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時差出勤で朝7時出社に。若手営業マンの疲労と、意外なメリット

学び

 新型コロナで注目される「新しい働き方」といえば「テレワーク」と「時差出勤」ではないでしょうか。特にセキュリティや労働環境の整備という点において、テレワークよりもハードルが低い時差出勤の導入を検討する企業は少なくありません。

満員電車

※イメージです(以下同じ)

 ただ、社員の健康に配慮した時差出勤も準備不足、理解不足だと逆効果になるかもしれません。2月中旬に時差出勤を導入したIT企業の社員の林原陽介さん(仮名・28歳)に時差出勤に振り回される日々の様相を聞きました。

社長の鶴の一声で時差出勤を導入

 新宿にあるベンチャーIT企業に勤める林原さんは、自社開発のソフトウェアの営業として約6年間働いています。勤務時間は午前10時~午後7時。朝が弱い林原さんにとってはちょうど良い勤務体系だったといいます。

「午前10時出社はIT業界では珍しくありません。学生の頃から遅刻魔だったので、就活時から出勤時間が遅いIT業界を狙っていました。それでも自宅がある松戸市から新宿までは約50分程度かかるので、午前8時半くらいに起床していました」

 6年間の生活リズムが一変したのは、2020年の2月に入った頃でした。コロナウィルスの話題が大きくなり、業界大手のGMOインターネット株式会社がテレワークを導入したニュースに影響された社長が「時差出勤を試験導入する」と社内ミーティングで発言したのです。

「働き方改革は今、IT業界のトレンドですから。社長も何かしないといけないと考えたのだと思います。当初は私も時差出勤の導入に賛成でした。11時出勤になれば、9時以降に起きればいいと考えていたので」

 しかし、時差出勤はまさかの「出勤前倒し」。しかも、勤務時間は午前7時~午後4時で3時間も早く出社しなければならなくなったのです。起床は午前5時30分で、通常よりも3時間も早く起きなければならなくなりました。2月中旬に導入されてから、取材が行われるまでの約2週間で「通勤が苦痛になってきた」と林原さんは語ります。

連携不足、顧客対応…準備不足が浮き彫り

仕事 サラリーマン

「まず、私は営業なのでお客様あっての仕事です。新規顧客獲得のためのテレアポはできませんし、既存のお客様へとの打ち合わせも結局は朝10時以降になります。付き合いの深いお客様であれば考慮してくれるケースもありますが、終業時間である午後4時以降にアポイントが入ることも珍しくなかったです。

 もちろん、残業です。結局は午後6時に終わって満員電車に乗って直帰……。という本末転倒な結果になってしまったこともあります」

 また、社内の調整も非常に手間がかかるといいます。林原さんは営業リーダーで、3人の若手の営業のマネジメントを任されています。

「訪問した客先でいただいた質問や課題に対する回答などの『宿題』を持ち帰ると、つい残業してしまう人が多いので、基本は午後4時を回ったら直帰するように方針を固めています。夜遅くまで飲んでいたようで、明らかにお酒が抜けていないまま出社した若手も何度か指導しましたね(笑)。

 ほかにもグループ会社の社員に時差出勤の件が共有できておらず、社員が帰社したことを伝えると『貴社は楽でいいですね』と嫌味を言われることも(笑)。このように準備不足を感じた例はたくさんあります。その都度、説明しながら仕事を進めるので効率は良くないですね。精神的な負担も少なくありません」

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