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月額通行料1万円の長崎私道トラブル。不動産のプロの見解は

コラム

 長崎市青山町の私道を所有する不動産業者が住民に対し通行料を請求、一部道路を封鎖したニュースが話題となっています。

ビジネス

※画像はイメージです

 この問題について、出版した不動産本の売れ行きが好調だという「全国宅地建物取引ツイッタラー協会」(全宅ツイ)に見解を伺いました。

そもそも私道とは

 そもそも、今回問題となっている「私道」とはどういった道路なのか。全宅ツイ所属の不動産鑑定士「rea」(@rea87736817)さんは次のように解説します。

「一般にイメージされる道路は、区道や『市道』など自治体が所有・管理するものが多いと思います。対して『私道』は個人・法人が所有している道路です。特に下町だと、多くの人が密集して暮らしていた経緯からよく見られます」

 普通に生活していると、道路の区分を意識することはありませんが、reaさんによると都内にも多くの私道が点在しており、不動産業界の人はパッと見ただけで、「あ、これは私道の匂いがする」とわかるとのこと。

私道

私道の一例。提供/reaさん

 こうした私道の維持管理は、行政ではなく個人で行われます。

「アスファルトが剥がれた、地下の水道管の調子が悪い、等々のメンテナンスは所有者が負担します。ほかにも私道を通りたい、私道に面した土地に家を建てたい等、関わる他人との関係が多く発生します。一方、私道で収益を得られる例は稀で、“負動産”になりやすいといえます」(reaさん、以下同)

 私道単体では価値を見出しにくく、オーナーの代替わりに伴い“負動産”の問題が顕在化しやすいとされ、今回の長崎の件でも該当します。では、私道をめぐるトラブルのポイントとは。

「まず問題となるのが、通行する権利の有無です。所有者と書面の合意があれば問題ないですが、『昔から通ってるから』みたいなノリの場合が多く、下手すると、『えっ、ここ他人の土地だったん!?』みたいなことすらあります。こうした曖昧な私道は、所有者が亡くなって相続されたり、第三者に譲渡されると問題が起きやすい。このような場合、訴訟で通行する権利の有無が争われ、道路と敷地の配置や過去の経緯、通行できないことによる土地の価値の下落具合等、個別的な事情を加味して判断されます。

 また、通行する権利がある場合でも、通行料を払う必要があるかどうかもポイントです。人様のものを使う以上、通行料は払うべきですが、以前の所有者からは善意で「タダでいいよ」と言われてたのが、代替わりで揉めることがあります」

月1万円の通行料は妥当なのか?

 長崎の私道トラブルでは住民に対して、1世帯につき月額1万円(歩行者のみの場合3000円)の通行料を、所有者は請求しています。この金額設定は妥当なのでしょうか。reaさんは「通行料の水準は千差万別で相場と言えるものはありません」と前置きしたうえで次のように語ります。

「私道に限らず、不動産の賃料・使用料を決める際には色々な考え方があります。所有者の目線に立てば『運営経費を支払った後、ある程度の純利益が欲しい』と考え、そこから逆算して

 純利益 + 運営コスト = 賃料・使用料

 で使用料を決定することになります。ただし、実際に私道で利益を得ている所有者は少なく、実入りがないケースが大半です。せめて運営コストは回収しないと所有者は赤字になってしまうわけです」

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