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神奈川県庁のデータが大量流出…個人が請求できる「損害賠償額」は?

コラム

「物理破壊」が必要なケース

カセットテープ

 ところが、この「ゼロフィル」ができなくて困ることもある。ハードディスクを認識できなくなるほどのエラーが生じた場合、ソフトウェアからの命令も一切受け付けないから、「ゼロフィル」に必要な作業をすることはできないのだ。

 古い比喩だが、これはカセットテープで言うところの「ワカメ」になってしまった状態に近い。家庭の機械では読み取れないが、しかし内部には、情報の痕跡が抹消されないまま残されている。

 この状態のハードディスクを廃棄した場合、もしもあなたのデータを得ることに強い動機を持つ誰かがいたら、特別な技術を使って復元し、中身を覗くことも可能になってしまう。可能性はものすごく低いが、絶対あり得ない、とまでは言い切れない。

 したがって慎重を期すならば、ハードディスクを一度分解したうえで、データの保存部分を物理的に破壊するしかないだろう。カセットテープの時代には野焼きで乱暴に燃していたりもしたが、現代の法律ではそれはできないのだ。

 もっともこういうのは、本当ならば信頼できる業者に廃品として持ち込めば良いだけの話。その「信頼」が揺らいだのが今回の事件なのである。

寿命を示す「SMARTエラー」に注目!

 物理破壊をしようにも、ノートパソコンや一体型パソコンに内蔵されているハードディスクは、取り出すために専用の工具が必要になる。Macシリーズは特に大変だと思う。

 だからといって、内蔵のハードディスクが故障したパソコンを、ゼロフィルも物理破壊もせずに廃棄したり、中古品として売却したりするのは危険だ。ハードディスクの故障は突発的に起こり得るため、この事態を完全に避ける方法はないが、対策がまったくないわけでもない。

 ハードディスクの状態が悪くなったことを示す「システムSMARTエラー」が検出された時点で、すべてのデータをバックアップし、ゼロフィルなどでハードディスクを厳重に消去し、早々に廃棄してしまえば良いのだ。

 まだまだ使える(ように見える)パソコンを廃棄するのはもったいないようにも思うが、こうすれば、機密だけは守ることができるだろう。どうしても流出させたくないデータがある場合には、こうすることも検討してみてほしい。

<取材・文/ジャンヤー宇都>

「平成時代の子ども文化」全般を愛するフリーライター。単著に『多摩あるある』と『オタサーの姫 〜オタク過密時代の植生学〜』(ともにTOブックス)ほか雑誌・MOOKなどに執筆

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