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10日間飲まず食わずの失業者も…ホームレスにも広がる「貧困格差の実態」

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10日間飲まず食わずだった男性

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会社が倒産し、1か月近く前に路上生活を始めた沼野さん

 冷たい風が吹きさらす新宿中央公園。ただの広場に大量に敷き詰められた毛布の山が「宿のない人が一時的に泊まれるように」と解放されていた。そこで一夜を明かした男性、沼野さん。ホームレスになって1か月足らずだという。以前は埼玉県越谷市でトラックの運転手をしていたそうだが、会社が倒産して社長が雲隠れ。給料も振り込まれず、当てどもなくさまよって新宿に行きついたそうだ。

「越谷から練馬まで歩いて来たんだけど、歩き疲れちゃって。途中、交番でおまわりさんに交通費をもらって、新宿中央公園で炊き出しをやってるのを教えてもらった」。警察官に越谷から練馬まで歩いて来た事を告げると、大変驚かれたそうだ。

 2021年12月31日に新宿中央公園で行われた炊き出しに参加したそうで、それまで10日間近く飲まずくわず。「若い頃にレンジャーにいてね、飲まず食わずは慣れてるよ」と語る。当時演習で食料は与えらず、演習中は蛇などをさばいて食べなければならないサバイバル訓練を受けたていた。それを食べるのが嫌だったそうで、その経験のため食べない事には慣れているらしい。

 その後、沼野さんは大久保公園で行われた炊き出しにも参加した。その際に、今後の生活相談や食料品、現金4000円をもらっていた。数日後に一緒に役所への相談を付き添ってもらう。それまで、今回の現金支給で「しばらくネットカフェなどで一夜を明かす予定」だと言う。

ホームレスの情報格差からみる収入格差

ホームレス

沼野さんに炊き出しの食料を見せていただいた

 ホームレスになる人にはさまざまな要因があるが、首都圏のホームレス取材をしている筆者が見聞きした限り、そのほとんどが失業によるものだった。だが、ホームレスになった後の対応の違いによって、収入の格差は生まれてくる。

 公の制度に頼らず、路上生活で培ったコミュニティを活用するホームレスの方々は、さまざまな情報に触れる機会や差し入れをしてくれる顔見知り人も多く、どこにいけば炊き出しがあるかも知っている。一方、路上生活でのコミュニティに入れていない場合、炊き出しの場所や日時、差し入れてくれる人のいる情報など自分で調べなければならず、そこに収入の格差は生まれてくるようだ。

 国の統計上は数値で「相対的貧困」の基準を定めているが、その値だけでは必ずしも実際の貧困の度合いは計れないのではないだろうか。貧困の原因が生活基盤の不安定さにあるのだとすれば、人間関係や情報源といった基盤を構築できているかどうかも重要だ。そのためにも公的な支援やサポートの必要性を感じた。

<取材・文/酒井由和>

番組ディレクターを経てフリー編集者に。現在、ホームレスを中心にインタビューを行うYouTubeチャンネル「無頼BURAI・ch」を運営

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