コロナで投資を始める人が増加中。証券各社の強みを比較した
楽天経済圏の強みが鮮明
楽天証券とSBI証券のアプリユーザーが特徴的に多く使っているアプリからは、銀行口座連携の奏功ぶりが感じられ、ともに1位はグループ内の銀行アプリでした。楽天は上位10アプリ中、7位のPayPayを除く9アプリが自社ブランド。ECやウェブ検索などでポイントを貯めてもらい、それを決済だけでなく投資にも振り向けてもらうことにより楽天経済圏内でのポイント循環が促されています。
キャッシュレス決済ではPayPay(ZHD)、ECではAmazonやZHD、通信事業では先行する3大キャリアとのバトルに苦戦する楽天ですが、金融領域においては相当強力にユーザーを囲い込んでいます。
他方SBI証券ユーザーの利用が特徴的に多いアプリは、1位住信SBIネット銀行と3位ネット銀行スマート認証を除くとSBI色は薄め。5位楽天証券や6位楽天銀行の利用も多いようです。
決済を含め多角的に生活のあらゆる場面へ入り込もうとする楽天とは戦略が異なるため、一概に比較できませんが、ブランドに囲い込まれているというよりは主体的なリテラシーが高く、もっともお得なサービスを使いこなしている印象です。
証券会社が提供する価値も変化
ネット証券における手数料ゼロはほぼ定着するものとみられます。手数料に依存しない前提のビジネスモデルでは、たくさん売買してもらうことではなく、個人投資家の資産をリアルに増やしてもらうことへと、証券会社が提供する価値も変化を迫られます。
例えば楽天証券が独立フィナンシャル・アドバイザー(IFA)育成支援に乗り出したのはEC楽天市場における店舗育成モデルを彷彿とさせますが、売買の手数料という対価から資産形成のための伴走パートナーとしての対価へのシフトと考えられます。戦術は各社各様ですが、資産形成に対するコミット度合があがっていくのは、個人投資家にとって喜ばしい動向です。
3月19日の底値から株価は徐々に回復し、6月29日時点の日経平均は2万2000円超。業績予想を公表できない企業が相次ぎ、どう考えても景気は後退しているなかで一種のバブルともいえますが、ウィズコロナ時代を勝ち抜く経営力への期待がそれだけ大きいと捉えることもできます。株式市場だけでなく実態経済が、投資家や社会の期待に応える明日が待ち遠しい今日このごろです。
<取材・文/清水響子>