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Aマッソはなぜ「差別ネタ」で炎上したか?取材時に感じたネタの危うさ

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 お笑い芸人コンビ・Aマッソの人種差別的な発言が、イギリスBBCでも報じられるなど波紋を広げている。問題が起きたのは、9月22日に都内で行われたイベント内でのこと。漫才のなかで「大坂なおみに必要なものは?」「漂白剤。あの人日焼けしすぎやろ!」というかけ合いがあったという。

Aマッソ

※画像はワタナベエンターテインメント公式サイトより

 メディアの報道を受け、Aマッソの加納愛子さんは「笑いと履き違えた、最低な発言であったと今更ながら後悔しています」、村上愛さんは「考えればわかるはずなのに多くの人を傷つける発言をしてしまいました」と、それぞれ直筆で反省コメントを発表。

 2人が所属するワタナベエンターテインメントも、大坂なおみ選手が籍を置く事務所に直接謝罪したことを明らかにしている。

 たしかに際どい言動も多かった彼女たちだが、“差別”そのものを面白がるコンビではないと私は今でも信じている。とはいえ、差別問題に無知なまま、センシティブな問題に踏み込んでしまったことは事実だ。今後、そのほかの芸人が2度と同じ間違いを犯さないためにも、過去に支持された“差別ネタ”と比較して今回の問題を考えてみたい。

過去にも波紋を呼んだネタづくり

 比較の前に、まずはAマッソの差別ネタが意図的だったのかどうかについて触れておく。私が当サイト「bizSPA!」で行ったインタビュー(2019年8月5、6日配信)の際に、彼女たちの自己否定とも言える「進路」というコントに「どんな意図があったのか?」と質問を投げかけたことがある。

 そのネタは、ラーメン屋になりたいという女子生徒(村上さん)の夢を応援しつつも、「女がつくったラーメンは食べられへん」という先生(加納さん)の執拗なまでの“女性否定”が暴走していく。そのなかで「Aマッソって知ってるか?」「ああいう女芸人が一番嫌いや」「結局、男のマネゴトに過ぎない」というフレーズが放たれるため、その真意がすごく気になったのだ。

 この問いに、ネタづくりを担当する加納さんは「女芸人がどうというよりは、自分たちのなかで“メタ”を何個挿し込めるかなって」「ふざけてつくったんで、こんなに(尖ってると)言われるとは思ってなかった」と答えている。つまり、深い意味はなく、コントを面白くするうえでの“素材”として、女性芸人である自分たちを扱っただけだった。

 Aマッソは女性らしさを売りにしないコンビとして同性からも支持される傾向が強い。見ているこちらは、そういった層に対するアンチテーゼなのかと深読みしてしまったのだが、まったくそんな意図はなかった。つまり、本人たちの思いとは裏腹に、このネタでも余計なノイズが走っていたことになる。

 今回、問題となった“漂白剤ネタ”の文脈は不明だが、恐らく「質問に対して薬局にあるもので答える」という大喜利的なシステムから漫才をつくりはじめ、“漂白剤”がしっくり来ると考えたのだろう。しかし、その対象は血の通った人間だ。扱う素材からではなく、システムからネタを考えたことで、このような事故が起きたと想像される。

差別ネタが支持されたテレビ番組とツービート

空飛ぶモンティ・パイソン

『空飛ぶモンティ・パイソン Vol.1』(ソニー・ピクチャーズエンタテインメント)

 とはいえ、過激な差別ネタが支持されていた時代はある。1970年代~80年代、とくにイギリスと日本のテレビ番組で最盛期を迎えたようだ。

 代表的な番組にイギリスBBC『空飛ぶモンティ・パイソン』がある。1969年から1983年にかけて放送され、さまざまなブラックジョークで人気を博した。なかでも『偏見ショー』というコーナーは「シリア人のいじめ方」「ベルギー人の上手ないびり方」「憎むべきホモセクシャル」など、人種差別や性差別ネタを集めて“弱い者いじめを楽しむ”というストレートな内容だった。

 一見すると、ただの差別だ。しかし、ここには大英帝国と呼ばれ世界中に植民地を作り、その後の旧植民地・南アフリカのアパルトヘイト(人種隔離)政策を生んだイギリスの内なる差別意識への風刺が込められている。自国の犯した過去の間違いをコメディアンが皮肉るという、メタ構造があるからこそ視聴者の心を掴んだのだ。

 日本では、1980年代の漫才ブームでブレイクしたお笑い芸人コンビ・ツービートがテレビで差別ネタを披露している。若い世代は想像もできないだろうが、当時、ボケのビートたけし(北野武)さんは、たたみかけるような猛烈な毒舌で支持を集めた。

「赤信号みんなで渡れば怖くない」のフレーズで有名な交通標語ネタの中盤には、「田舎者」を差別する言葉が次々と飛び出す。相方のビートきよしさんの出身地・山形県をからかうように「(相方は)東京に出て来てはじめて人を見た」「お父っつぁんは去年まで人食い人種だった」「飛行機が飛んでると、みんな出て来ておがむ」といったボケを連発して爆笑を呼んだ。

 バブル時代、東京と地方都市には、あこがれも含めて大きな落差があった。ツービートは、過剰ではあるが、ある意味で時代の空気を描写した代弁者とも言える。だからこそ、差別ネタが受け入れられたのだろう。

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