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「経営の師はホンダの“名参謀”」元サッカー日本代表がベンチャー経営者として躍動

ビジネス

 独立、開業の道のりは、険しいものになる場合がほとんどだ。まして、異業種や業界未経験からの転身となれば、その苦しみが並大抵のものでないことは容易に想像がつく。

鈴木啓太さん

鈴木啓太さん

 元サッカー日本代表・鈴木啓太さんは、こうした困難を乗り越えて起業家としての歩みを進める一人だ。トップアスリートとしての経験を指導者として伝える道をあえて選ばず、腸活ベンチャー企業「AuB(オーブ)」を立ち上げた。

 前回の記事では、鈴木さんに「スポーツ選手のセカンドキャリア」について語ってもらったが、今回は自身の経営者としての姿や、若手ビジネスマンに伝えたいメッセージを聞いた。

設立当初は周囲から厳しい声も

 2015年シーズンを最後に現役を引退した鈴木さんは、現役生活中に痛感した「腸のコンディションを整える重要性」に着目。AuBの立ち上げに参画し、2016年には代表取締役に就任した。

「設立当初は、『ビジネス経験のないサッカー選手が成功できるはずがない』『やめたほうがいい』と言われました。しかし、やりがいや興味を感じる事業でしたし、覚悟を決めて経営に乗り出しました」

 その後は、「現役時代からサッカー選手以外のさまざまな人たちと交流していた」と語る鈴木さんの人脈が生き、著名なアスリートを中心とした豊富な「便の検体」採取に成功。アスリートの腸へのサポートや、大学などとの共同研究も進み、着実に成果を上げていった。

会社の運転資金が底をつきかけたが…

鈴木啓太さん

 ところが、創業4年目の2019年4月。会社は危機的状況に直面する。

「実はこの頃、会社の運転資金が底をつきかけていたんです。この時期は創業以来最もつらく、不眠に悩まされ、吐き気を催すほどでした。気合と根性でなんとか金策に励みましたが、資金的にはあと2か月が限界。協力してくれたアスリートの厚意を無駄にしてしまうことも考えると、耐えがたい気持ちになりました」

 社員が「今まで見たことがないくらい疲れ切った顔をしていた」と振り返るほどの苦境だったが、同年の5月に複数の投資家からの出資が決まり、この状況を打開した。

 これまでの研究成果から「十分なデータが取れた」と判断し、資金調達に成功したことも相まって、現在は腸内環境を整える「フードテック事業」に力を入れている。

「今は、これまでの研究をお金にする段階ですね。協力してくれたアスリートたちの課題を抽出し、プロダクトをつくっています。腸内細菌を変える大きな要因は食べ物なので、そこを中心に攻めています」

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