スペースインベーダー』は、あのゲームの感覚を呼び戻し、100円玉を入れながら家で気軽に遊ぶことができる商品です。当時を知る人はもちろん、若い世代の方にもぜひ手に取っていただければ嬉しいですね」(タカラトミーアーツ・村田さん)

かつての大ブームの際は「喫茶店の電子ゲームの人気の影響で日本から100円玉が消えた」という都市伝説も生まれたが、『遊べる貯金箱 スペースインベーダー』は「貯金箱」なので100円が消えることはなく、どんどん貯まっていくのも楽しい。特別なゲームファンならずとも手に取ってほしいと思う。

<取材・文/松田義人>

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遊べる貯金箱 スペースインベーダー
https://e.takaratomy-arts.co.jp/shop/g/g4904790751158/
 

音楽事務所、出版社勤務などを経て2001年よりフリーランス。2003年に編集プロダクション・decoを設立。出版物(雑誌・書籍)、WEBメディアなど多くの媒体の編集・執筆にたずさわる。エンタメ、音楽、カルチャー、 乗り物、飲食、料理、企業・商品の変遷、台湾などに詳しい。台湾に関する著書に『パワースポット・オブ・台湾』(玄光社)、 『台北以外の台湾ガイド』(亜紀書房)、『台湾迷路案内』(オークラ出版)などがある

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