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“事故物件住みます芸人”が語る、「怪談と都市伝説」の違い

暮らし

事故物件に住むのは「自分のモチベーション」

松原タニシ

なにかを失っている実感ってありますか?

――松原さんの顔が黒く写っている写真を見て、怪談和尚の三木大雲住職から「あと5年ですべてのものを失う」と言われたそうですね。来年2021年で5年目になりますが、なにかを失っている実感ってありますか?

松原:よく知ってますね(笑)。この4年くらいでなくなってるのは「感動」ですかね。ずっと事故物件に住んでいるなかで、怖いって感覚があるときからなくなったんですよ。それで、楽しめるものもなくなっていってるのかなと。怖いってワクワクでもあるので。

 心霊スポットに行っても「これってこういうことか」って納得できたら、それ以上の興味はなくなるし……。だから、まだ自分が知らないものを探し続けるしかなくて、それがなくなったらもう終わり(苦笑)。住職が言っている「死を意味すること」に無理やり当てはめるなら、そういうことですかね。

――すると今後、事故物件にも興味がなくなる可能性があるってことですか?

松原:いや、事故物件には住んでおこうかなって思ってます。住むのをやめて、「結局ええマンション住むんかい」ってなったら“事故物件”っていう概念を裏切っている気もして(笑)。最終的には自分自身に対してだと思うんですけどね。

 一応、矛盾がないように「信念ということ」にして過ごしてきたものを、「自分で言ってて守れてないやん」ってなったら嫌になっちゃうと思うので。自分のモチベーションのために、ウソをつかないで住み続けようっていうのはありますね。

<取材・文/鈴木旭 撮影/八杉和興>

【松原タニシ】
1982年、兵庫県出身。松竹芸能所属のピン芸人。現在は「事故物件住みます芸人」として活動。日本各地の心霊スポットを巡り、インターネット配信も不定期に実施。事故物件で起きる不思議な話を中心に怪談イベントや怪談企画の番組など多数出演する。著書に『事故物件怪談 恐い間取り』『異界探訪記 恐い旅』(二見書房刊)。前者は2020年8月28日公開で映画化

フリーランスの編集/ライター。元バンドマン、放送作家くずれ。エンタメ全般が好き。特にお笑い芸人をリスペクトしている。個人サイト「不滅のライティング・ブルース」更新中

事故物件怪談 恐い間取り

事故物件怪談 恐い間取り

事故物件とは、前の住人が自殺・殺人・孤独死・事故などで死んでいる部屋や家のこと。そんな「事故物件」を転々としている、「事故物件住みます芸人」の松原タニシ、初の書き下ろし単行本

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