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土方歳三が敵の刀をバク転で回避?司馬遼太郎の名作コミカライズの“遊び心”とは

暮らし

描いていて特に楽しかったシーンは?

燃えよ剣

©奏ヨシキ、小松エメル、新潮社

――奏さん自身、描いていて特に楽しかったシーンはありますか?

奏:アクションシーンを描くのはやっぱり好きですね。まだ単行本にはなっていないですが、土方がライバルの七里研之助と決闘するシーンはお気にいりです。

 そもそも原作にはないシーンで、七里の刀がどういうものかも特に言及されていないんです。でも「七里は右腕が長い居合の達人」という情報があったので、長刀を持たせてみました。自分のなかで「腕が長いから長刀もめちゃくちゃ使いこなせる」という設定を作って、七里が刀をペン回しみたいに扱う描写を入れたりして、楽しかったですね。

分担制でも自由に描ける

――原作にはないシーンだったんですね。脚本は小松エメルさんが担当されています。どこからが作画のお仕事なんですか?

奏:小松さんと編集さんで作られた脚本をもらって、僕が絵にしていきます。お互いに別の仕事もあって、なかなか時間が合わないので完全に分担制ですね。

――自分が考えていないものを絵にするのは、難しくないですか?

奏:けっこう自由にやらせてもらっているので、そんなことはないですね。脚本を忠実に守るというよりは、それを骨組みとして肉付けしていく感じです。それよりは、歴史物あるあるですが、当時の情報を集めたりするのが大変ですね。舞台になった場所を現地まで見に行ったら、原作の描写とぜんぜん変わってて「あれ? 川、枯れてるやん」みたいな(笑)。

 キャラクターもメインの土方、近藤勇、沖田総司以外は原作にも情報が少ないので、小松さんの脚本からイメージをふくらませて描くことが多いです。

燃えよ剣 1

燃えよ剣 1

時は安政四年。後に「新選組 鬼の副長」と呼ばれる土方歳三は、喧嘩に明け暮れる日々を過ごしていた。農民の生まれである歳三は武士への強い憧れがあった。しかし、身分という壁に抗えず、ただ憧れだけが募る鬱屈とした日々を過ごしていた

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