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「マインドフル」を米国人は、どんな意味で使っているか

コラム

 最近、カタカナで「マインドフル」や「マインドフルネス」と耳にするようになりました。「今、この瞬間を大切にする」とか「今起きている経験に注意を向ける」などというふうに解説されています。セラピーや瞑想の世界では非常によく使われている言葉であり、日本でもここ数年、盛んに使われるようになりました。

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【第87回】マインドフル

 しかしMindfulという単語はもっと一般的な会話でも使うことができます。一番よく使われるのは、「気を払う」という意味。「マインドフル」も「今この瞬間に気を払う」という意味ですから、つながりは明らかです。他にも「留意する」とか「心がける」という訳し方もあります。

 例えばI want to be mindful of your time.という表現は、丸暗記してしまってもいいでしょう。Zoomなどでの会議が続く中、どうしてもダラダラと終わりがはっきりしないで会議が続くことがあります。そんな時に、会議終了時間が近づいてきたらI want to be mindful of your time.と言って、会議のまとめに入ると良いでしょう。

「皆さんの時間を気をつけたいと思います」が直訳ですから、「皆さんの時間を無駄にしないためにも」という意味。「話したいことはまだありますが、皆さんの時間が大切」というニュアンスも含まれるので、会議を途中で打ち切るというマイナスのニュアンスを避けることができます。

「心がけ」という意味で使うことも

精神

※イメージです

 似た文章で、We must be mindful of our carbon footprint.というのもあります。Carbon footprintとは直訳すれば「炭素の足跡」。「二酸化炭素排出量」と訳されることも多いです。ものを買ったり、使ったり、捨てたりするとその製品やサービスの背景にいろいろな資源が使われています。そんな資源のことを指します。

 企業であれば、製品やサービスを提供するために使う自然資源があるでしょう。個人的な旅行であっても、飛行機に乗ればCarbon footprintが生まれます。飛行機の燃料であったり、お弁当のプラスチック容器であったり。自分がどれくらいの二酸化炭素の排出に関わっているのか、環境を大切にするために意識をしましょう、というのがWe must be mindful of our carbon footprint.です。

 Mindful ofはこのように「心がけ」という意味でよく使われます。Mindful of othersであれば「他人のことを気にかける」という意味。He is mindful of others.なら、いつも他人のことを思いやる人のことです。She is mindful of her health.なら、健康に気を払う人。適度な運動をして、食べ物にも気を払う人です。また、Be mindful.とだけ言えば、「気をつけて」「心配りは忘れないように」という意味。

 このようにMindは「心」という意味だけで覚えがちですが、使い方はいろいろあります。イギリスの地下鉄では、Mind the gap.という放送もされています。電車とホームの隙間に気をつけてください、という意味です。

<TEXT/同時通訳者 木内裕也>

会議通訳者、ミシガン州立大学研究者。アメリカ大衆文化、アメリカ史の研究を行うほか、国際一流企業、各種国際会議などの通訳を行う。またプロサッカーの審判員としても活躍。著書には『同時通訳者が教える 英語雑談全技術』『耳と口が英語モードになる同時通訳者のシャドーイング』(ともにKADOKAWA)など多数。英語で仕事をする人の応援サイト「ハイキャリア」にも執筆

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